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拒絶された世界の中で  作者: ヒグラシ
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三十話 覚悟

 

 なんだ今の変な話し声…

 “何か聞こえたのか?”

 いや、聞き間違えだと思うが、変な話し声だったな。

 “意識間では無いから誰か居るのか”

 水無月かもな。それかここら辺の集落の人間かな。

「五月雨!!おい!!」

 五月雨を修一は起こそうとしていた。

「今まで急に倒れる事は?」

「無かった。初めてだ」

 五月雨は立ち上がってすぐに何もせずに倒れていた。

 剣に手をつけたわけでも舌を噛み切ったわけでも無いのに…

 “植物状態にならなければいいが…”

 精神面で何か起こっているのは確かなんだよな。

「起きろ。起きろよ五月雨!!」

 俺が取り押さえようとしたら倒れたから、突発的なことだろうな。

「その声は……ひ…いらぎか?」

「そうだ、五月雨。大丈夫か?」

「あぁ…大丈夫だ」

 目覚めたか。

 “植物状態は避けれたな”

「やはり…」

「もう心配するなんしょ…俺自身が一番、過去は救えない事は分かっているから」

「あぁ…」

「それでも俺はこの過去を捨てたく無い。だからその為にあいつを殺す。殺してみせる」

「分かった。なら俺達がクラベスを倒すとしよう」

 修一は、五月雨がブイングの事を殺す覚悟を決めた事を悟った。

「おい、作戦は変えるなよ…俺の個人的な感情でな…お前はもう将軍だ」

 しかしそれを五月雨は許さなかった。

「俺はお前に拾われた時から、お前を守る為に盾になり、お前を勝たせる為に剣になるって誓った。だから俺は道具だ」

「おい……流石にそれは気持ち悪いぞ」

「それは無いだろ…」

「まぁ、大丈夫だ。お前は潰れ役を今回やるんだからな。最初からブイングとぶつかるだろうよ。負けるなよ」

「おう」

 二人は拳を合わせた。

 なぁ、獄。

 “どうした?”

 少しだけ作戦を変えれないかな…

 “それは俺に言われてもな…もしかしてお前…まさか”

 その通りだよ。俺がこの戦場の道を切り開く。

 “ただでさえ大量に剣を造り出すのには、精神を擦り減らすのに……大丈夫なのか?”

 あぁ、耐えてみせる。

 “なら今から雪風に服作って貰うぞ”

 なんでだ?

 “この間考えたアレを保管する為にだ”

 アレか……コートみたいなやつだな。

「破宮、すまないな」

「別に大丈夫ですよ。逆に俺も覚悟を決めることができましたから」

「奴らを皆殺しにする覚悟がか…」

「そうだ…」

「五月雨も動けるか?」

「あぁ、それよりも先に二人に言わないといけない事があるんだ」

「なんだ?」

「柊、お前の妹の時雨以上の精神干渉を行える能力者が『希』には居る。さっき俺が話の途中に気を失った時に俺の精神間に出て来た女が能力者だろう」

「体格は?」

「やけに小さかった。俺が倒れこんで、即座に飛びかかれば首を絞められるくらいに」

「小さい……まさかだけど」

 破宮は、陽炎の言っていた優の特徴を思い出していた。

 確か流は…

「どうした破宮?」

「そいつは優かも知れないですね」

「優だと」

「『希』の副リーダー格の人物か」

「これで一つ能力が判明したな」

「『干渉』もしくは『一心』の上位互換か…」

「じゃあさっきの声は…!!」

 破宮は即座に音がした方向へ走ろうとした。

 “待て!破宮!!”

 なんでだ!

 “さっきから十分以上経っている。明らかに追いつく事はできない。しかもここは森の中だ。下手に暴れれば『希』も怪しむ筈だ!更にはお前やあいつらの身にも危険が迫るぞ!!”

 チッ!判断が甘かった!!

 “仕方無い事だ”

「すまない。優を取り逃がした」

「やはり近くにいたのか」

「声が聞こえた時に……」

「お前声が聞こえたのか?五月雨、聞こえたか?」

「全然」

「やはりお前は耳がいいんだな。責任は感じるなよ。俺達には聞こえなかった時点で、普通だったら逃がしていた。逆にまた一つ情報が増えた」

「情報?」

「距離だ」

「そうか、能力の発動範囲か!」

「どこら辺で声が聞こえたか分かるか?」

「かなり声が微かに聞こえた事だけしか分からないです」

「帰りがてらに声の聞こえた方向を通っていこう。水無月、起きろよ」

「ひゃーい!」

 能天気で何よりだ。

 “戦場ではああいう奴が居てくれた方が精神的に助かるんだけどな”

「まだ酔ってんのか……俺が担いでいく」

「柊さん、それは俺がやりますよ!」

「構わないよ」

「でも……」

「俺の部下だからな。部下の世話は俺の仕事の一つだ」

「じゃあ……任せます」

「柊、すまんな。まだ本調子じゃないばかりに」

「少し慣らしがてら歩くぞ」

 この後、四人で声のした方向を通って行った際に足跡を確認する事ができた。

「ここで途切れているという事は木を使って移動したか」

「そうですね。今、磯風が居ないから正確には距離が分かりませんが五百メートル程度ですかね」

「明日から作戦は開始だから全体的な対応はできないな」

「ならば破宮、陽炎に時雨を必ず護衛に回すように伝えといてくれ。あいつの『一心』より優の能力が強かったとしてもあいつは精神面での戦いに慣れている」

「時雨の『一心』を発動させて、相手の能力を確実に自分に引き込ませるってわけですか…でもそんなことしたら時雨は」

「時雨には一時的に辛い思いをしてもらうしかないな」

 修一は、拳を強く握りしめていた。自分の妹を囮に作わなければいけないと冷淡に考えられる脳に怒りを覚え、自分で解決できないという無力さに苛まれながら。

 “破宮…”

 大丈夫だ。そういうのは、陽炎を見てきたから分かるよ。

「大丈夫ですよ。時雨が精神間に引き込んでくれた分の隙は逃しませんよ。首と胴体を離れ離れにさせてやりますよ」

「そうか、それは頼もしいな」

 修一は破宮の気遣いに気付き、微笑んだ。



 翌日、陽炎の「蜃気楼」を利用しての作戦は決行された。しかし、優が現れることは無かった。

 どういうことだ!

 “普通はここを狙ってくる筈だが。やはり五月雨を自殺させて戦力欠こうとしただけなのか”

 じゃあ…五月雨さんを襲ったのは優じゃないのか…

 “そうとは決められないが…”

 でもあれくらいの能力使いは、他に時雨しかいないんだよな。

 “時雨は、皆と一緒に居たって陽炎も言っていたからな…”

 戦況が読めないな。

 “なぜそんなに仲間を疑うんだ?お前らしくない”

 今なら言えるか。

 破宮は周りを確認した。

 俺の中で今回、五月雨が狙われた事で疑いが増した。

 “どういうことだ”

 柊隊は常に激戦を乗り越えてきているから、隊の入れ替わりが激しいんだ。

 “それは分かるが”

 五月雨は三つ前の「塀江へいこう」戦から今回の戦いまで、負傷で前線を下がっていた。今回の戦いに参戦することは、今日伝えられるはずなんだ。

 “その情報を先に言え!それは内偵が居るってことだぞ”

 そんなの分かっているさ。だから怪しい奴らを探していた。しかしそれを見つけることはできなかった。

 “そうか…それはすまない。軽率な発言だった”

 俺も言わなかったのは悪いと思っている。

 “誰かそれを伝えたやつは”

 陽炎だけには伝えている。柊さんには周りに人が多すぎて一度も言えなかった。

 “その裏切り者次第で戦況が変わるってわけか”

 あぁ、気に食わない!!

 “逆に確実に裏切り者ではないって自信が持てるのは誰だ?”

 陽炎と時雨、柊さん、五月雨さん、水無月以外は信じられない。

 “そうか。陽炎団の奴らも疑わないといけないのは辛いな”

 例え仲間でも殺す覚悟は決めないとな。

 “辛いな”

 あぁ…

 しかし破宮の覚悟は変わらなかった。

「この戦い勝つぞ。勝って、この戦争を終わらせよう」

 破宮は、自分に言い聞かせるように叫んだ。

 そしてそれを全体に広めるかのように強風が吹いた。

 翌日、終戦のきっかけとなった戦いが始まる。


読んで頂きありがとうございます!!


今回は、破宮達の覚悟書いていきました!

次回からは遂に戦いが始まります!

破宮達の陽炎団と修一将軍率いる柊隊の活躍を応援して頂ければ幸いです!!


感想、質問、誤字脱字などの指摘をお待ちしています!!


twitterにて、この作品の新規設定(とてもくだらないような情報からこの後の話に関わってくる情報までたくさんあります)を公開しています!

URL:twitter.com/higu_kaiを入力する。

もしくは@higu_kaiで検索して頂ければ多分出ます。

見て頂ければ幸いです。

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