十四話 破宮
「………!!お…!!!」
あれ?なんだっけこの声…そうだ…そうだ…
少年の意識は覚醒した。
「やっと起きたか!」
「五月雨さん?」
「状況が理解できないか?」
「あぁ…すまない」
少年は倒れてから、今五月雨に馬で連れられていることが理解できていなかった。
「さっきお前はあの男を倒し、そのまま倒れた。その後は俺の隊のやつに治癒効果の能力持っている奴がいるからそいつに足だけ直してもらった。だからお前の身体は直せてないぞ」
「それは構わないが!あいつの…慈飛の死体は!!」
「首級として認められるはずだから俺の隊のやつに見張らせている」
「そうか…ならいいや」
「お前は…いやなんでも…」
「そうだよ、俺は吸血鬼だ」
「…左腕は?」
「多分生えてくるよ…とかげの尻尾みたいにな」
「それは面白い話だな...」
冗談を言いながら二人は走っていった。
「隊長!!」
水無月は葉宮の元へついていた。
そしてそこで見たのは五体不満足で倒れ込んでいる葉宮だった。
「あぁあああああああああああ!!!」
水無月はその事実を受け止められず、ただ叫んだ。
「俺が…俺が」
「そんなに自分を責めるなよ」
「え?」
「え?」
「たい…ちょう?」
隊員たちは亮が生きていることに驚いた。
「柊のお陰でな…だけど長くないよ…」
「うっ…隊長!!」
「男がそう泣くなよ」
隊員隊が泣いてくれるのも亮の人徳がなせる業だった。
それだけ亮は偉大だった。
「水無月…俺の後はお前が隊長となって戦え」
「そんなの…無理だ!!今回だって俺の指示が間違えたから!遅れたんだ」
「大丈夫だ…俺たちは皆でたくさんの戦いを乗り越えてきただろ」
「あぁ…」
「隊長なんて名だけだよ」
亮は笑い飛ばして言った。
「皆でまた成長していけばいい…そうしてこれからも乗り越えていけ」
「偉そうだな…あはは…分かりました」
水無月は乾いた笑顔を浮かべ、その願いを聞き受けた。
「がふっ…」
「おい!!!」
「そうだ…隊長と一緒によくいたあの少年は?」
隊員たちは少年がこの場にいないことに気付いた。
「あいつ隊長の近くにいたのに!!」
「守らないで逃げたのか?!」
「そうだ!それしかない!!」
「あのクソ野郎!!」
亮が死ぬという絶望と悲しみが絡み、誰に当てることもできなかった怒りの矛先はこの場にない少年に向かった。
「そんな…」
「あぁ!そうだな!!!」
亮と水無月が隊員たちの発言を止めようとした声を遮ったのは、少年だった。
「全力で来たのが仇になったか…」
「そんなことは気にしないでいいよ…」
柊隊長は馬の移動でたった十分しかかからないような距離に異変を感じてたのか…化け物だよ、やっぱり。
「お前が!!お前のせいで!!!お前が殺したんだ!!!!!」
一人が浴びせた罵声は伝染した。
そして少年は何十人の怒りを受けた。
「そうだな。俺が無力だったから亮が死ぬんだ!」
その怒りを少年は受け入れた。
俺は亮を救える場所にいた。でも救えなかったのは俺の力がなかったからだ。
“いいのか?お前だけの責任じゃないだろ?”
いいんだよ、誰かがその責任を取れば他が許される。
“どっちが少年なのか分からないな”
獄と会話しながら少年は亮の許へ向かった。
その少年を遮るように一人の隊員が少年の前に立ち、対峙した。
「隊長に近づくな!!」
「なんでだ?」
その瞬間少年は思いっきり右頬を殴られた。
「お前のせいで死んだのに!何を言っているんだ!!」
「......」
抵抗も発言もせずにいる少年に男はさらに吹き上がる怒りを抑えられずにもう一度殴るため拳を振り上げた。
「このクソ野郎が!!!」
また少年はその拳を避けなかった。
しかしその拳は少年を殴ることができなかった。
男の腕を水無月が掴んでいたからだ。
「さっきから…言いたいことばっか言いやがって!!!いい加減にしやがれ!!!」
そのまま水無月は男を殴り飛ばした。
「がはっ!!」
「そしてお前ら!!俺に『暴れないで事実を受け止める』って誓っただろ?」
「それは…」
「ならごたごたいうな!!!!!俺が無能だから助けにこれなかった!責めるなら俺を責めろ!!!」
その一言で隊員たちは黙り込んだ。
「隊長の最期の言葉を聞いてやってくれ」
「あぁ勿論だ」
少年は亮の横に座った。
「ちゃんとあいつを倒したよ…」
「そうか…よくやったな」
「あぁ…ごめん…俺のせいで」
「どいつもこいつも自分を責めやがって…なぁあんた」
「なんだ?」
「褒美というか願いというか…一つ受け取ってもらいたいものがあるんだ」
「え?」
「あんた本当は名前を忘れているんじゃなくて持っていないんだろ」
「あぁ…騙しててごめん」
「なら名前じゃないが『葉宮』の名を継いでくれないか?」
「え?」
「俺が拒絶された世界をお前が受け継いで生き抜いていってくれないか?」
「あぁ…」
「無理な願いだ…叶えなくてもいいから…」
「『葉宮』の名は受け継げない」
「そうだよな…無理なね…」
「違う!!お前は自分が思っている以上に偉大な奴だ!だから『葉宮』の名は俺には重すぎる。だから無理なんだ…」
「そうか…」
「だがお前の『葉』の部分を破壊の『破』に変えて、この名『破宮』として受け継がせてもらうよ…」
「そうか…ありがとう」
「お礼を言いたいのは俺だ…俺にこの世界を教えてくれてありがとう…無知な俺にいろいろ教えてくれてありがとう…これからは俺がおま…亮の意思を受け継いで戦っていくから!!」
「あぁ…無理すんなよ…あの薄暗い汚れた空から…見守っているよ…」
「うん…」
「ありがとう、柊。もう充分だ。これ以上命を削ろうとするな…って俺のせいか」
「気づいていたのか?」
「二年も組んでいたんだからわかるよ…」
「そうか…じゃあな…後で一緒に酒飲もうな…」
「あぁ…なるべく後になることを願っとくよ…がはっ!!」
柊の治癒能力を止めた瞬間に、亮の身体は出血が止まらなくなり、激痛が亮を襲った。
「美紅…亮太…約束…守れなかった…な…ごめん」
亮の声は掠れていった。
「幸せ…に…生きて…く…れ……」
俺は幸せだったよ…いい家族に…そして仲間に出会えて。
「りょう…亮!!!!!!」
「隊長!!!!!!」
そして亮は深い眠りについた。
亮の周りの人間は、破宮、水無月、柊を除き泣き喚いた。
三者は皆違う思いを胸に抱いていた。
隊長の遺志を継ぎ俺がこの隊を支える…いや支えて見せる!!
新たに隊長として決意する者。
亮…お前の分俺が戦い抜いて、この戦いを終わらして見せる。
この残酷な戦争を終わらせる決意をする者。
お前が拒絶された世界の中で、俺は吸血鬼として生き、この世界を変えるから。
全てを拒絶する世界で、異端である吸血鬼として生き抜く決意をする者。
三者三様、思うことは違えど亮の遺志を継ぎ、それを決意に変えていったのは違いなかった。
「水無月…すまない、俺はこの隊を抜ける」
「あぁ…分かったよ」
こい…破宮は抜けることを最初から決めて、憎まれ役をやったのか!!
水無月は破宮が考えていたことを察した。
「ちょっとこっちに来い!!」
水無月は破宮を連れ、隊員たちがいる場を離れた。
「お前!!なんでそんな犠牲を払ってまで!!しかもなんでここまで知っているんだ?!」
「全部聞いていた…」
「え?」
「俺は吸血鬼だ…そのことを理解し、能力が発動できるようになってから俺の身体は普通の人間とは違うものになっていってるんだよ…」
破宮は剣を自分のもとに造り出した。
「例え死ぬような致命傷を負っても再生し、身体能力も人間の何倍も上昇してるはずだ…」
「だから聞こえたと…」
「そうだ」
「だからお前が責任を負うという犠牲を払ったのか…?」
「しょうがないだろ…どうせその怒りの矛先が誰かに向けられなきゃいけない。そしてそれを一身に受けるのはあんただろ?」
「それはそうだが…」
「それならこの隊に残る意味のない俺が責任を負う形で消えればあんたにはその怒りの矛先は向かず、この隊はまだやっていける」
「なんでそこまで…」
「葉宮が作り、育てていったこの隊を守れるなら…憎まれるのなんて惜しくもない」
「そうか…すまない!!」
その瞬間、水無月は少年に土下座をした。
「俺が不甲斐無いためにその重荷を負わせてしまって…本当に!!本当にも…」
「これ以上はいいよ…あんたはもう隊長だ…これからは『水無月隊』としてこの戦いを超えていくんだ…よろしくお願いします…」
それだけ言い残し、少年は水無月のもとを去った。
亮の遺志だけじゃなく、破宮の意思も継いでいかないとな…ありがとう、破宮。
「柊さんの所行かない…」
「すまない…盗み聞きさせてもらった」
「別に構わないですよ…用事があったんです」
「なんだ?」
「葉宮の奥さんと息子を護ってやってくれませんか?」
「そんなことか?」
柊は笑い飛ばしながら聞いた。
「そうです、金だったら俺が用意しますから」
「そんなことまで気にしやがって…」
柊は少年に近寄り、そして言った。
「戦争は一人が活躍したとしたって、数の力には勝てないんだ。だから仲間達と共に戦い、死線を潜り抜けて行くんだ。そしてそこで誰が死のうとそれは誰か一人の責任ではない。仲間達が弱かったが故の事なんだから連帯責任になる」
「はい…」
「そしてお前はあの気狂い野郎を一人で倒した。俺たちに出来ないことをやってのけたんだ…それに自信を持て。仇を打てたのお前のお陰だ」
そう言った後、柊は破宮の頭を撫でた。
「だから責任を感じるな。もし感じるならあいつの分まで生きて、この世界で戦っていけ!」
「はい!」
「金の事は気にしなくて良い、俺の家系結構いいから金は余るほどあるだろうしな…」
そして人には聞き取れないような声でぼそりと言った。
「当主になる…あいつも居なくて…」
破宮には聞こえていたが、破宮はそれをあえて聞こえないフリをした。
皆が皆戦争の中で身体にも精神にも傷を負っているんだな…
そしてそれとともに怒りに身が震えた。
一度だけ亮と一緒に隊長会議に参加した時にもそうだったな…自分達が戦うわけでもないのにここを取れって、作戦一つ出さず、死んだら無能呼ばわりしやがって、責任を押し付けて捨てやがる。畜生。
「俺達を…拒絶する世界なんて…消してやる」
少年は考えてる事が口に出ていた。
「そうだな…お前は俺達と違って人間じゃない。だからこそ違う景色が見えて、変えていけるんじゃないか?」
「……」
「お前は好きな様に生きてくれ。誰にも縛られずに、自由に」
これが柊の本音なのかもな。柊隊長もしがらみに囚われながら生きているんだろうな…
「柊さん、俺が殺した男の死体を五月雨さんの隊員が見張っててくれているらしいです。首を渡しますので、そこから下をくれませんか?」
「首級を譲ると?」
「はい…もう俺がその首級を上げる必要がないので」
「なら一つ交換条件にさせてくれないか」
「え?」
「首級は亮の手柄にする。そうすれば水無月隊の配属人数も増え、隊の規模も大きくなるだろう」
「で?交換条件とは?」
「お前がこれからこの世界を生きていく上で多分『柊時雨』という女に出会うだろう。そしたらこれを届けてくれ」
そう言い、柊は手紙を破宮に差し出した。
「そんな事でいいんですか?」
「本当はこんな条件なんて付けなくてもいいんだがな…多分この手紙をあいつに渡すのは俺にはできないからな」
「わかりました」
少年は柊から手紙を受け取り、その場を後にしようとした。
「またな…負けるなよ!」
「はい!!」
少年は亮達がいる場所の反対側、慈飛の死体がある場所へ走っていった。
「お前は誰だ!!」
五月雨が残していった隊員は傷だらけの男がこちらに来ることにおびえながら叫んだ。
「さっきといい…なんなんだよ!!!」
「驚かしてすまない。俺はお前らと戦うつもりはない。そこに転がっている男の死体は誰だ?」
「この死体…?確か…『慈飛』と言われていたな」
「そうか…やったのか」
そのまま男は地面に倒れ込んだ。
少年…やったんだな。ありがと…!!
男は少年が慈飛を倒したことに感謝しようとしたのもつかの間、男が見上げていた空を駆け抜ける者がいた。
あれは人?いやあれは吸血鬼だ!!!
男は傷ついた身体に鞭を打ち、立ち上がろうとし、その瞬間意識が途絶えるような感覚を味わった。
しかしその感覚が嘘かのように身体は動いた。
「あいつは!!!」
その瞬間には空を駆け抜けていたはずの吸血鬼は発見できなかった。
見間違い?そんなことは無いはずだ…じゃああれは!!
男は状況を理解できずに混乱したが、発見できなかったという事実を受け入れ、見間違いと判断した。
これも「同族喰い」の代償なのか…
男は緊張から解き放たれ、再度地面に倒れ込んだ。
“破宮、お前まさか慈飛を喰うのか?”
あぁもちろんそうだよ。あいつを喰って、さらに力を得るんだ。
“そうか…あまり喰いすぎるなよ…”
なんでだ?
“そうだなお前は知らないんだな…慈飛を喰い終らせてから話そう”
頼む。知らないことが多すぎるんだ…俺は。
その瞬間少年の身体に悪寒が走った。
“何か嫌なことが起きそうだな”
俺もそう思うよ。
少年はさらに加速し、慈飛のもとに向かった。
「いいきっかけを作ってくれてありがとう、慈飛くん…いや野分君か。これで死体から応力は回収したしもういいかな。奪える時間も少ないし…精神が動揺した時に漬け込むしかないなんて私らしくないな」
女はそんなことを言いながら慈飛の死体のもとから去った。
少年が慈飛のもとに辿り着いた。
そして少年は驚きを隠せなかった。
「おい…嘘だろ!!!」
そして倒れ込んでる男のもとに駆け寄った。
「陽炎!!陽炎なのか?!」
「少年か…ありがとう」
「そんなことはいい!!良く生きてたな!!」
「お前のお陰だ。お前があいつと戦い続けてくれたから俺は助かった。あいつの「反発」が緩んだから、多方面から剣が襲ってくるよりも前に「炎龍」を発動することができた。そしてそのまま「炎龍」を核にすることで大爆発を行い、剣を全て溶かし切れた」
「多分…あいつが精神的に狂ったからだな。その時に集中が切れたんだろうな」
「そうか。なんでここに?」
「慈飛を喰らうんだ。力をもっとつけないと…」
陽炎は「やめろ」と言おうとしたが止めた。
あいつを殺したのは少年だ。そしてその後を選択するのは少年の自由だ。
「少年…きゅうけ」
「『破宮』って言ってくれ。亮から受け継いだ大切な名前なんだ」
「それはすまない。破宮、お前は吸血鬼を喰う『同族喰い』の代償を知っているか?」
陽炎は亮が死んだことを察し、あえて触れなかった。
「知らない」
「『同族喰い』を行うと力を得る代わりに意識の奪い合いが始まる。そしてそれに負ければお前の意識は乗っ取られる」
「大きな力を得るためにはそれなりの代償がいるということか」
「そういうことだ。そしてタチが悪いのが、俺たちの心が砕けかけた時に忍び込んでくる」
「なるほど…」
「それでも…喰うか?」
「あぁ…喰う。代償が大きいってことは得られるものも大きいんだろ」
「そうか。意識取られたら殺してはやるから安心して喰え」
「あぁ…」
破宮は笑いながら慈飛のもとへ向かった。
お前もなにかに傷つけられていたんだろうな…同情するつもりも憐れむつもりもないけどな。
破宮は持っていた剣を慈飛の左側の喉元に突き刺し、そのまま右に薙ぎ払い、跳ね飛ばした。
首は…そうだ。
「おい陽炎!!こいつの首持っといてくれ!」
破宮は慈飛の首を陽炎へ投げ飛ばした。
「いきなりだな…わかった」
「任せた」
そして破宮は慈飛の身体を喰らい始めた。
やっぱり悪寒がするな…自分で吸血鬼を食べるのが初めてだからか?
ゴキッ!!ガギッ!!
破宮は骨さえ残さず喰らっていった。
意識下に入ってくるんだろう。じゃあもう入ってくるころだな。
獄は陽炎の話を聞き、構えていた。
あいつと同じ要領なら…やはり出来たか。
獄は手元に鎌を造り出した。
「ここは…どこ?」
「お前の死に場所だ」
「い…がっ!!」
慈飛が抵抗しようとした瞬間には、獄が振るった鎌は慈飛の身体を引き裂いていき、心臓部で止まった。
「掠めろ『デスカルマ』」
「あぁあああああああああああ!!!」
慈飛は獄の能力によってもがき始めた。
「記憶を…?!嘘だ…ろ?」
獄は動揺していた。
俺の鎌、『デスカルマ』は人の記憶を掠め取り、それを知ることができるはずだ。まさかあいつに取り込まれてから…もしくはあいつ能力を利用して造ったから?
獄は今ある情報で解決策を練ろうとした。
ちっ!!情報が少なすぎる…またあいつは誰か違う吸血鬼を喰うだろう…そのときにでも解決させるか。
獄は現状での解決を諦めた。
まぁこれであいつが意識間での戦闘を行う必要もないだろう…それはそれで良かったから良しとするか。
あれ?身体にも精神にも異変がない?
破宮は意識下での戦いが起こらなかったことに疑問を感じていた。
“あいつなら俺が倒しといた”
え?!獄、お前あいつを倒したのか?
“あぁ、まぁ相当弱っていたからな。破宮、これからも吸血鬼を喰うつもりか?
勿論だよ。だがなんかあいつの右腕を喰った時と違って力が湧き出てこなかったんだ…
“やはりか…”
なにかあったのか?
“俺自身の能力を使ってもあいつの記憶を掠め取れなかったんだ”
お前の能力はそんななのか…怖いな
“お前には使えないし、お前のことは俺の方が知っている”
そっちの方が怖い。そしてそれについて教え…
「おい破宮!!大丈夫か?」
「あぁ大丈夫だ」
色々と後へ後へと回ってくな…
“仕方ないだろ”
破宮は陽炎のもとへ向かっていった。
「これから破宮はどうするんだ?」
「俺は…隊を抜けたからまた森にで…」
「なら俺の団に来い」
「え?」
「俺の団は不知火団の生き残り…いや…慈飛による殺害があった日に別の場所で活動していて、生き残ったやつらを俺が隊長として受け持っている。そこで生き残るうえで力がさらにほしい」
「俺は…力のコントロールができずにいる…」
「俺はお前を人でも吸血鬼とでも思っていない。武器として思っている。もしお前が力のコントロールができずに俺らを殺しても、それはその武器の使い方を誤った俺の責任だ。だから俺の団に来い。吸血鬼どもを殺して回りたいんだろ?」
「あぁ…俺もお前も吸血鬼なんだがな。あと別に危害を加えない吸血鬼は殺すつもりはない」
「お前…『希』のことを知らないのか?」
「なんだそれは?」
「知らないのか…話すことがありすぎる!!」
「知らないことが多すぎるからな…」
「で…どうするんだ?俺の…」
「入る。武器として俺は頑張っていくよ」
「……あぁ」
こいつ…本当に俺が武器だと思っているのかよ。
「あのな…本当は俺はお前を武器と…」
「知ってる…ありがとな」
破宮は笑いながら言った。
「お礼を言う必要はないが…なんでわかった」
「亮がいつもこういうことをやって楽しんでた」
「そうか…なら俺の団『陽炎団』の待っている場所に合流しよう」
「あぁ」
陽炎は破宮を連れ、「陽炎団」のもとへ帰っていた。
「希様!」
「なんだ?」
「慈飛様が討ち死にとのこと」
「っ!!討ったものの名は?」
「葉宮亮です」
「あの葉宮隊の隊長か…」
「はい!!そして慈飛様は葉宮と相討ちの形で死んだ模様です」
「葉宮は討ち取って死んだのか…ならいい仕事をしてくれて死んだな」
「その通りです」
「次の兵を送れとの依頼は?」
「まだ来ていませんが、時機に来るでしょう」
「そうか。なら選定を開始しよう」
「では書類を」
伝者は情報を伝え、書類を持ってくるために一度部屋を去った。
「もういいぞ。優、慈飛は期待できる奴じゃなかったのか?」
「期待できる奴だったよ、やられちゃったけど」
「そうか」
「葉宮を討ち取ったからいいんじゃないの」
「お前は本当に見た目は子どもみたいなのに考えていることはえげつないな」
「そんなことは気にしない!!」
「あぁ」
「本当に伝えたいことは次の兵をスカウトしてこいってことでしょう」
「別にそんなことは考えていないぞ」
「どうだか…まぁ行ってくるわ」
伝者と同じように少女も部屋を後にした。
「人間どもで争いあえ!!そして兵力を減らしたところを俺たちの手によって潰し!この世界を俺らのものにしてやる!!!」
希は独り言を大きな声で呟いていた。
翌日
柊隊、水無月隊は再度「鋼帯」を制圧し、離脱した。
「やはり援護に回っていたはずの『村雨隊』は全滅してましたね」
「あぁ…援護の攻撃が一つも来なかった時点で怪しかったがな」
「柊隊長!!水無月隊長!!今から司令部のとこ行くんですから私語は謹んで下さい!!」
「わかった。すまなかった」
二人は今回の一連の報告をするために上層部たちの人間がいる司令部へ来ていた。
なんであの無能共に分かりやすく説明しないときないんだか…
どうせあいつらは葉宮隊長が死んだことに対して一人の隊長核の人間が死んだぐらいしかおもわないんだろうな。
前者は柊、後者は水無月の考えていることである。
そんなことを考えているうちに二人は司令部に着いた。
翌日
柊隊、水無月隊は再度「鋼帯」を制圧し、離脱した。
「やはり援護に回っていたはずの『村雨隊』は全滅してましたね」
「あぁ…援護の攻撃が一つも来なかった時点で怪しかったがな」
「柊隊長!!水無月隊長!!今から司令部のとこ行くんですから私語は謹んで下さい!!」
「わかった。すまなかった」
二人は今回の一連の報告をするために上層部たちの人間がいる司令部へ来ていた。
なんであの無能共に分かりやすく説明しないときないんだか…
どうせあいつらは葉宮隊長が死んだことに対して一人の隊長核の人間が死んだぐらいしかおもわないんだろうな。
前者は柊、後者は水無月の考えていることである。
そんなことを考えているうちに二人は司令部に着いた。
「俺が先に入っている。そのあと次の隊長の推薦としてお前を呼ぶ」
「わかりました」
「失礼します」
「入りたまえ」
相変わらず偉そうな奴らだ
柊が中に入るとそこには3人の男がいた。
「『鋼帯』の再度の制圧助かったよ」
「それはありがとうございます」
「それで結果は?」
「敵の隊長格であると思われる慈飛を討ち取り、『慈飛隊』を」
「あいつをか!」
「他の地域でも有名なのですか?」
「あぁ、これは伏せられているがな。領地としてた『嵐』、『阿波野』を奪還した際に隊を率いてた男だ」
「そうですか」
なんでその情報を伝えなかった!!こいつらは俺たちを替えのきく武器としか思っていないのか!犠牲よりもメンツが大事か!!!
柊は怒りを感じていたが、それをバレないように冷静に振る舞った。
「それを取れたのは大きい!!」
「で、戦死者はどれくらいだ?」
「はい。戦死者の方ですが『村雨隊』は全滅。『葉宮隊』は四十一人、『柊隊』は八十三人出ました。そして…」
「あの『村雨隊』を失ったのはデカイな…」
「そうですな。主力の援護を行う隊を失いましたしな」
「では次にどの隊を当てますか?」
三人は『村雨隊』の代わりをどの隊に行わせるかの討論を始めようとしていた。
「そして!」
柊は大きな声を上げ、三人の話を途切った。
「『葉宮隊』の隊長の葉宮亮が戦死しました」
「何でそれを先に言わない!!!」
話も聞かないで自分達で進めようとした奴らがなにを言うんだ?
「すみません」
「『葉宮隊』は隊長を失ったか。なら次の隊長は?」
「一層の事『田沼隊』の補填に回すか?あそこもこの間の攻略戦で五百人ほど兵を失ってたな」
「それはいい!!」
「慈飛を討ち取ったのは?」
「葉宮亮です」
「相討ちの形か…」
「報告ご苦労だった。この後の事はこちら…」
そうやって先延ばしされたら困るんだよな!!
「失礼ながら進言させていただきます。私、柊は葉宮から次の隊の隊長として水無月健斗を推薦されました。水無月は三番隊隊長を行っていた為、隊の人間との連携を取ることも早期に出来るだろうと見込まれます」
「ほう」
「補填をせずに『葉宮隊』の隊長を水無月にし『水無月隊』にすると?」
「その通りです」
「ならそれでいいではないですかな?」
「そうだな。わざわざ他の隊に入れて連携のトラブルを起こされるよりはいいかもしれんな」
「では後で任命式を」
「そこは大丈夫です。水無月!入れ!!」
「失礼します」
「君が水無月健斗君か?」
「はい!」
「現時刻を持って『葉宮隊』を『水無月隊』と変更、隊長に水無月健斗を任命する!」
「ありがとうございます!」
「後で褒美に関しては報告しよう」
「了解しました」
「もう帰っていいぞ」
「では失礼します」
「失礼します!」
二人は司令部を出た。
「これでお前が隊長だ。『水無月隊』として頑張ってくれ」
「はい!」
「硬くなりすぎるな。もう少し余裕を持って行動しろ。まぁ最初は皆そうなんだがな」
「そうですか?」
「お前緊張し過ぎで声は大きいし、震えているしで面白くて笑いそうになったんだぞ」
水無月は顔を赤くし、焦った。
「葉宮が育ててきた隊の戦力は大きい。それを更に育て活躍させるのがお前の役目だ」
「わかってます」
「それがわかっているなら大丈夫だな」
一ヶ月後
「葉宮隊」改め「水無月隊」は千人隊となり、「柊隊」には「水無月隊」が付くことで二千人隊となった。
亮は慈飛を倒した首級と戦死の二回級進級により五千人隊の隊長になり、そこで戦死したことになった。
「葉宮…随分先に行ってしまったな」
「隊長!『荒天』に敵兵三千!!」
「そうか。副長水無月と敷波を呼べ!!!」
「了解!」
後のことは任せておけ、お前の家族は柊家の分家として扱い、保護した。「水無月隊」も自分の直属の隊にしたから…なにも心配しないで大丈夫だから…だからゆっくり眠れ。
そんなことを思いながら柊は戦争に身を投じていった。
時は遡り一ヶ月前
「これが俺の団『陽炎団』だ」
「これから『陽炎団』所属となります破宮です」
亮、俺はまた頑張っていくよ。だから心配しないで見守っていてくれ。
「よろしくお願いします!!」
破宮の戦いもまた始まった。
一章完結となります!!!
読んでいただきありがとうございました。
作者の文才の無さのせいでわからない部分が多いと思います。
そこをまず謝罪させていただきます!
分からないところなどがあったらどんどん質問してください!
答えさせていただきます(小説の中を訂正する場合もありそうです)。
誤字脱字なども見つけたら報告よろしくお願いします!!