四話 未知
10/23に大幅リメイクしました。
「はぁ…はぁ…」
「もういいぞ。下がれ」
「まだ…交代しなくて構わない。はぁっ…もう着くだろ。そこまでだ」
葉宮と少年達はすでに第五拠点の近くまでは来ていた。しかし、休憩を与えぬような小刻みに送られてくる敵兵への対策に疲労を隠すことはできていなかった。
「さぁ、行こう。もうあいつらの場所は確認できる」
「突撃するだけだ。早く行くぞ」
「だがそう急ぐな。あの後ろに森があるだろ?」
「あるな」
「あそこに寄せてくれ。そしたら俺が後はやる」
「分かった」
「策なしのゴリ押しって話か。脳筋ぞろいの俺達の隊なら構わないな」
「ハハハッハ!そういわれると反論できないな。よし行くぞ!!」
そして彼らはまた走り出す。
「慈飛隊長!前方から敵。およその数ですが五百人程度です」
「五百か…」
想像していたよりも対応が早いな。
「よし、陣形『凹凸』だ」
「了解!!」
「やはり対応はしてくるか!!」
「あんた!もう下がれ!!」
「少し待ってくれ…」
(あの歪な配置は……凹凸のようなものだが数はおおよそ千。それをわざわざ五隊に分けたら、一隊あたりの人数はこちらより人数は明らかに少ない。人数不利をわざわざ自分たちで作るだと?どういう作戦なんだ)
この時、少年は後ろに慈飛がいることを確認できなかった。
(亮に早く…)
「全員左に回避だ」
(流石だ!判断が早い!!)
葉宮の指示を受け、隊員達は左へ向かおうとした。しかしその瞬間に異変は起こる。
彼らの身体が右側に引き付けられたのだ。
「なんだこれ!!引っ張られているのか?」
「亮の言う通りだな」
まずいこれは…一体なんなんだ?
「なんでだよ…。なんだよこれ!!このままじゃ全滅じゃないか…。畜生っ!」
「皆、一度冷静になれ。このままなら危険だ。だが全ての攻撃に確実に弱点はある。隊長を信じろ」
水無月が焦る隊員達を落ち着かせ始めた。
「よし!行ってくる」
「え?」
「は?」
「ふぁっ?」
少年は隊から外れ、敵陣へ特攻していく。
「おいあんた何してんだ!!」
「こうでもし無いと敵の陣形を乱れさせることはできない!!!」
「そんな事したら…」
「一隊でも崩れたら突っ込んでくれ。死んでも一隊は崩して見せる」
「やめろ!!!」
(敵の陣形は直線ではなく、あえて飛び出したり、下に下がったりと極端な形だ。もしこのまま衝突したら、俺達の隊が敵陣形に少しずつ絡め取られていく事は間違いない!!ならばここで俺が崩すしかない!)
「一匹、突っ込んでくるぞ。最初の獲物は誰が喰らう?」
彼らは慢心しきっている。少年の作戦にも気づかずに。
少年は地面に剣を突き刺した。
これで少しは持つかな。さっき思ったがこの力は止まっていれば強くなっていく…どういうことだ。未知の世界だ…
「なんだあのガキ!地面に剣刺してこっちに引き付けられるのに抵抗しているぞ!」
「死ぬのでも惜しくなったか!!」
彼らは皆少年を笑い、こちらに引きずり込まれるのを今か今かと待っていた。
(って!!全然持たない。このままじゃ剣が引き抜けて……はっ!!これならば!)
「もう俺たちの陣形にあいつが届くぜ」
「下がれ!!下がらないなら今からあんたの所へ行くから待っていろ!!」
「亮!!!来なくていい!邪魔をするな」
「焦って仲間割れ知っちゃったかなぁ!笑えるぜ」
「黙っていろよ、薄らハゲ」
「ハゲだってよ、あはははっは!」
「あのクソ野郎……」
(もうそろそろか…呼吸を整えろ。三、二、一!!)
そして遂に少年は、作戦を行動に移した。
「そしてさっきから、お前らいちいちうるせぇんだよ!!」
少年は即座に地面に突き刺した剣を引き抜き、敵陣に向って地面を強く蹴り飛ばし、走り始める。
引っ張られる力に耐えていた分の力と自分で走り出した力により、少年は疾風のごとく敵陣に突っ込んでいく。
「来るぞ!
「なっ!!くそがぁあああああああ!!」
一人の敵兵が矛を振り落としてきたが、加速し続ける少年には関係ない。
矛は少年を捕らえることなどできずに空振りした。そして、少年は避けることもなく、剣を薙ぎ払う。
それだけで敵兵の身体は剣で真っ二つにされ、周りの隊員達の鎧などに飛び散る。
勿論少年の顔にも血が付いた。
(視界が…ッツツツ!!)
一瞬だけ血で前が見えなくなった少年の左腕を一人の隊員が斬り飛ばした。
「がっ!!」
(左腕が飛んでも右腕がある。斬れ!!!)
少年はその痛みをこらえ、右腕に持った剣で目に付いた者の首、頭、目、足、腕、腹に剣を突き刺し、斬り飛ばした。
この時少年は自分の口の中に血が入り、それを飲み込んでしまった事に気付けなかった。
そしてその瞬間、彼の視界が真っ赤に染まった。
(マズイ!!神裂さんと一緒の隊に居た時と同じ状況だ。あの時は、神裂さんに隊を後退させてもらった。でも今は亮達が近くにいる!このままじゃ皆を巻き込んじまう!だから……もう少しだけ待ちやがれぇえ!!)
「おい、亮!!今すぐ全員撤退させてくれ!」
少年は焦りながらも葉宮に指示を飛ばす。
「そんなことできるわけないだろ!誰か一人見捨てて生き残るなんて、俺たちの隊らしくない!」
「お願いだ、頼む!俺の最初で最後の我儘にするから……離れてくれ!!」
葉宮は、初めてその少年の必死な願いを聞いた。
「畜生っ!!分かった!だが戻ってこい」
「あぁ、待っていてくれよ……必ず戻るから」
「あいつのおかげで謎の引っ張ってくる力は止まったぞ!一時的に撤退するぞ!!」
謎の力の支配から解かれた亮達は、亮を殿に撤退を始める。
(良かった。これで仲間を傷つけないで済む。この感覚は気持ち悪くなるから嫌なんだけどな。もしかしたらこれで俺も終わりか?それは嫌だな。もっと沢山知りたいことがあるんだし……)
少年はそんな事を考えながら目を閉じ、意識がぼんやりとぬるま湯に浸かるかのようにゆっくりと落ちていく感覚を味わっていた。
読んで頂きありがとうございます!
今回はリメイクし、主人公の少年がとてもひどい悪口を…
次回からは科学的な能力、非科学的な能力が入り混じる狂った世界観へと変わっていきます。
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