十五話 子供
「誰この人?」
「これから『陽炎団』に所属する破宮だ。好きなように遊んでもらえ」
「え?」
「ならお兄さん!!鬼ごっこしよう?」
「おい陽炎…どういうことだ?」
「まぁいいだろ」
「お兄さんが鬼ね!!!」
「お、おう…ってやるなんて言ってないぞ!!」
「じゃあ遊んでくれないの?」
「うっ…」
“流石にお前も子供には負けるか”
生憎だがな…
「わかった。遊んでやる!!」
破宮は「陽炎団」のメンバーを陽炎に聞いてはいなかった。
そのため子供たちがいることなどは知らなかった。
「すまんな…まさか雪風達が居ないとは思わなかったんだ」
「お母さんなら狩りに行ったよ」
「あいつら…」
「鬼ごっこのルールは簡単なの。鬼さんが私達を捕まえられたら終わりなの!」
「わかった。鬼を俺がやればいいんだな」
「そうなの。妨害もありなのね。じゃあ始めるの!!」
「え?!」
その瞬間、ルールを説明してくれた女の子を含め、五人の子供が各々その場を離れた。
“いい能力の練習になるな”
そうだな。
破宮は、ルールを話してた女の子を狙い、地面を蹴った。
「今日はウサギだけじゃなくてヘビも取れたね!!」
「そろそろ帰らないと朝潮らが悲しむぞ!」
「陽炎団長…早く帰ってこないかな」
「明日までに帰ってこなかったら探しに行くしかないな」
「『慈飛を倒せずに俺が死んだらここを離れて自分達で生きろてくれ!』だなんてね」
「俺達が団長を置いてくわけないだろ!命の恩人なんだから…」
「全くわかってないよね!!」
「責任感持ちすぎ」
四人は陽炎の愚痴を言いながら「陽炎団」のもとへ帰っていった。
「畜生!!すばしっこいなこいつら!」
破宮は子供達に翻弄されていた。
「お兄さんこっちだよ!」
最初に狙った女の子との距離を二メートルまで縮めたところで破宮は、他の四人の能力によって一時撤退させられてた。
状況を整理するんだ。
一度破宮は冷静になり、今の状況を理解した上で作戦を練ることにした。
まず最初の奴の能力は不明。だが身体能力は低いな。次に赤服の姉と弟と思われるペアは陽炎と同じく火の能力者だな。
後の二人のうち黒服の男の子は水の能力者だな。あいつと赤服の奴らが一緒に攻撃してきたときに時々爆発が起こるのはどちらかの能力なのか…?もう一人の白髪の奴は能力はわからないがあいつはマズイ!!慈飛なんかよりドス暗いものを感じるっ!!
「お兄ちゃんんが来ないなら私たちが行くのね!」
「鬼ごっこだろこれ!!」
「だってつまらないんだもん!」
破宮を襲ったのは子供達では無く、竜だった。
バキバキバキ!!
上からか!!二人のうちのどっちの能力だ?!
能力者と能力の分析に時間を割いていたため、竜に乗っている子供達の数が減っていることには気づきもしなかった。
「お兄さん…余裕無さすぎだよ」
そして背後に回っていた赤服の姉弟によって挟み撃ちの形を取られた。
クソッ!!!
「終わりだよ!」
後ろからは火、前からは水が襲い、それを避けられずにいた。
パンッ!!!!!
そして火と水がぶつかった瞬間に爆発が起こり、それに破宮は巻き込まれる形になった。
「『ドラ』、お兄ちゃんを捕獲するの!」
爆発が止まり、煙に包まれた場所に「ドラ」が降下していった。
「噛み付くの!」
命令通りに「ドラ」は破宮がいた場所で嚙み付きを行った。
ガギィ!
「え?『ドラ』食べちゃったの?!」
「大丈夫…」
破宮の声は籠っていた。
「お兄ちゃんどこなの?」
「ここだっ!!」
その瞬間、煙の中から破宮が出てきた。
「わっ!!!」
「捕まえた!!」
破宮はルールを説明してくれた女の子を捕まえた。
「捕まっちゃったのね」
「そうだな」
「じゃあ私が鬼なのね!十秒数えるの!」
破宮はあえて「ドラ」の上で強く蹴り出すことは無く、煙の中に消えていった。
「またあいつら爆発を起こさせたのか。あれほどやめろと言ったのに…破宮大丈夫か。まぁ慈飛を喰った分再生力はあるはずだな。止めに行くか」
陽炎は子供達を止めるために激しく音がしている場所へ向かった。
「今の音は?!」
「まさか…」
四人の頭を遮ったは、陽炎が負け、慈飛がこの場に来て子供達が襲われているということだった。
「大切な人を失って子供達まで失うなんて…」
「落ち着け!ここからそれほど早くない!」
「全速力で行くぞ!!!」
四人は走り出した。
「ルール無視だろ!!!!」
「だってお兄さんの能力ももっと知りたいからね!」
破宮は鬼から逃げている中、他の四人の子供にも襲われていた。
さっきわかったことは一つ!なにかを喰らえば、俺の能力である鉄の硬度は増すことだ!
破宮は自分の能力を分析しつつ発動した。
「火の攻撃も水の攻撃も塞ぐのか…」
実際には火の方には溶かされてるけどな!!
破宮は挟み撃ちにされて放たれた火と水を鉄の盾で塞ぎ、火によって溶けかけている鉄の盾を蹴り飛ばし、地面に着地した。
四人は木の上か!!ならばっ!
破宮はあえて黒服の男の子目がけて飛んだ。
そして破宮は手元に剣を造り出し、振り落とした。
「いやっ!!!」
彼は近づく剣に斬られることを恐れ、目を閉じた。
あれ?
しかし剣は彼を襲うことはなかった。
「捕まえた!」
「え?!今のどうやった…」
「死ね!!!」
「え?」
破宮が後ろを振り向いた時にはもう遅く、男の握っている剣が破宮を貫こうとしていた。
これは避けられねぇ!!せめてこいつだけでも!
「おい今からすぐにあそこに飛べよ!」
「え?」
破宮は足場を用意し、彼に飛ぶように言った。
「なんで?」
「いいから行け!危ないんだから!!」
キィンッ!
「わ、わかったよ!!」
すぐに後ろに鉄の盾を造り出したが、 一秒ももたないか。刺されたすぐにあいつを回収して下に降ろさないと!
「このクソ野郎が!」
破宮を剣が貫いた。
「ぐぁっ!」
しかし破宮が痛みに怯んだのは一瞬だった。
「おらぁ!!!!」
後ろに向けて身体を捻り、剣を男の手から奪い取り、そのままガラ空きになった腹を蹴り飛ばした。
「がふっ!」
そしてそのままもう片方の足で木を蹴り、彼を回収し、地面に着地した。
「だい…じょうぶか?」
「それより…お兄さんは!!」
「だい…じょうぶ…だ…ごふっ!!」
破宮は着地の際に傷口が完全に開き、出血が止まらなくなっていた。
「おい朝潮!!!こいつら全員連れてここから逃げろ!!」
「お兄ちゃんはわ…」
朝潮は初めて戦っている姿を見て、怯えて声がしっかり出なくなっていた。
「早くしろ!!!!」
「でも!!」
「ちっ!!」
男は木を蹴り飛ばし、破宮にとどめを刺そうとした。
「離れてろ!」
破宮は彼の前に鉄の盾を作り上げ、そのまま手元に剣を造り出した。
「俺はこれから『陽炎団』にしょ…」
「今は何も信じるつもりはない!!」
「この…バカ野郎が!!!!」
破宮と男の剣が衝突した。
読んでいただきありがとうございます!!
今回の話から二章が開始になります。一話間の文章が長く、投稿が遅れてしまうと判断したため、一話ごとの文章数を短くしました。そのため中途半端なところで終わってしまうことも多くあると思います。申し訳ありません。なるべく投稿を早くしていこうと思いますのでご了承ください。
感想、質問、誤字脱字などの指摘などなどお待ちしています!!!




