四十六話 一体
「お前ら準備をしろ。『創型 横弓強撃』を行うぞ」
「この状況でですか?」
「そうだ。これまで射ったやつを全部凌がれている時点で、この判断をしても悪くは無いと思う。あいつに近寄られたら剣を投げられて終わりだ」
「決してそういう訳ではなく!もしそれを行えば隊長の手が!」
「確かにこれを射てば、次は射てないな」
「ならば!!」
「だがここでそれをやらなければ、勝つことができない」
「わ、分かりました。浪、混用意しろ」
「了解」
満の意思の硬さを理解した隊員は、満の願いを聞き入れた。
あいつら、何をするつもりだ?
破宮はその異変を見逃さなかった。
“予想は出来ない。だが嫌な予感はするな”
木に弓を括り付けた?先に手は……?!?
「一斉に射てぇ!!!」
今までは絶え間なく続いていた矢が止まり、まるで身体が一体化したかのように同時に発射された。
くそっ!!一体どうなってんだ!?
この状況を予測できなかった破宮は狼狽しながらも鉄の盾を造り出し、それを蹴り飛ばして後ろに後退した。
風のせいで距離が足りない!ちぃっ!!
破宮は「壊」を引き抜き、矢を迎撃する体制を取った。そしてそれと同時に剣を 造り出し始めた。
キィキィギィヂィ!!
「ダァアアアアアア!!!」
しかし現実は無慈悲で、百にも満たない剣が千を超える矢に勝てることなどは無かった。
「がはっ!」
まず右手に一本。怯んで「壊」を振るのが遅れたことにより、左手に二本、右足に一本。
そこで完全に抵抗の手は止まった。
「がぁぁあああああ!!!」
矢は突き刺さり、動かせば傷跡からは血が溢れ始めた。
しかし破宮は諦めなかった。限界の腕を無理矢理振るい、矢を弾き始めた。
「ま、まだ……だ!!」
「二射目を放て!!」
そして二巡目が来た。
もう……受け止めるところがないんだよな……
破宮の身体は全体的に矢が突き刺さっていた。
二巡目の矢はそれに当たりさらに深く食い込んだ。
ガヂィィイ
さらに破宮の心臓には矢が食い込み、破宮は抵抗の力を失い地面へ落ちた。
どすっ!!
鈍い音とともに体制を整える事も出来なかった破宮の身体に、さらに深く矢は食い込んだ。
「ぃ……いく……んだ」
微かに湧く力で「壊」を握り、破宮は歩き始めた。
「く、来るぞ!!三射目を放て!!!」
この時、後手後手に回らされていた破宮に始めてチャンスが訪れた。
今まで空中に居たせいで貯まることなく落ちていた血が、地面に落ちたおかげで血溜りとなっていた。
“破宮、剣を造れ!!今なら血溜りから造れる!”
そ、そ……うか
破宮は傷ついた右手を胸の辺りまで上げ、そのまま右へ動かした。
その手の動きに合わせるかのように剣が造り出され、そのまま放たれた。
現状報告
柊隊 死者数 約千三十人 備考 綾波千人将死亡
クラベス隊 死者数 約五千四百人 投降者 約六百人
今回は破宮がただ傷付くだけです。ここで破宮対満の空中戦は終了し、地上戦です!
次回、反撃。
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