二十三話 馬鹿
「来ないでよ!!」
破宮は舞風との距離を詰めた。
しかし女と同じように弾き飛ばされかけた。
その瞬間、破宮は持っているものを全て投げ捨てた。
「俺はお前を殺そうなんて思っていない!!守って…」
「嘘だ!!」
破宮が造り出した鉄の盾の破片を、舞風は飛ばしてきた。
それを破宮は避けることも鉄の盾で弾き飛ばすこともできた。
しかし破宮はその行動を選ばず、受け入れた。
そのため破宮はもろに衝撃を受け、後ろへ吹き飛ばされた。
「お兄ちゃん!!!舞風!もうゆ…」
「大丈夫だ。舞風は俺が何とかする!」
破宮は身体に鞭を打ち、立ち上がった。
「俺は今からお前に近づいていく!拒絶するなら今のように攻撃してこい。俺は避けない!!!」
破宮は大きな声で叫んだ。
「この声は破宮か!生きていてくれてよかった」
陽炎は破宮が生きていることを確認し、安堵した。
それとともに敵に気付かれぬように慎重に近づいていくことにした。
「あはは…あんな馬鹿もいるのか。俺もあの時に止めに入って一緒に死んでたらどれだけカッコよかったんだろうな。ごめんな。ダサい父親で。もう会えないけど…」
愛しているよ……
鮮は、一人静かに息を引き取った。
「もう認めてくれるか?」
その言葉と同時に破宮は、三度目の攻撃を受けた。
攻撃を受けるたびに破宮は距離を詰めていた。
それは同時に喰らうダメージの大きさも大きくなっていることを表していた。
そのため破宮は今までの中で一番ダメージを受け、吹き飛んだ。
「がふ!」
破宮に当たった鉄の盾の破片は、当たり所が悪くそのまま破宮の首をへし折った。
“こんなことをまだ続けるのか?死にたがりか?”
そうかもな。だが今はとにかくあいつの恐怖を取り除いてやりたいんだ。
“それは罪滅ぼしのためか?慈飛を殺したという責任逃れか?実の娘を救えば、いいとでも?”
そういう訳じゃない。お前が言ったように割り切ったんだ。舞風は確実に戦力になる。俺や陽炎、谷風たちがやられた際に確実に生き残れる確率が跳ね上がる。だからあいつの恐怖を消し去り、俺らを信用させる。
“そうか。ならいいか”
いい訳ないだろ!!傷付くのは俺でもあいつらでもない。お前が傷付くんだぞ。いくら再生するからって、痛みは消えないんだぞ。
獄は、破宮のことを気遣いながらも彼の行動を止めなかった。
「お兄ちゃん…死んじゃったの?嘘でしょ?嘘だよね?嘘嘘嘘ッ!!!!」
朝潮は破宮の死を受け入れられなかった。
「舞風!!」
そして遂に舞風に飛びかかった。
舞風も破宮を殺したショックで対応できず、押し倒された。
「よくも…よくも!!!」
そして拳を握り、振り上げた。
「嫌っ!!!!」
舞風は朝潮を弾き飛ばした。
その際舞風は興奮により、能力の制限ができずに全力で弾き飛ばしてしまった。
「あっ!!」
それと同時に女は飛び、弾き飛んだ朝潮を受け止めようとした。
しかし距離が近すぎた。
後十メートル後ろに居れば!!飛ばされたとき、破宮君が攻撃を喰らっていた際に何で私はこんなことを考えなかったの!!
女は自分の考えの甘さに後悔した。
その瞬間、女の前を通り過ぎていく男がいた。破宮だ。
鉄の盾を造り出し、舞風の弾き飛ばす力を利用し、勢いをつけていった。
「舞風!!その能力を絶対解くな!!」
「え…?」
普通ならば能力を止めさせ、これ以上朝潮が弾き飛ばされないようにするべきだろう。
だがこの際は違った。
破宮が朝潮を追う速度の方が明らかに速いのだ。
「朝潮!手を伸ばせ!!」
「うん!」
破宮は手を伸ばし、朝潮の伸ばした手を掴んだ。
「よし!」
そしてそのまま抱き寄せた。
「舞風!能力を解いてくれ!」
「で、できないよ!」
「え?!」
嘘だろ?!あんな強い能力を持っときながら制御が出来ないのか!
“お前みたいなものだろ?”
それは言うな。
「大丈夫よ、舞風ちゃん」
「え?」
「怖がらないで。私はあなたを傷付けようなんて思ってないわ。ともだ…家族を救いたいでしょう?」
「う、うん」
「なら落ち着いて。落ち着いたら目を閉じるの。疲れたら眠くなっちゃうでしょ。今あなたはとても疲れちゃってるの。だから寝ましょう」
「う…ん…」
舞風は倒れた。眠ってしまったのだ。
「助かった!!」
破宮達は能力が切れたことにより、落下していった。
即座に破宮は鉄の盾を造りだした。
ガッ!!
「痛ッ!!折れたかな…」
「お兄ちゃん?大丈夫??」
「大丈夫だから心配するな」
「うん。お兄ちゃんありがとう!」
「あぁ」
破宮は舞風をおんぶしながら舞風達のもとへ向かった。
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