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夜中の短編(ショート)

作者: 惷霞 愁灯

最近、学年が上がってから塾の終わる時間が遅くなってしまった。

親の勧めで通っている塾で、都会から少し外れた場所にある進学塾だ。

去年までは、どんなに遅くなっても9時30分には帰宅していたが、今となっては10時15分辺りが普通になってしまっている。

その塾には一人友達がいる。幼稚園の頃一緒で、小学校から離ればなれになっていたが、――――ここで再会するとは思ってもいなかったが――――塾で気軽に話せるのはこいつ位だ。



その日は両親共々、仕事で帰りが遅くなると聞いていたので、塾の終わりに長々と立ち話を友達としてしまった。募る話も互いにあり、切り上げた頃には町のネオンが眩しく輝いていた。

塾から徒歩で駅まで行き、電車に乗り自宅の最寄り駅で降りて、最後に自転車に乗って到着。これが普段の帰路だ。ただ最寄駅についたときには、時計の短い針が11のマークを指していた。さすがに急いだ方がよかったので、いつもは使わない近道を使うことにした。


駐輪場から自転車を運び出し、歩道に出てから音楽を聴くためにイヤホンをつけた。さっきまでとは一転して、街頭だけが自身を照らし、辺りは真っ暗。街頭の照らす範囲が三角錐を描いている。まるでここからでてはいけないと問いかけているようだった。光源を見ると、そこを中心に十字に光り眼鏡のレンズに反射する。そんな誘惑を捨て、それらのない裏路地へ駆け抜けていった。


あと数分こげば家に着きそうなタイミングで、猫の声が聞こえた。イヤホンで音楽を聴いてるにかかわらずだ。足を止め、手に圧をかけて自転車をとめる。イヤホンを肩耳だけ外し、聞き耳をたてた。すると左手の家と家の隙間にあるスペースに珍しい猫がいた。なにも姿形が異様なわけではなく、首輪をつけられている現状が珍しかったのだ。自分のイメージでは、猫は放し飼いが頭にあったので、その空間はとても興味をひいた。 近づいてよく見てみると、猫の近くに餌の入った皿があった。しかし首輪に繋がれたチェーンの長さでは、物理的限界があった。飼い主のミスだと思い、皿を近くに寄せてあげるとまるで吸いつくように、餌を貪り始めた。もっと眺めていたかったが、時間には抗えずその日はそこを立ち去った。


その次の日も、(昨日に比べたら早い時間だったが)猫は餌を食べれずに困って鳴いていた。次の日も、その次の日も。


その日も、餌皿を近づけるための裏路地へ向かった。その時には、これが塾帰りの習慣となっていて、なんの躊躇もなく猫に会いに行った。土日は塾が無かったので、3日ぶりに会うのが楽しみだった。


けれど、その日の猫は鳴いておらず、鋭い眼で此方をジッと見つめたきた。その時は、それが自身に向けられた愛着心と勘違いしていた。だからこそ普段通り、遠ざけられた皿を近づけようとした。


その時。


俺の腕は、噛み千切られた。




片腕を失くした俺が後に知ったことだが、その猫の飼い主はどうやら殺人鬼らしく、殺した相手の肉を猫に食わせようとして、食わせないということで楽しんでいる……ようはエキセントリックな奴だったらしい。そして、あの場所に寄ったあの日。いつもの雰囲気と違っていたのはやはり、猫がこちらを獲物を狩る眼で睨んできたからだと裏付けられた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が落ち着いていて読みやすいですね。 [気になる点] この内容をこの短さに纏めたのは凄いですが、少々後半突っ走りガチな気がします。私もよくやってしまうミスですが(笑)、序盤から細かい伏線…
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