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ゲーセンの輩  作者: 達磨
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第五話・増やせ!減らせ!

「今日も晩飯は、もやし入りインスタント袋麺かー」


「………」


「もうちょっとこう、力のつくというか、ねえ?」


「………」


「おーい、無視しないでよー」


 ぎぬろ。


「な、なによお」


「お気に入りのブランドの限定品だかが欲しいとかぬかして、僕の実家からの仕送りや、僕の入れた生活費まで含めて全部使って下さりやがったのは、どこのどちら様でございましたですかねえ?」


「うぐう!?」


「家賃だの光熱費だの、月々の支払い分を納めた後だったのが不幸中の幸いだったよ。今現在、朝昼晩の三食を支えてるのは、本来、僕の今月のおこづかいだったお金だということをお忘れなく」


「むぐぐぐぐ」


「職場での見栄があるなんて言うから、お弁当に金かけてる分、朝晩は質素になるに決まってんでしょ?袋麺だって、非常用にって、安売りしてた時に僕がまとめ買いしといたやつを放出してんだけど。食べたくないなら僕が食べちゃうよ?」


「わあああ!食べる!食べるってばあ!」


 ったく。


 ここに来る前に叔母さんと話した時、「あの子をよろしくお願いね」とか言われたときは、世話になるのはこちらなのに、何の冗談だろうと思ってたけど。


 すみれ姉さんは、割りとダメなひとかもしれない。





「たまきさん!こっち側のメダルの回収、終わりました!あと、どっかのこってます?」


「いや、こっちも終わったよ。お疲れ」


 金曜の閉店後。


 メダルをメインに担当している根津たまきさんを手伝って、メダルゲームのオーバーフローボックスや、ギミック絡みでこぼれたメダルを丁寧に回収して、集計していく。

 メダルの貸し出しや預け入れ、各メダルゲーム機のデータなどと照らし合わせて、利益率や利用率、なにか異常がないかを、店長や社員さんが後から調べるのだそうだ。


「新人、こいつを見てみろ」


「あ!?」


 たまきさんが差し出したドル箱の中には、大量の他店メダル。


「たまきさん、これ、どこから?」


「マスレースコーナーのいたるところから出てきてな。夕方のチェックの時は無かったから、そこから閉店までの間についた奴のうちの誰かだ。店長に頼んで防カメチェックせにゃならんな」


「手伝いますよ」


「お?いいのか?」


「ええ」


「助かるよ。残業代の申請は、口添えしてもぎ取ってやっから心配すんな」


「助かります!実は居候先の従姉が…」


 くくく。


 この店で、このような不正をするとは、なんと愚かな。

 必ず後悔することになるのにねえ。





『こちらこころ。手配中の対象の来店を確認。ただちに警戒シフトに移行せよ。繰り返す。手配中の対象の来店を確認。ただちに警戒シフトに移行せよ』


 む。


 おいでなすったか。


『こちら店長。えー、対象のグループの預け入れメダルは、残高がかなり少ない。よって、本日も不正が行われる可能性は十分にあるからね。じゃ、各員よろしくー」


『りょーかい』


『了解です』


『ほい了解』


『…了解』


「了解しました」


 さあて。


 ショーが始まるか否か、それはあちらさん次第ですな。





『口座のメダルを引き出すことなく席を確保してる。オンライン認証もしてないし、こりゃやらかす可能性大だな』


 たまきさんのインカムで、僕を含めた待機中の面子の緊張感が高まる。


『はい、アウト。バッグから他店メダルを取り出して流し込んでやがる。店長、映像証拠は?』


『ばっちりだよ。じゃ、総員!くそ野郎共を確保お!」


 移動開始。


 僕とドムさんの役目は逃走経路のひとつである階段の封鎖だ。

 まあ、こころさんやたまきさんが討ちもらすことはないだろうけどね。


 配置につくと、ちょうど、件の高校生っぽい少年の集団に、たまきさんが声をかけたところだった。


「兄さん達、やってくれるねえ」


「なにが?」


「よそからメダル持ち込まれたら困るんだよ」


「は?知らねえし」


「へえ?じゃ、ちょっとどいてもらえるかな?機械の中調べさせてよ」


「やだし。今みんな遊んでんの見えねえの?」


「じゃますんなよババア」


「めざわりだし。仕事してろよ。ばいばーい」


 うわあ。


 思わずドムさんと顔を見合わせてしまった。


 余計な煽り、たっぷり入りましたー!こりゃ、血の雨がどしゃ降るぜ。


「素直に認めりゃ可愛げもあんのになあ?くそガキ共が」


「あ?さっきからなんなのあんた。客にむかってその口のききかた、いいわけ?」


「俺ちょっとキレたわ。責任者よんでこいよ」


「いい気分で遊んでたのに、だいなし。どーしてくれんのこれ?」


 あーあーあー。


「ドムさん、彼らにトラウマが刻まれかねないですね」


「…仕方ないよね。あそこまで開き直るとさ」


 おや。


 連中、立ち上がりだしたぞ。


「なんかしらけたし、帰る?」


「そーすべ」


「こんなくそな店員のいるくそな店、二度とこねーから」


「うっぜえ店。うっとーしーババアもいるし」


 なにがおかしいのか、彼らはげらげら笑いながらエレベーターに向かうが、そこには仁王立ちしているこころさんが。


「ちょいまちー。あんだけ好き放題しといて、ばっくれようなんざ、ちいとばかしむしがよすぎるっしょ」


「うわ、またなんか出たよ」


「なにこのチビ。なんでこんなとこにいんの?」


「てか、この店マジでうぜーし」


「どけよおら…」


 ごが!


「すたほ!?」


 おお、浮かし技っすか、こころさん。

 こころさんの放った、膝蹴り版サマーソルトで、先頭の少年が中空にかちあげられた。


 かっ。


 そこに。


 たまきさんの放ったメダルが、


 かかかかかかかかかかかかかかかかかかかか。


 まるでマシンガンのごとく少年を滅多うちにしていく。

 超高速でメダルを撃ち出しているたまきさんは、残像が発現しているほどである。


 常連さん達も拍手喝采。


 どちゃり。


 ずたぼろになった少年が、血みどろで床に落ちた。


「な、な、なん!?」


 がぎ!


「ほ!?」


 ばぐ!


「す!?」


 ぎゅる!


「ぱ!?」


 かかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかっ。


 残りの面子も、次々とこころさんにかちあげられ、先程と同様、たまきさんのメダルマシンガンの餌食となったのでありました。





「なんか面倒くさいルールとかいろいろあるが、んなことはまあ、置いとくとして」


 ダストシュートに放り込んだ連中を、こころさんとたまきさんがお見送りするというので、なんとなくついてきてしまった。


「なにより、ウチの店を虚仮にするのだけは勘弁できないのだよ。普通に遊んでくれてるお客さんにも悪いしねー」


「ま、そういうこった。よーく覚えとけ、ガキ共」


 皆で抱き合ってカタカタと震えていた少年達は、ガクガクと頷くと、悲鳴を上げながら走り去っていった。


「さてと、ホッパーの中のメダル、選り分けないとなあ。あれ、面倒くさいんだよ」


「手伝いますよ」


「お?いいのか?」


「ええ」


「三人でぱぱっと終わらせちゃおっか!」


 持ち出されたお店に、回収したメダルを返してあげないといけないしね。


 いきなり訪ねてもあれだし、電話一本入れとこう。



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