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拒絶された世界の中で  作者: ヒグラシ
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十話 悲劇

「おい、あんた!!!」

 亮は少年へ駆け寄った。

「おい…おい!!」

 亮は少年の死を受け止められずにいた。

 そのため後ろで、斬り裂いた慈飛の身体が再生し、再度動こうとしていることに気付かなかった。


 少年は死んだことを理解し、またあの世界で男に会うと思っていた。

 しかしそれは誤解だった。

 少年が目覚めた世界には色が無く、闇だった。

「こ…ここは?」

 その瞬間に異変は起こった。

 少年の頭の中で呪いのような言葉が響き渡り始めた。

「うっ!!何なんだよこれ…」

 その言葉は次第に大きくなっていった。

 そしてそれが大きくになるにつれて少年は意識が薄れていった。

 あの男はどこに行ったんだ…?もっと聞きたいことはあるのに!


 葉宮隊は轟音がした位置に到着していた。

「隊長は…いないな」

「周りをくまなく探せ!!」

「はい!!」

 葉宮隊は隊を分散し、周りを探し始めた。


「隊長!完全に見失いました!!」

「ちっ!!!だが近いぞ!!急げ!!!」

「了解!!」


「ごめんよ…」

 亮は少年の死を受け入れ始めた。

 しかし亮は未だに気づいていなかった。

 慈飛の身体は完全に再生していた。

 そして慈飛は後ろに立っていた。

「哀れな隊長が…死ね!!」


 少年は闇に耐えられなかった。

「あっぁぁぁぁああああああ!!!」

 俺は…今すぐ目覚めなきゃ!!亮を!!

 少年は一刻も早く再生を終わらせようとしていた。

「早く!!早くここから出しやがれ!!」

「やめとけ…今だけは待て」

 その瞬間に男は現れた。

「邪魔すんなよ!早く再生させてくれ!!」

「俺がやっているんじゃない…お前自身が再生させているだろ!だが今は再生して、意識を戻そうとするな!!」

「うるさい!!」

 少年は再生を強く願った。

 そして少年の意識は薄れ始めた。

「成功…したか?」

「絶対に後悔するぞ…」

 少年は強制的に再生を行い、目覚めた。

 そしてそこで見たものは、男の言ったことと同じく絶望だった。

 亮の腹部に慈飛が剣を突き刺していたのだ。

「あ…あぁぁぁあ…」

「ぐっ…あんた……やっぱり生きていたか…よか…」

「そんなことより!!自分の心配しろよ!」

「どう?絶望した??」

「……」

「あれ無視か?ならこのままさらに斬り込もう!彼は『吸血鬼』じゃないから死んじゃうね」

 そして慈飛は剣を水平に滑らせた。

「いい加減にしろよ!!お前何したいんだ!!!」

「うーーん…遊びたい」

 そして亮の腹部は中央から右側まで斬られ、出血が酷かった。

「もういい…逃げろ!」

 亮は気を失った。

「傷口を塞がなきゃ…どうすれば」

 少年は混乱していた。

 そのため慈飛の攻撃を避けることができなかった。

「がふっ!!」

 そして蹴り飛ばされた。

 そのまま少年は木に当たった。

 そして慈飛の能力によって少年へ向かって飛んだ剣が、少年を貫いた。

「君はそこで僕の『解体ショー』を見るんだから」

 少年に突き刺さっている剣を抜くことは、通常時なら簡単だった。

 しかし今の少年には無理だった。

 強制的な再生、再生による疲労、癒えきっていない蓄積されたダメージ。

 それが重なり、少年の身体には力が入らなかった。

「何で!!動けよ、動かないと!!!守れない、守らないと!!!」

「うるさいねぇ!静かに見とけよ!」

「頼むよ…動いてくれ」

「さぁ始まるよ!!最初は残った左腕!」

 慈飛は亮の左腕に剣を突き刺した。

 そして斬り飛ばした。

「あぁっぁあっぁぁあああああ」

 少年は叫んだ。

 意味も無く、ただ自分の精神を保つため。

「…おい。その左腕に何するんだよっ!!」

「え?お前のと同じように喰うんだよ」

 その時少年は気づいた。

 あの時聞いた変な音は自分の腕が喰われていたということに。

「あれはおいしかったよ。『同族喰い』のはおいしいんだね。そうだ!これが終わったら今度は君を喰おう。何度でも再生するんだろ。食べ放題だ」

 慈飛は一方的に話を進めていった。

「次は左足」

「もう…もうやめてくれ!」

「嫌だね」

 慈飛は笑いながら言い放った。

 そして左足へ剣を突き刺そうとした。

 しかしその行動は不発に終わった。

「行け!!『ひょう』!!剣を持っている男を殺せ!!」

 柊が遂に追いついたのだ。

「次から次へと邪魔だね…」

 慈飛は亮への攻撃をやめ、襲い掛かってくる「雹」を避けた。

「ちっ!!避けられたか」

「よし!『解体ショー』は終わりだ!!殺そう!」

 慈飛は手を上に掲げた。

 そして慈飛の手を掲げた付近の上空へ、剣が集まり始めた。

「隊長!!逃げますよ!」

「嫌だ!!今なら両方の選択肢を守ることができるんだ!!」

 柊は引こうとはしなった。

「俺がやる!!!」

 少年は限界な身体に更に鞭を打ち、剣を引き抜いた。

 そして亮のもとへ駆け寄った。

 盾になることくらいなら今の俺にもできる!!!!

 少年が亮に覆いかぶさったのと剣が降り落とされたのは同時だった。

「がぁっぁあぁぁっぁぁああぁぁああ」

 少年の身体を無数の剣が貫いた。

 その中には、少年の身体を完全に貫き、亮へ向かっていった剣もあった。

 畜生……今の俺には……これ以上出来ないのに……

 しかしその剣は直前に止まった。

 柊の英霊「雹」が、亮の身体を凍らせたのだ。

「これなら…どうだ!!!!」

「柊さん…ありがとうござい…」

「あっぁああ!!!つまらないよ!!今から絶望に追いつめられる姿が見れると思ったのに!邪魔しやがって」

 慈飛は、柊隊に襲い掛かった。

 それと同時に亮へめがけて降り注いだ剣は止み、少年は亮の隣に倒れ込んだ。

「はぁっ……がふっ…」

 少年の身体には無数の剣が突き刺さり、再生もろくに行われていなかった。

 畜生!!敵わないのか!あいつに…守れないのか?!俺は!!

 少年は悲しんだ。

 自分の弱さに、不甲斐無さに。

 そして次第に少年の心は、慈飛が望んだように絶望に蝕まれ始めた。

 そしてその瞬間に今までの中で最大の勢いで、少年をあの赤い感覚が襲った。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁぁあああああ!!」

 少年は人のものとは思えない叫び声をあげた。

「おい、どうし……ちっ!!こっちはこっちで!ぐっ!!」

 柊は、少年に意識を向けた瞬間の隙を突かれ、蹴り飛ばされた。

 終わる。消える。全てが。お前の中で。

 終わりたくない。消えたくない。すべて失いたくない。俺の周りで。

 我儘だ。傲慢だ。

 そうだよ。俺は我儘だ。傲慢だ。

 なら絶望してなお何を願う?

 力だ。そしてその力で、あいつを俺の手で殺したい。

 そうか。なら契約だ

 契約?あぁ、いいよ。契約すれば力をくれるんだろ?

 勿論だ。

 少年は目覚めた。

 意識を失っていたのは一瞬だったのか…なんであいつがまた?

 そして少年を捕らえていた赤い感覚は消滅していた。

 その代わりに力が少年に込み上げてきた。

「ぐはぁっ!!」

「大丈夫か!!」

「だからよそ見しちゃダメだろ!」

 柊は少年の時と同じミスを行ってしまった。

 そしてそれが原因で、慈飛の剣が柊の心臓を貫こうとした。

「終わ…ぐっ」

 しかしその攻撃は止められた。

 柊の前に鉄の壁が発生し、慈飛の剣の動きを止めたのだ。

「こんなもの!!」

 慈飛は、突如発生した鉄の壁を斬ろうと力を入れた。

「そういうあんたも隙だらけじゃないか」

 少年は一瞬で二百メートル以上離れていた距離を詰め、慈飛を蹴り飛ばした。

「なぁっ!!!!がっ」

 その衝撃を受けた慈飛は遠くまで吹き飛んだ。

 それとともに少年は再度、慈飛に攻撃を与えるために地面を蹴ろうとした。

 しかし柊に止められた。

「おい!!どういうことだ!その身体で無茶をするな!!」

「もういいんだよ…俺はあいつを殺すんだ!」

「そうか…お前『吸血鬼』なんだな…」

「何で知っているんだ…」

「その話はあとでしてやる…」

 柊は、少年の身体に突き刺さっていた剣を引き抜いた。

「がぁふっ!!」

 そして即座に

「死を理解するものよ。罪を嘆くものよ。今生を掴むものに力を」

 呪言を唱えた。

 その瞬間、剣に貫かれ空いていた傷口は塞がった。

 そして柊は倒れた。

「なんだこれ…って!どうした」

 少年は柊の腕を掴み、受け止め

「すまないな…俺は姉のように上手く治癒効果の能力は使えないからな」

「なんでそんなのを…俺に使った」

「お前が今一番……あいつを倒せる可能性が高いからだ…行け!!!!」

「あぁ…」

 少年は地面を蹴り飛ばし、慈飛の方へ向かっていった。


遅れました...すみません


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