三十八話 処分
クソッ!ブイングは何処にいるっ!
“お前、ブイングまでも処理するつもりか”
勿論だ。五月雨さんは自分の手で殺したいかもしれないが、もしその怒りや悲しみなどの感情を利用されて殺されたりしたらこの戦況は大きく変わる。水無月や柊さんの為にも。
“心配し過ぎと考えるのが普通だが、綾波にあそこまでやっているからな。変な同情を誘ってきたり、煽って怒らせてきたりはしてくるかもな。そう考えるならばここで処分出来れば戦況的にも楽になるな”
獄は、五月雨の過去の話と残虐に殺された綾波の事を思い出していた。
“うん、やはりここで殺した方が良い事しかない。やるぞ。そして破宮”
ん?
“決めたことはやれ。悩んで行動を鈍らすな。命が懸かっている今、理由なんて後でつければいい”
そうだな。俺が移動を開始した時には、今殺している能力者の束のところにいた。皆が動揺している中で、指示をするためにそこにずっといると思ったが…
“もう残りの距離は、憶測だが四十メートルも無いぞ!”
分かっている!だからあいつが最後に指示した場所までは来てから飛び降りた。この混乱の中で遠くまで移動はできないはずだ。
この時ブイングは後ろに後退してきた隊員達の中に隠れ、上からは見えなかった。
“見つけるだけでいいのか?”
勿論だ。その際にどんな危険な状況に陥ろうと構わない。
“本当は賛成したくないが、今回は別だな。ならば剣を自分の横に造り出して、「龍飛」の力で固定しろ。そして太陽の光を利用するんだ!あいつはかなり派手な鎧を着ていただろ”
確か金色の鎧を着ていたな。馬鹿みたいに光ってい……そうか、反射を!!あいつは他の奴らみたいに銀色の鎧じゃなかった。確実に返ってくる光の色は違う!!
獄の意図を理解した破宮は八本の剣を造り出し、「龍飛」の弱い風の力を上手く使い、八方面に固定した。
「なんだこの光は…はっ!!」
何も理解できず、思考停止してただ立ち尽くし死を待つだけのゴミとなっていた隊員達は、急に差した光によって、空中にこの仇を取るべき相手である破宮がいることをやっと思い出した。
「そうだ…上に」
「あいつが俺達の…殺す!こいつらの仇だ!!」
「眩しっ!!」
「さっきから照らしつけるあの光は!」
隊員達が困惑した光は勿論、破宮が剣を造り出して太陽を利用した光だった。
熱いっ!!っぅ!
“早く見つけ…あれじゃないか?”
アレか?!確かに歪なまでに輝いているな。あの金ピカ野郎。
“流石西陣営の中でも最大部隊と言ったところだな。副長でこんな派手な鎧とは。これを束ねる隊長のクラベスはどんな鎧を着ているのか…”
破宮達はブイングを見つけ出すことに集中し、見事に見つけ出すことに成功した。しかしその事に集中しすぎた分、自分を襲う矢に気づけなかった。
キイィッツン!!
矢は固定していた八本の内一本の剣を貫いた。そしてそのまま破宮の右肩を貫き、破宮の頭を掠めながら空へ飛んでいった。
なっ……!!
“矢だ!!”
破宮は即座に矢の飛んできた方向を見た。
「敵だ!!!!およそ一万!!!」
破宮は五月雨隊へ今の状況を伝えた。
「警戒態勢を取れ!!」
「増援?!」
この知らせは五月雨隊に恐怖を与え、ブイング隊を奮起させ、状況を変えてしまった。
どうする!!俺の発言であっちの士気が回復してしちまった。やっちまったな…
“お前の判断は間違えていない。知らせない方が危険だったからな。それよりもあの弓兵の矢はおかしい”
あれか…多分だがあれは「鏃」だ。
“「鏃」ってことは流の家族か?”
家族か…親戚?それともあっちの陣営には同じ能力者が何人もいるのか…?
“今から解き明かせばいいだろう”
そうだな。
現状報告
柊隊 死者数 約八百六十人 備考 綾波千人将死亡
クラベス隊 死者数 約四千五百十人 投降者 約六百人
読んで頂きありがとうございます!
今回も破宮の活躍…少しやらかし始めましたね…
このままいくと約一万五千対五千での対決になります。
ちなみに「鏃」を使用する能力者の流は、二十四話で拷問された可哀想な男です。
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