四十三話 整理
また突破してきたか!
“さっきとは違ってもう勢いが無い!この状況なら出来るだろ?今すぐ避けろっ!!”
了解!
破宮は鉄の盾を足元に斜めに造り出し、それを蹴り飛ばすことで横へ飛んだ。
“まだ避けられたがこれからはこいつより速くなるぞ。今のうちに離脱するぞ!”
簡単に言うなよ。今は逃げ…避けるしか無い!って!矢がこんなにかよ!
破宮は自分をめがけて放たれた五百を超える矢を見て、驚いていた。
“あれだけ群がっていたらこれくらいは飛んでくるな。全部は確実に落としきれない。でもそれくらい予想はしてきたんだろ?”
勿論だ!!落としきれない…ならば!!
破宮は目の前の少し離れた場所に鉄の盾を五つ造り出した。
ここを抜けてきた矢だけ落とす。さらに!!
破宮は再度、鉄の盾を足元に造り出して加速していった。そしてその速度を利用して、離れた場所に造り出した五つある中で真ん中に位置する鉄の盾に一度近づき、それを勢い良く蹴り飛ばした。
ガキィン!!
蹴り飛ばした鉄の盾は、蹴った跡が残るほど勢いよく飛び、満達の元へ向かった。
“気をつけろよ。お前はもう二度も加速している!矢の速度は本来の二倍以上になるぞ”
勿論一度減速する!!
破宮は鉄の盾を前に造り出し、それを蹴る事で後ろへ飛び、減速した。
接近してくる鉄の盾を避けるしかない今、あいつらにちょうど死角になっている部分に隠れている俺が見えるわけがない。更には移動もしたしな。そんなところから俺を狙える訳がないだろ。だいじょう…ぶがっ!?
ギユバァ!
「があっ!!」
破宮の脇腹に激痛が走った。
「はっ?!」
どういう事だ…?俺は確実にあいつらには見えないようにしていた。見えたとしても五つの内、蹴り飛ばした真ん中の両隙間だけだ…あの隙間を通しても俺を確実に捉えられないはずだ。
“あの真ん中を律儀に壊してきたみたいだな”
蹴り飛ばした鉄の盾に空いた穴を見て、獄は言った。
ということは鉄の盾を貫いて、そのまま減速することなく俺の脇腹を…
“お前が油断した瞬間にだな。来ないと決めつけていた分、反応が遅れたんだ。”
そ、そうか…油断したという点は置いといて…
“それが一番悪いところなんだよな…馬鹿野郎”
あっ…はい。すみませんでした。
“そしてあっちにも磯風の「索敵」に似た能力の持ち主がいるな”
え…?
“確かにお前はあちらには確実に見えない状況を作っていた。お前の事を確認できる両隙間から矢を通してきたなら話は別だったがな。さらにお前は真ん中の鉄の盾を蹴り飛ばした後、一度減速するために鉄の盾を蹴り飛ばした。その際に元にいた場所とは大きく離れた場所へ、意識せずにだが飛んだ筈だ。見えないはずの移動した場所へ正確に射ち込み、お前の脇腹を射抜いた事から、お前の位置は完全に把握していたことは間違いない”
そんなに簡単に予想できるものなのか?
“何射も射ってきて当たったなら偶然もあるが、確実に一矢でお前を捉えた。それは能力でお前の位置を確認していると考えた方が良い”
そうか。ならばそいつだけは確実に殺さないと。今回の戦いのにも大きく響き、損害にもなる。更にはこの後の戦場でもな。
“そうだな。ここで消した方が良い”
破宮達は、戦況に大きく影響を及ぼす敵を処理する事を優先した。
ひとまず情報の整理をして、伝達を早くさせるぞ。
一.「鏃」を飛ばして来るのは満という男。
二. 満という男の周りに「索敵」に似た能力を持つものがいる。
この二つ程度か?
“後、あいつが弓兵隊の隊長で間違えなさそうだな”
三.満は弓兵隊の隊長。
この三つが分かったか。ひとまず今は、ある程度の接近をするしか無いな。
“遠距離から飛ばした剣が確実に矢で弾き飛ばされているからな。ある程度の距離まで近づいてからもう一度放つしかないな”
それを行うか、確実にこの手で斬るしかないって事だな。
“そうだ。取り敢えずあいつに気をつけろ。確実に邪魔をして来るぞ”
ならば殺すさ。って、結局戦う事になっちまったな。
“こういうのは運命と呼ぶべきか?”
男との運命なんて嫌だな。そんなもんい…
“なら俺は「時雨」とでも言うべきか?”
ごふっ…ゲホッ。なんてこと言うんだよ!!
“これで緊張は解けただろ?
そんな荒っぽいやり方はしないでくれ…まぁ確かに余裕は出来た。笑うのは良いな。行くぜ!!
ガギィィイィィ
破宮は鉄の盾を蹴り飛ばし、危険を冒しつつも加速して満へ近づいた。
現状報告
柊隊 死者数 約九百二十人 備考 綾波千人将死亡
クラベス隊 死者数 約五千七十人 投降者 約六百人
読んで頂きありがとうございます!
ぶつかり合った破宮と満。
満は自分の元に来るまでに倒せば勝利。破宮は満の元へ行けば勝利。
圧倒的有利な満。整理した情報を利用して戦うは破宮。
戦闘描写が下手で分からなかった場合は、質問していただければ幸いです。
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