十八話 多数
速い!!明らかに谷風の肉を喰ってから速く走れるようになっている!!
“あいつの「龍飛」の能力が少し移ったのかもしれないな”
破宮はさらに加速して拠点へ向かった。
「浜風と磯風は雪風と谷風から離れないで戦え!!」
「そんなことしたら団長が!!」
「俺のことは気にするな!!来るぞ!!」
「り、了解!!」
破宮…意外とお前の方に相手は行ったかもしれない!俺と「ドラ」を襲ってきたときよりも数が少ない!!
「皆!私から離れないの!!」
「お姉ちゃん!!怖いよ!」
「大丈夫あなただけは必ず守るから」
「か、かかってこい!!」
「……」
周りを思い奮起する者、怯える者、我が身を投げ出しても守ろうとする者、粋がる者、黙り込む者。
皆恐怖と絶望を抱え込みながらも戦おうとした。
「来たよ!!黒潮、親潮!火で一定の距離を保つの!!」
「今からやるわ!!」
「荒潮、そのまま水を火が弱りかけたらかけるの!」
「爆発をね、狙うんだね!!」
「そうなの」
「舞風は…待機してるの!」
「……」
だがそのワンパターンな対応は次第に攻略された。
「この爆発はダメージがないぞ!!」
「皆の者!!能力を遠距離から使う必要もない!!距離を詰めろ!!」
「「「了解!」」」
「手こずらせやがってこのクソガキ共が!その亡骸は微塵も残さん!!」
「何分くらい時間を稼げたの?」
「三十分は稼げなかったわ…」
「なら最後の抵抗をするの!!」
「でもそれをしたら万が一の逃げる力を残せないわ!!」
「なら抵抗しないで死ぬの?!!」
「じゃあどう…うっ!!」
二十人はいる部隊の一人が撃った銃弾が黒潮を打ち抜いた。
「火力がなくなっている!!」
「今だ!!!突撃!!!」
「嫌…死ぬのは嫌なの…」
「諦めるん…がはっ」
「はぁ…はぁ…待たせてごめん」
「お、お兄ちゃん…怖かったよ!!!!」
朝潮は破宮に救われた際に緊張の糸が切れ、泣き出してしまった。
「一人でどこまで相手できるかな!!!」
“あの豚みたいなデブが言ってるみたいに一人でこの人数はきついぞ”
だから一人でも多く殺すだけだ。殺した奴のカウントを取ってくれ。血がある程度俺でも相手のであろうと能力が使える
“分かった。今真っ二つにした奴で一人”
「今から俺があいつらと戦うからここから出ようとするなよ!」
破宮は子供達を護る為、造り出した鉄の盾を合わせていき、「ゲル」のようなものを造り出した。
一度見ただけじゃ上手く造れないな…こんなだっけ。
“まさか初見で造ったのか”
こんな時だからな。これで銃弾は弾くことができるだろうしな。
「暗いよ…怖い」
「耐えてくれ!!すぐ終わらせるから!!」
「お兄ちゃんを信じるの!!」
「分かったわ!!」
「お姉ちゃんが言うなら僕も頑張る!!」
「こ、怖くなんてないぞ」
「……」
子供達は暗闇の中に居た為、舞風が小刻みに震えていたことに気付いていなかった。
「『炎龍』まだいけるか?!」
後六人か…っ!!銃持ちか!
「『炎龍』!銃弾を溶かしつくせ!!溶かし切れなかったら浜風に流せ!!」
「炎龍」はそれを理解し、火を噴き散らした。
それと同時に陽炎は六人のうち左端の男を殺すために接近した。
「来たぞ!!撃て!!」
陽炎は自分を襲ってくる弾をあええ避けず、速度を保つことで狙った先を追い越し、弾を避けていた。
「動きを読め!!」
チッ!!動きが読まれてきたか!!
陽炎は今度はあえて弾を弾いた。
「剣で真っ二つに出来る数なんて限られているぞ!!撃ちまくれ!!」
来たッ!!!
その瞬間、陽炎は剣を横に持ち替え、弾を撃ち返した。
「なっ…ぐひゃ!!」
無数に注がれた弾は、いくつか撃ち返された弾の跳弾によって、軌道が変わっていた。
そしてそれと同時に、撃った者に跳ね返ってきた弾もあった。
「クソ!!能力者は!!!」
「さっき死にま…がっ!!」
「退却するぞ!!」
「そうさせると思うか?」
「あぁあああ!!!」
六人のうち生き残った二人のうち一人は自分の銃に手をかけようとした瞬間に陽炎の振り落とされた剣によって、手ごと斬り落とされた。
「痛いっ!!!!!」
「そうか」
そしてそのまま右足で回し蹴りを首に放った。
もう一人は…そこか。
「ひゅう…ひゅう…」
跳弾を足に喰らって動けないのか…
「お前…助かりたいか?」
男は首を大きく縦に振った。
「なら質問に答えろ。俺たちにお前らを送りこんだのは?」
「西陣営…だ」
「所属の隊は?」
「ブイング隊」
「『希』からの命令か?」
「……違う」
「嘘だな」
「うっ…そうだ!『希』からの命令だ!」
「『希』の構成について、知っていることを話せ」
「『希』は、希様をリーダーとして行動している…そこに優様が加わって、『希』は構成された…ようだ…」
「そうか。なら最後の質問だ」
その瞬間、男の顔には希望が満ち溢れた。
「お前なんでこんなに都合良く生きていけると思ってるんだ?」
「え…?どう…」
陽炎は向けていた剣を首にそのまま突き刺し、跳ね飛ばした。
「自分達が襲って来といてなにを願っているんだか…覚悟の一つも出来ないのか」
「団長大丈夫ですか!!」
「磯風、大丈夫だ!そっちは?」
「私も浜風も無事です!」
「それなら良かった。谷風は?」
「あと少しで抉り取った部分の治癒が塞がり、終わりそう」
「なら俺は破宮のもとへ行く!お前らは最初の指示通り警備だ!!終わったらこっちに来い!」
「了解です!」
破宮、本当に大丈夫なんだろうな…
陽炎の頭の中で、自分達を襲った者達に破宮達が皆殺しにされてしまう予感がよぎった。
「あいつなら…大丈夫だ!!」
陽炎は自分に言い聞かせるように叫び、破宮のもとへ向かった
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