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拒絶された世界の中で  作者: ヒグラシ
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三十五話 憂目

 

 遠くから見ても対応が遅れているのが分かるぞ……綾波隊が奮起しているのか?

 綾波が死んで十分程度が立ち、綾波の代わりに一花が活躍していた。勿論それを五月雨は知るよしもなかったが。

「お前ら!陣形『分断』をやるぞ」

「「了解!」」

 五月雨隊の指示の元、五月雨隊は一つの隊から三隊に分かれた。

「左、完了しました!」

「右も出来ました!」

浅野あさのきし!良くやった」

 隊の練度の高さと練習の結果、五月雨隊は戦場でありながら、衝突などを無しに三隊を無事に分ける事に成功した。

「止まるなよ!!突っ走れ!!」

 ブイング隊を襲う準備は完了した。あとはお前を殺すだけだ。俺達の怒りを身で痛感しろよ。そしてお前が絶望の憂き目にあうんだな…


 流石に少しずつ削られて行っているか…十分でここまでの人数が殺されるとは。こいつはクズなだけではない!純粋に強い!それに綾波が死んだのが予想以上に士気に関わってきている…あんな叫ぶ声を聞いたら士気も下がるのも当然か。五月雨ならば作戦の修正をしてくれるか…?いや必ずしてくれる!

 水無月は五月雨のことを信じていた。

「押し込め!!」

「おう!!」

 一花の指揮が相当上手い!戦況を上手く操っている。もしかしたら俺よりも…考えたくないな。

 一花は急に隊長として指示することになりながらも策を多く利用し、通常の千人隊以上の活躍をしていた。

 ならば後少しだ!!ここでもう一度士気を叩きあげる!!

 水無月はあえて馬の速度を上げ、危険を犯してまでブイング隊の隊員を愛刀の「閃」で斬り飛ばしていった。

「耐えろ!今が苦しい時だがここを乗り越えるぞ!!」

「「勿論!!」」

 これくらい大きな声が出せるんだから大丈夫か…

「ひぃっいっ!な…ぁんだ!!」

 水無月が安堵した時、ブイング隊の隊員の一人が叫んだ。

「三隊が一気に襲ってくるぞ!」

「誰か止めに行け!!!」

 遂に来たか!ここまで頼もしい奴はやっぱりお前ら四人しか居ないな!

 一万人隊が計六千人の二隊に止められて苦戦している中、そこに五千人隊が加わったら明らかに戦況が大きく変わり、自分達が惨めなまでに襲われ、大敗北に終わる事は間違いなかった。

「止めに行く!!」

 それを理解している隊員達は、少しでも進行を止め、迎撃の体制を整える為に襲おうと動き出した。

「ここを頼むぞ!!」

「了解です。無理をしないでくださいね。俺達はそれをさせない為に押し込んでいるんだよ!!」

 水無月はそれを止めるべく、馬を動かした。

「邪魔を…するな!!!」

 距離も離れていなかった事もあり、即座に追いつく事が出来た。

 それを見て焦った隊員は、水無月めがけて急いで矛を振るった。

「死ねよ!!!」

 闇雲に振るった矛は当たる事もなく、馬を操るだけで簡単に水無月に避けられてしまった。

「甘い!」

 そして振る為に綺麗に伸ばした左腕を「閃」で斬り飛ばした。

「あぁぁ!!!」

「ど、どうする??!」

「俺に聞くなー!戻れるわけ無いだろう!!」

 もう指示も通らず、バラバラになっていた。

「死ぬのはお前らだな」

 水無月はただ一言呟いて、十五人程度の小隊に無駄な時間をかける事無く殺した。

 俺達の経路も確保できた!よし行くぞ!!

「五月雨!!後は頼んだぞ!!水無月隊!ここを抜けるぞ!!」

「「「了解ー!!」」」

 水無月隊は水無月の指示通りに目の前の敵を放置しながら進んでいった。

「お、おい!待て!!」

 ブイング隊は動揺を隠せず、咄嗟の行動などはできなかった。


 あの野郎!!上手くやりやがったな!!

 五月雨は水無月の作戦を読み取っていた。

 五千人という人数の移動を利用して、一度俺達の行動を窓から溢れる光をカーテンで塞ぐみたいに見えないようにしていやがる!!これなら俺達の動きが相手には見えないから、俺達が苦戦することは無い……柊が試案で止めてしまった策を良くここまで上手くやりやがった!!すげぇよ。だけどそれをやったらお前らの隊の損害は大きいに決まっているだろ!

「水無月!行けそうか!」


 やっぱり右の方が付いてこれねぇ!!あそこにはブイングがいるしな…どうする?俺が向かえば士気を上げて突破は可能か…可能性に賭けるしかない!

「隊長ー!」

「お前ら、先に行ってくれ。俺はあっちへ行ってから追う!今向かうからそこで耐え…」

「行ってください!!」

 一花が水無月へ進言した。

「私があの隊は助けに行きます!気にしないで進んでください!!」

「お前……その傷でか?!」

 一花は先頭を切って戦う事で士気を上げていた。しかし先頭に立って戦う事に慣れていない分、傷が付いていない部分を探す方が困難なほどの怪我をしていた。

「大丈夫です!必ず私が!」

 その言葉を聞いて水無月は、左を見た。

 一花にはこっちの作戦は一つも知らせてない!こいつの身は…だが五月雨隊の速度を落とさせたらブイング隊の衝突に勢いが無くなって……

 ギリッ!!

 水無月は他の隊員が驚く程大きな歯軋りをした。

「分かった!頼んだぞ!!」

 自分を律するかのように大きな声を上げ、水無月は前を向いた。

 損害は約五百、今置いて行ったやつらを含めれば千は超えるな…クソがっ!!!一花…巻き込んですまないな…俺が思う事じゃ無いかも知れないが、死ぬなよ!

 水無月は、振り返らずに突き進んで行った。


「目の前は開けた!あいつらの横っ腹に喰らい付くぞ!!」

「「おう!!」」

「あいつらの犠牲で俺らは楽に戦える状況になった。その分以上の活躍を見せるぞ!俺に付いて、進め五月雨隊!!」

 闘志が溢れ出ている五月雨隊の三隊は各々の狙った場所に突入した。

「うぉおおぉ!!」

「らぁ!!」

「くらぇぇぇ」

挿絵(By みてみん)

 三隊を率いる隊長達の声は戦場に大きく響き渡り、先を進む水無月隊の背中を強く押し、これから進む柊隊を鼓舞し、今なお戦う一花達と残りの水無月隊の踏ん張りどころとなった。


 “いつになったら行くんだ?”

 五月雨隊がブイング隊を分断してからだな。五月雨さんなら何か策が…

 “他人任せだな。お前にとっては辛いだろ…”

 あぁ…本当は俺の手で殺して、俺だけが傷付く方がいいさ。でも……この戦いは俺だけじゃ終わらせられない。だから託さないと行けないんだよ!分かっているけど…

 破宮は怒りのあまり、自分の拳を強く握りすぎて血が滲み出てきていた。

 “その怒りを忘れるなよ…その時が来たら死んでいった奴らの分もお前の剣をあいつらに届かせろ…”

 勿論だ。俺の剣で皆の分も戦うさ。


現状報告

柊隊 死者数 約五百十人 備考 綾波千人将死亡

クラベス隊 死者数 約六百二十人 投降者 約六百人

読んで頂きありがとうございます!


今回の話では五月雨隊が宿敵のブイングの元へ、水無月が次の目標であるクラベス隊の元へ向かいます!

次回は遂に柊隊が動き、五月雨隊は新たな陣形を使います!


感想、質問、誤字脱字などの指摘をお待ちしています!!


twitterにて、この作品の新規設定(とてもくだらないような情報からこの後の話に関わってくる情報までたくさんあります)を一日に一個ずつ公開しています!

URL:twitter.com/higu_kaiを入力する。

もしくは@higu_kaiで検索して頂ければ多分出ます。

見て頂ければ幸いです!

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