一話 戦争
一年前
少年が自分に誓いを立ててから六十年以上が経っていた。
しかし少年の身体は老化することは無く、人間でいう十六、七歳程度の体格だった。そして少年の中でも六十年も経っていることに実感はなかった。
「畜生!文献が少なすぎる」
少年は、誓いを守る為にひたすら研究を繰り返している。
「やっぱり拾ってきた本だけじゃ答えに辿り着くのは無理か。不定期に俺を襲うこの感覚もその感覚が早くなってきているしな…」
(実際にこの感覚に抗えずに飲み込まれてしまったことも多々あるしな。早く原理を見つけないとこのままじゃ)
「おい、あんた!居るか?」
考え込んでいる少年を呼ぶ、大きな声が少年の耳に入る。
「あぁ、居るよ。また遊びに来たのか」
「勿論。あと大事なことを言いに来た」
「なんだ?」
「東陣営と西陣営を分けた戦争が始まる。それも大規模だ」
(いきなりだな……)
「紛争とは違うのか?」
「大きく違うな。今回は俺達が想像なんかできない人数が死ぬ」
今、少年と話している男は、葉宮亮だ。少年が、自分が殺した事実から逃れてから拠点としていた森の中で、倒れていた彼を少年が助けたのだ。
彼はそれに恩義を持っているらしく、ちょくちょく少年の所を訪ねてくる。
「お前は戦争に参加するのか?」
「あぁ、参加するな。確実に。嫌だけどな」
「拒否はできないのか?」
「あぁ、徴兵された。それよりもさ…」
「なんだ?」
「この堅苦しい空気止めないか?」
「え?この空気感で話したかったんじゃないのか?」
「そんなわけないだろ!!嫌だよこんな空気」
「でも戦争に参加して、戦果上げれば一生安泰なんじゃないのか?」
「簡単に言わないでくれよ!!無理だろ!そう簡単に戦果上げられる訳ないに決まっているだろ」
「やはり殺すのか……人を?」
「まぁ、そうだろ」
「怖くないのか?」
「怖いに決まっているだろ!でも俺…いや俺達が戦わなかったら西陣営に俺達は支配されるんだろう」
「確かにそうだが…」
「それで美紅や亮太に辛い思いを味合わせたくない。そんな俺自身の我儘を突き通すために戦うしかないんだ。人殺しという『悪』を『正義』という呼び名に変えてな」
「そうか…一ついいか」
「ん?」
「その表現ダサいぞ」
「頼む、それは言うな」
「カッコいいと思っていたんだろ?カッコつけて、ドヤ顔で」
「……忘れてくれ」
「分かった」
「あんたは参加しないのか」
「気が向いたら参加はしようとは思っている。しかしな…森の化物ってお前の集落で噂されて恐れられていて、存在自体はお前以外知らない俺が、どうやって参加すればいいのかが分からない」
「そんなの簡単だろ。志願兵として参加すればいい」
「志願兵?」
「あぁ、そうだ。戦争するんだから人数が必要だ。志願兵ならそれなりに優遇してくれるだろう」
「そうか。気が向いたら参加する」
「戦場で会えたら嬉しいな」
「本当は会わないで終わりたいな。会うならここで会いたいな」
「そうだな」
二人は笑い出した。
「葉宮、帰らなくていいのか?」
「あっ……美紅にここに寄ること言い忘れてた」
「怒られるぞ…」
「じゃあ、俺は変えるぜ」
「そうか、気を付けて帰れよ」
「おう!!」
(戦争が始まるか……沢山人が死ぬってことは沢山人が集まるってことじゃないのか?)
少年はあることに気づく。
(沢山人がいるなら俺と同じような奴らも見つけられるんじゃないのか。もしそれならば俺も参加するしかないな……)
「武器が必要だな。用意しないと」
そして少年も戦場へ行く覚悟を決めた。
読んで頂きありがとうございます!
今回では、一話の「戦地」をリメイクしました。その際にタイトルも戦地から戦争へ変えました。
次回からは大きく内容は変わらないため、削除はせず、編集しようと思います!
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