新しい恋
初作品なため、未熟な部分もあるかもしれません。それでもいいと言う方は、読んでもらえると嬉しいです。
雪が降り、鮮やかで綺麗なイルミネーションや、クリスマスだからか賑わいを見せる街中を私は一人で歩いていた。
「綺麗だね、ユー君」「そうだな」
そんな会話をするカップルの横を通り過ぎていく私は、どう見れているのだろう?
さっきまで、ついさっきまでは、私も彼らと同じように気分も浮かれて、精一杯おめかしをしていたのになぁ…。
【ごめん、待った?】
【ううん、大丈夫】
【そっか。
いこ、早くしないとイベントが始まっちゃうよ?】
彼の腕を引き、行こうとしたとき。
彼はやんわりと私の手を振り払った。
【今日来たのは、その話をするためじゃないんだ】
深刻そうな、気まずそうな、そんな彼の顔に目が離せない。
嫌な予感がした。
【どういうこと?】
震えそうになる声で、私は聞く。
彼が口を動かし、話す瞬間。
言わないで。それ以上は聞きたくない。
そんな思いが、胸に広がる。
【別れよう】
【え?…なん、で…】
なんで、どうして。
私は、好きなのに。愛してるのに。
【好きな人が、出来たんだ】
幸せそうな、そんな笑顔。
それを見て、悲しくなった。
私のことは好きじゃなかったの?
遊びだったの?
【…っ】
本当は引き止めたい。
どうしてって、言いたい。
それでも私の醜いところを見せたくなくて、必死に取り繕って。
【…うん、いいよ】
嫌、嫌だよ。
【貴方がそう言うなら、】
私、好きなの。愛してるの。
【別れよう。
今までありがとう】
別れたくない。別れないで…。
【俺の方こそ、今までありがとう】
彼はそう言って、立ち去った。
残された私は、溢れでる感情に押し潰されそうだった。
【ふっ…っ…わかれ、たく…ないのに…!いや、いやだよっ…っ…】
涙を流して。
苦しいのに、彼は来ない。
何時ものように、どうしたの?って言ってはくれない。
今、思い返しても苦しい。
それはそうだ。だって、ついさっきのことなんだから。
人の姿が見えない公園のベンチで、ぼんやりと空を眺める。
家に帰る気には、なれなかった。
「あれ?鈴木さん?」
「え?」
声がして、顔を上げた。
そこに居たのは、バイト先が一緒の相沢くんだった。彼は容姿が良くて、優しくて、私も何度かバイト中でのフォローをしてもらったのだ。
「こんなところで、どうしたんです?」
訪ねられて、困った。
まさか彼氏と別れて傷心中です。なんて言えるわけがない。
「え。えーと…ちょっと、外…の空気が吸いたくって、散歩!そう散歩しに来てたの!」
む、無理矢理感がありすぎる!
というかどもり過ぎた!
しかも挙動不審だし!
そんな私を見て、相沢くんはおかしそうに目を細めてクスリと笑う。
…う、うわあ…さすがイケメン。何をやっても似合う。
「奇遇ですね。
僕も散歩してたんです」
そう言って「隣、いいですか?」と聞いてきた相沢くんに、私は「う、うん」と頷いて肯定した。
「雪が降ってますから、流石に寒いですね。
鈴木さんは薄着みたいですけど、大丈夫ですか?」
「え、あ、いやあ、大丈夫!
私、元気だけが取り柄……、クシュン!」
は、恥ずかし過ぎる…。
大丈夫って言ったのに、くしゃみしちゃうとか!しかも見られたし…!
「大丈夫じゃないですよね?
これ、良かったら着て下さい」
相沢くんはそう言って、自分が着ていたコートを脱いで私に渡してきた。
「いいよいいよ!
そしたら相沢くんが寒いし!」
「僕より鈴木さんの方が寒いでしょう?
それに、ちょっとはカッコつけさせて下さいよ。
ね?」
す、素敵すぎる笑顔…。
不覚にもトキメキを感じた。
「…うん。ありがとう。
明日、バイト先で返すから」
「はい、わかりました。
ところで鈴木さんはまだここに居ますか?」
「ううん、もう帰るよ。
気分転換も出来たし」
相沢くんのおかげか、さっきより心が軽くなったし…。
「なら、送って行きます」
「え⁉︎」
「辺りも暗いですし、鈴木さんに何かあったら僕が嫌なんですよ」
「ダメ、ですか?」と聞いてきた時の相沢くんの顔を見たら、断るにも断れず。
今、私と相沢くんは隣を歩いていた。
私だけかもだけど、なんとなく気まずい。
何か話題…話題は…。そんな時、相沢くんの顔を見てふと思い浮かんだ。
「そう言えば相沢くんは、クリスマスなのに誰かと一緒に過ごさないの?
その…彼女さんとか」
顔良し性格良しな相沢くんのことだ、さぞやモテるのだろう。
彼女もいない可能性の方が低い。
「あはは、彼女なんて居ませんよ。
だから、一人寂しく散歩してたんです」
「嘘でしょ?」
「ホントです。
それを言うなら、鈴木さんだって可愛いじゃないですか」
か、か、可愛い…⁈
可愛いって…!今まで一度も言われたことがないよ。
頬が熱くなるのを誤魔化したくて、俯いた。
「そういう鈴木さんこそ、彼氏とかと一緒にいなくていいんですか?」
その言葉に、思考回路が停止した。
つい数時間前の出来事を思い返してしまう。
「…その、今はフリーなんだ。
さっきまで居たんだけど、フラれちゃって」
湿っぽくならないように、私は明るくおちゃらけた感じで言った。
ふと、途切れてしまう会話。
き、気まずい…。
「…僕じゃ、ダメですか?」
その呟きに、足を止めてしまう。
相沢くんも足を止めて、私のことを真っ直ぐに見つめていた。
「貴女のことが好きです」
あ、なたのことが…スキ?
え、貴女って…、好きって…!
「…わ、私に言ってるの⁉︎」
「はい。貴女に、鈴木さんに言ってます。
僕は鈴木さんが好きです。
付き合ってくれませんか?」
きゅ、急展開過ぎて…何が何だか…!
で、でも、私は…まだ彼のことが好きで…。
「貴女がまだ、僕じゃない誰かを好きでいることも承知の上で言ってます」
そんな心の内をわかっているかのように相沢くんは、私に向かって言った。
「だから、一週間。
貴女の一週間を僕にくれませんか?」
「一週間…?」
「はい。
僕が鈴木さんを、一週間以内に振り向かせることが出来たら、僕と付き合って下さい。
無理だったら、諦めます。
迷惑だったら、やりません」
その言葉に、私は賭けてみたかった。
彼を忘れさせてくれるような、そんな、新しい恋が出来るなら。
「…頑張って、私を振り向かせて」
私の返答に、相沢くんは挑戦的な表情を浮かべて笑う。
「はい。
必ず、振り向かせてみせます」
その言葉に、ドキドキと今まで以上に胸が高鳴ってしまったのは。
きっと、まだ、気のせいだ。