二十話 乱入
ガンッガンッ!!
「怖いよぉ!!」
「我慢するの!お兄ちゃんがきっと助けてくれるの!!」
「またか…俺は」
「お前のせいじゃ無い。今無理をすれば亮の時のように…」
「俺が俺が俺がっ!!皆の希望を奪った!!亮は皆の希望だった。それを俺が負けたから!力が無かったから!!!!今度もかっ!?!」
「おい!落ち…」
「もっともっともっと力が欲しい!!力さえ…力さえあれば誰も失わないんだっ!!」
「またかよ!!また破宮に俺の声が聞こえてない!」
「クソクソクソクソッ!!!!俺なんて俺な…」
「そんなに自分を責めないで!私が時間を稼ぐから!」
「え?」
破宮を冷静にさせたのは、聞いたことも無い女の声だった。
「今の誰だ?」
「知らん。それよりお前!一度冷静さを失ったら完全に怒りと絶望に囚われるのをやめろ!」
「そうか?」
「そうだろうが!俺の声が聞こえてたか?!」
「……聞こえてませんでした」
「もっと頼れ!一人で戦ってるんじゃ無いんだから!」
「すまない…」
「分かればいい。今はそいつに託せ。俺たちの意識下に侵入できるような奴だ。強いんだろう」
「そうか…人任せだが頼む…」
「あいつらに叩き割るように指示を出せ」
「もうやらせています。どうやらあの鉄屑が頑丈みたいです」
「ちっ!希様もなにを思ってこんな化物造り出しやがったんだ!なんだっけな…『カリウス』だっけ?」
「その通りです。『カリウス』です」
「『カリウス』が叩き割れないか…かなり強いな」
「その通り…!!アレは?!」
破宮が鉄の盾で造り出した「ゲル」のようなものは四層まで剣で叩き割られていた。
ガンッ!ガン!!!!
「ガッ!ガアッ!ガッツ!!」
「うわぁぁぉあん」
もうこの中で聞こえる声は泣き叫ぶ声だけだった。
指揮をとって、励ましていた朝潮さえも泣き出し、死を覚悟していた。
「……」
そしてこの中で泣きはしないものの最も身を震わせ、怯えていたのは舞風だった。
「……」
なにかを言おうとしていたが、声が出ずに口をパクパクと動かすだけだった。
ピキンッ!ビキッ!!
最後の一枚の鉄の盾にヒビが入り始めた瞬間に殴りつける音は止まった。
「やっぱり『カリウス』なのね。かかってきなさい!」
「ガッガッガァァァ!!!!」
「カリウス」達は乱入してきた女に飛びかかっていった。
「『カリウス』が誤作動をしています!」
「吸血鬼の死体に吸血鬼の血を混ぜて蘇生なんかして、脳に直接自分の操作能力なんて入れるからこんな誤作動起こすんだ!!」
「今は愚痴を言ってる暇は!」
「殺せ!あの女を撃ち殺すぞ!」
「了解!」
「おい破宮!なにをした?!」
「どういう事だ?」
「お前の身体の再生が早くなってるぞ!」
「まさか…絶望の力?」
「そうかもな…」
吸血鬼の身体はわからないな…ましては…
「何考えてるんだ?」
「いや別に」
今はこんな事考えてる場合じゃ無いな。
「やぁっ!!」
女は「カリウス」へ剣を振り落とした。
「ガッ!ギャツ!!」
即座に「カリウス」は反撃を行って来た。
三対一か…なら!!
「『雹』!氷漬けにしてあげて!!」
「雹」は、「カリウス」の右からの攻撃を避け、氷漬けにした。
「ガッ!ガッ!!!アッ!」
知能を失い、本能だけで動いている「カリウス」には、身体が動かないことを理解できずにいた。
「『血霧』!斬り裂いて!そのまま私もやるから!」
「血霧」は三体の「カリウス」の内、一番右にいた奴を狙い、尖のついた尾で引き裂き続けた。
「ギッ!ガアッ!!!!」
攻撃を受け、「カリウス」は叫んでいた。
しかしその叫び声にはもう一つ意味があった。
「血霧」の尾の攻撃で氷が割れ、動けることに気づいたことへの喜びだった。
「ガアッ!!!」
今だ!
「『血霧』下がって!!!!」
女は狙っていたかのように「血霧」を下げ、距離を詰めた。
「ガッ!」
「カリウス」が振るった右腕をギリギリの所で避け、剣を心臓に突き刺した。
「あなた達は身体がとっても硬いけど…同じところを傷付けら続けたら無理よね!!」
そして「カリウス」は倒れた。
パンッ!!パンッ!!
流石に氷漬けにされたのには気づかれたわね!ここは…!!
ガンッ!!
銃弾の進む軌道には鉄の盾が造り出され、それが銃弾を弾き飛ばした。
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