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ゲーセンの輩  作者: 達磨
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愚痴&想い出コラム「お客さまは神様なんかじゃねえんだよ」

 接客業について、前向きに一家言お持ちの方は、お読みにならないことをおすすめします。

 言葉が独り歩きして誤用されてしまうことはままあることですが。


「お客様は神様です」


 この言葉は、それを発した故人も困惑してしまうほど妙な使われ方をしてますよね。


 本来、提供する側が、真摯な姿勢でことに臨むよう、自身に戒めるために用いるのであり。

 受ける側が、自身の立場が上であると主張したり、横車を押し通すために用いるものではないはずなのですが。


 ま。


 実際、自分も現役時代、よく言われましたしね。

 言葉の由来など知らないであろう十代の少年から言われた時など、そんなわけないでしょう、と、素で言ってしまったこともありましたっけ。


 経営者が、従業員に対してこの言葉を指導で用いる際。

 真摯な姿勢で、なんてのは建前に過ぎず、客との揉め事を起こさないようにとか、下手に出て客を持ち上げ、金を落とさせるよう仕向けろ、とか。

 どうしても、そういった意味合いの方が強いと感じてしまいます。


 ゲーセン業界の場合、現行の経営陣って、前にも挙げた“置いときゃ儲かる”世代の人とかも多いんですよね。

 当時の楽でおざなりな運営を自慢気に語っちゃうような人に、しかつめらしくこの言葉を使われたって、虚しく聞こえるだけなんですが。

 大体、この業界が接客に力入れだしたのなんて、他の業界に比べたら遅すぎるくらいで、ほんとについ最近のことですしね?

 しかも、能動的とはとても言えない状態で。


 また。


 現場レベルでも。

 従業員がこの言葉を口にする時、そこには、社会的に低い立場への諦めや皮肉がこめられてることが多くて。

 少なくとも自分は、真摯な気持ちでこの言葉をいい放てる猛者になど、一度たりとも会ったことはないです。


 さて。


 第三話で、キャラクタに極端なお客様の比較をさせましたが、あれ、ほぼ実話なんですよね。


 御一方はほんとにいいお客様で、間違いなく店の売上げの底を支えて下さっているお一人でした。

 従業員間でも有名で、そのお客様から、なにかしら要望があった場合、皆の反応がもう段違いで。最速で最善の手を打てるように指示なしでもてきぱき動きます。


 もう御一方も、常連には違いないのですが、来店ポイントや来店サービスなどの用事を済ませるとさっさと帰るか、仲間内から回してもらったメダルで遊び、少しでも気に入らない対応や不具合が発生すると、唾を飛ばして罵詈雑言を浴びせることもありますし、粘着質に補償の増加を求めたりもしちゃいます。

 こちらも、従業員間で先程の方とは真逆の意味で有名で、いかに上手くいなすかの情報交換をして、もしも誰かが捕まった場合は、助け出すために皆が協力したりとか。


 前者の方は、ことさらに自分は客であるとアピールなんてしなくても、従業員からも自然にサービスを引き出してしまいます。

 後者の方は、常に声高に自分が客であるとアピールし、サービスを強要することもしばしば。でも、本物のサービスからは遠のいてしまったりするんですよね。


 どちらが楽しく店で遊べるのか、それは主観的なものですから、自分にもわかりません。


 お客様には敬意をはらって接するべし。


 ですが。


 おい!と呼ばれて対応に向かうと、


「これ邪魔だから捨てとけ」


 そう言われてコンビニの弁当のゴミやら空きペットボトルを投げつけられたり。

 同じお客さまから、コインが入らないぞ!と呼ばれて対応してみると、セレクタにごはん粒が入り込んでたりとか。


 あるいは。


 どんな事情があるのかは知りませんが、生活費を自治体から支給されて生きている方が、自分からそう豪語しちゃうような方が。

 どこに異常があるかわからないほど元気なご様子で、朝から晩まで店に入り浸って遊んでいて、しかも、可能な限り店には金を落とさないようにしている。


 えと。


 こういった方にまで敬意をはらえと?

 他のお客さまと同等に扱えと?


 や、自分には無理っす。


 気がつくのに十年以上かかりましたけど、ただでさえ、自分、接客向いてないですし、得意でないですし。

 精々、ひきつった、すぐにひっぺがせちゃうようなぺらぺらの営業スマイル浮かべるのが限界かと。


 ええ。


 

 “好きと得意をわけて考えろ”


 この言葉を、もっと早く知りたかったなあ。

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