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拒絶された世界の中で  作者: ヒグラシ
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二十一話 命令

 


「なんだと?!俺の『(とが)』が!」

「なら『(やじり)』!」

 ヒュッ!パキンッ!

 え?!今のは弾かれた音じゃない!矢が近くでへし折られ…!!」

「随分と…」

「ちっ!」

「待たせたな…」

 そこには再生したての破宮が立っていた。

「なん…でっ!!どうやって木を登った?!」

 しかし二人には殺した筈の男が、死にかけの状態で立ちはだかっている様に見えた。

「斬り落とせなかったから…登っただけだ」

 破宮は木をつかんで登るのではなく、鉄の盾を階段のようにして登り、時間を短縮していた。

「殺して…いなかった?」

「いや!『カリウス』が殺してた!ならお前は!吸血鬼!!!」

「……そうだな」

 破宮は右足を引きずり、二人に近づいた。

 “おい!!無理をするな!無理に再生の途中でやめてるんだ!”

 大丈夫だ。この二人だけ殺したらまた「カリウス」を相手する。

 “それは大丈夫って言わないからな!だから自分の命を!”

 俺がずっと倒れてたらさっき助けてくれた女も追い込まれる!ならここで一番危険な奴らを殺しておかないと!

 “……分かった。だが、無理をして死んだら次の再生にかかる時間は長くかかるぞ!”

 分かってる。だからここで終わらせる!

 破宮は自分の右太腿から流れ出る血から剣を造り出し、飛ばした。

(りゅう)!今すぐ逃げろ!」

「ですが…」

「上司命令だ!!言う事を聞くんだな!」

「お前なんて上司と思ってない!」

「やっと本音が聞けたか…報告しろ!こいつは脅威だ!」

「くそがぁぁぁ!!!」

 流は即座に「鏃」を放ち、剣を弾き飛ばした。

「合流点で待ちます!」

「あぁ!」

 流が木を移動して逃げるのを破宮は追えなかった。

 彼の上司が勇敢にも立ちはだかったのだ。

 “やりにくいな…こうなると”

 あいつらが襲ってきたのが悪いんだろう。俺も隊に入ってたから指示の大切さは理解してるけどな…だからって俺にも守るものがある。

「来ないのか?!なら俺が!」

 男は破宮との距離を詰めてきた。

 銃使いが何故距離を詰めた?!

 パンパンッ!!

「チッ!!」

 破宮は鉄の盾で銃弾を受け流した。

 さっき俺の「咎」は、鉄の物体で止められた。だが今は受け流した!ということは今なら「咎」はこいつを撃ち抜ける!

 男はさらに破宮との距離を詰めた。

 今だっ!!

 男はさらに五発、銃弾を撃ち放った。

「おらぁっ!」

 破宮は三発を鉄の盾で受け流し、二発を剣で斬った。

 だがその隙を見逃しはせず、男は破宮に飛びかかった。

「うっ!」

 そのまま破宮は男とともに木から落ちた。

 “こいつ命懸けで!”

 破宮は即座に鉄の盾を造り出した。

 そしてその鉄の盾をまだ自由の利く両手で掴んだ。

 しかし破宮の両腕は、二人分の体重を支えることなどできずに落ちてしまった。

「がっ!」

「おらぁ!!!」

 男は破宮の腹を蹴り飛ばし、破宮との距離を取った。

 さらに「咎」を破宮目がけて撃ち放った。

 破宮はぎりぎりで体を捻り、心臓を打ち抜かれることは避けた。

 しかし破宮は「咎」自体の攻撃は受けてしまった。

 そしてそのまま背中から地面に勢いよく叩きつけられた。


「あの二人を止めたの?!あの身体で!」

 女は破宮の行動に驚いていた。

「なら私はこいつらを殺さないといけないのね…」

 女は残りの「カリウス」達へと近づいた。

「がっぎっ!!ガァアアアア!!」

「カリウス」達は遂に氷を割り、女へ飛びかかった。

「知能を失うというのは、ここまでみじめなのね。ごめんね。『しゅ』!」

 その瞬間、女と「カリウス」達の間に赤い紋章が浮き上がった。

「終わり」

「カリウス」達が赤い紋章の中に入った瞬間、紋章の中で爆発が起こった。


 ドンドドンドドドッドン!!

「まさか…破宮!!!」

 自分の頭の中をよぎった予感が当たってしまったのかと陽炎は思った。

「あいつはそう簡単に死なない!!」

 陽炎は全力で走り、疲れ切った身体に鞭を打ち、走り始めた。


 あれはさっきの女の能力か?それとも「カリウス」とやらの…能力か?今の状況じゃ判断できない!!それよりも今は前の男を…うっ!

 破宮は男と共に木から落ちた際に背中を強打し、背骨が折れ、立てずにいた。

 さらに破宮は右肩を「咎」で撃ち抜かれていた。

 “これは…きついな”

 再生を…分けることはできるのか?

 “どういうことだ?”

 背骨だけを優先して治すんだ。肩は治ってなくても何とかなる。

 “そういうことか。背骨の所が治るイメージをするんだ。集中しろよ”

 分かった。

 破宮は敢えて立とうとした。

「あぁああああ!!!」

 “やめろ!破宮!!なにを…

 この痛みは無かった!!!!無かったんだ!!!戻れ戻れ戻れっ!!!!

 それを男は見逃すことは無かった。

 あいつもしや立てないのか!今が好機だ!!

 男は、破宮が立てないことに気付き、近づいた。

 やっぱり落ちた時に折れた足のせいで走れないか…

 しかし、男は確実に破宮との距離を詰めていた。


「やっぱり『朱』は体力を使うわね…はぁ…はぁ。赤くて邪魔なのよ!」

 女は煙の中を歩いていた。

 やっぱり粉々になっちゃったか。ごめんね。あなた達から奪った命の重みは忘れないから。パンッ!!!

 後ろ!!

 女は後ろに振り向いたが、煙の中からは弾丸を見つけることはできなかった。

 私には当たってない。じゃあどこに!!

 カンッ!!

 あの家みたいなやつに当たったのね!!弾いた音がしたから大丈夫だろうけどね。


 カンッ!!

「ひっ!!」

「みんなもう少しだけだから!!」

 朝潮は皆を励ましていた。

 しかし遂に一人が限界を迎えてしまった。

読んでいただきありがとうございます!


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