四十二話 作業
「来るっ!」
冷静を保て…呼吸を整えろ。俺は絶対に勝てる。
「皆、一斉にはな…」
「待て!最初の一矢はお前が放て。あいつは因縁の相手なのだろう?」
「はい…ありがとうございます!」
流、俺が…俺がお前の仇を取ってやるからな。見ていろよ。
満は矢を弓に番え、射ち放った。
「『鏃』!!あいつを貫け!!」
ギュギュゥンッ!
叫び声と弓から矢を放つ音。二つの怒号が響き渡り、破宮を襲った。
「あの矢に続けぇ!!」
「っ!!!」
破宮は矢を避けなかった。いや避けることができなかった。
行き成りか!!早い…一体どんな鍛え方しているんだよ!!避けられない!
そう判断した破宮はあえて対処せず、距離を測ってから、正確に矢めがけて「壊」を振り落とした。
ピキビキッピキキキキ
さっき確実に「鏃」と言った。「鏃」だと?あの能力は流の…そうなると…
破宮は目の前にある矢より、満の言った「鏃」という言葉に気を取られていた。
“おいっ思考を一度止めろ!!前を見ろ!!このまま続ければ”
す、すまん!!完全に…ま、不味い!!これしかない!
「ダァッツ!」
破宮は剣を一度横にして、そのままバッドを振るように剣を横に薙ぎ払い、矢を吹き飛ばした。
強い。「壊」じゃなかったら確実に死んでいた。ちょっと待ってくれよ……
破宮は「鏃」によって加速した「壊」をじっくりと見て、動揺していた。今まで何百本もの剣を受け止めてきて傷一つなかった「壊」が、ほんの少し、一センチ以下だが欠けていたのだ。
流の「鏃」とは全然違う。こんな威力は無かった。そして自分の身が弾け飛ぶほどの憎悪を感じることもだ。
“あいつは相当お前の事を恨んでいるな”
そうみたいだな。この際無視して進むか。
“え?”
正々堂々戦っていて簡単に勝てる敵じゃない。今はひたすら事務的に、作業的に殺すだけだ。
冷淡に破宮は殺しを肯定していった。
“そ、そうか…お前の口から意外な言葉が出るもので驚いた。”
さっきは我儘を無理矢理に押し通しちまったからな。
“この状況をしっかり理解しているようで良かったとしか言えないな。矢が来るぞ”
獄は少しだけ笑みを見せた。
弓兵隊はあそこか!アレをまずは!
弓兵隊を確認した破宮は、多数の剣を造り出し、飛ばした。
キュンッキィンッキキキィ!!
矢に当たりながらも突き進む剣達からは、激しく鉄がぶつかり合う音が聞こえた。
「ぐっ!」
「がはっ?!」
そして剣達は、ブイング隊と同じように隊員の命を刈り取っていった。
“さっきのように継続的に降る剣の雨とはいかないが、かなり剣は造り出せたみたいだな”
ここまではいつでも成功するんだ。ここからいかに敵の数を減らして、五月雨さんに任していくかの勝負だ。そしてこれでこっちから矢が来るのは遅らせられた!じっくりと殺していく!
更に破宮は最初に弓を飛ばしてきた位置から、すでに満がどこにいるかは分かっていた。
正確に…確実に!殺せ!!
「終わりだ!!行け!」
そして破宮はその位置を外さぬように計算し、自分の手元にわざわざ造り出した剣を放った。
これで終いだ!散れ!
「二時の方向より物体…満、多分剣だよ!!!」
「危ないです!隊長、後退しましょう」
「構わない、弾き飛ばす!行け!『鏃』!」
満は向かってくる剣に向かって、躊躇わずに矢を放った。
バギュニィン!!
はっ……?
“嘘…だろ”
「鏃」を利用した矢は剣を貫き、勢いは衰えずに破宮を襲った。
現状報告
柊隊 死者数 約九百二十人 備考 綾波千人将死亡
クラベス隊 死者数 約五千七十人 投降者 約六百人
読んで頂きありがとうございます!
今回の話から破宮対満の勝負が始まります。
次回以降は、「鏃」の解説を入れたいと考えています。
そして超えてしまった五千人の壁…
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