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その日届いたモノ

作者: ネンネコ

まぁ・・・実話ですなww

親、そして彼女は大事にしないとなー。最近そう思う出来事があった。


変テコなエロ小説ばっか書いてる俺だが、こう見えてラグビー部出身、181cm88キロの巨体、シカシもう半分ほど脂肪に変わってしまった大きなカラダを揺すりながらいわゆるゴールデンタイム、チマチマネチネチとテレビゲームなんかをしてると隣り、付き合いだして3年半程経つ彼女に「観たいテレビあんだけどぉ~」などとソファー上、小突かれつつ「待てっ!レベル上がったらセーブすっから!」とテレビ内RPGゲーム、思わぬ敵の攻撃に喘ぎ喚きながらコントローラーをワサワサと引っ張り、押し合い、やっとのテイで一息ついたところで突然にマンションのチャイムが鳴った。


「・・・お届けものでーす」


やや?こんな時間になんだろう?誰からだろう??


そう思いながら、あー、そういえば実家からなんか送ってくるっつってたっけ。


2~3日前、突如仕事帰りの電車内スーツの内ポケットで鳴り出した親からの携帯内容を唐突に思い出し、あーそうね今日ね今日ねはいはい、そーすね。そう思いながら短めの廊下を歩いていくうち、うはっ!パンツ一丁じゃねーか俺っ!これはいくらなんでも配達の兄ちゃんに無礼極まりねーだろ、スェット的なもん辺りになかったけか!?と戸惑いウロタエそうしてるうちに彼女が「あたしが出るよー」というので俺はなぜかパンツ一枚Tシャツ1枚のまま部屋の片隅、身を小さくしながら息を潜めていた。


女の子としても小柄な方の彼女がやや重そうにリビングに持ってきたダンボールはなぜかジットリ濡れすさんでおり、明らかにクール感漂うそのダンボール、俺はそこに食い物的な嗅覚を敏感に感じ取ると素早く2重に巻かれたガムテープを乱雑に引っ張り剥がした。


「ちょっと待ってよー。カッターで切ればいいのにもぅ・・・」


そういう無頓着、無造作型の俺の行動が生い立ちよろしい彼女にしてみれば節操ないこと、この上なく映るのか無粋に尖らせた口先のまますでにそのダンボール、半分ほどめくられたガムテープのクルクル巻かれた破片のゴミクズを隣で拾い集めていた。


いつだったかまだ彼女と付き合い出した当初、都内のどこか有名なラーメン屋に行った時、長蛇の列、もう30分近く経ったのかその半ばあたりまできた頃、俺はどうにも我慢できなくその列から彼女の手を掴み離れた。

やや困惑顔の彼女だったがそうまでして待たねば食われないラーメン、というのもやはりおかしくもあり、もともと田舎育ちだからか列、というモノがひどく苦手な上、来てもらって当然こっちは食わせてやるんだよ、さぁさっさとどれにするか決めやがれよ的な食券係の店員態度が鼻につき、それにも増してその店から慌てたように出てくる客を見てると何か、カウンター越し、店主の顔色など伺いながら圧倒的スピードで平らげねばならぬ、といったモノがアリアリと伝わってきて俺はそのことを少しだけ歩いた道の先、緩い物言いで静かに彼女に説明した。


「うんうん・・・あたしもそー思ってたァ・・・ホントはあんま今ラーメンとか食べたい感じじゃなかったしィ・・・他いこ他いこ~♪」


おおっ!なんて理解力のある子なんだ素晴らしいっ!!


そう思いつつ、その時の表情と今の散乱せしガムテープを拾い集めてる彼女の表情がどことなく似ているのになんとなく気付いた。

それは俺のワガママ傍若無人、発作的短気症候群、というモノをどこかで大きく包容し、努めて理解せしめている彼女の大いなる優しさのようでもあった。


「なにかな~?・・・・・ねぇ?」


俺より歳下だと言うのに遅れてやってきたクリスマスプレゼントの箱を引っ掻きムシる幼い子供にでも言い聞かせる具合に顔をほころばせる彼女。


これはもう絶対的に食い物だわな!ちょ~ど腹減ってたんよっ!あざっす!!


そう咥内、唾液溢れるのを感じながら、いやいや待て待て、もしそう多大な期待をしたのち全く違うコチラが意図せぬ思いもしないモノであった場合のココロの備え、というモノも瞬間的に気持ちの上での防御壁になっていく。


ダンボール、最上段。

蓋を開けるとまず目の前に現れたのは俺の生まれ育った地元紙の新聞で、なにやらソレを蓋代わりに使用する、というムカシながらの技法というモノがここでも散見できた。


俺はそれを0、5秒程の速さでひんむき丸めると次に現れる光景に息を飲んでいた。

少しだけヒンヤリしたダンボール内はギッチリ隙間もない程の食料の断片で埋め尽くされており、本来ならちゃんとした料理に使うべき2袋1セットになったウインナーの類いにまずは手を出す。


「ヤダなも~・・・そのまま食べちゃうなんて・・・クスクス」


なにか大型のペットでも観るかのような情けのこもった色が彼女の瞳の先に浮かんでいく。


冷蔵庫に入れる前のつまみ食い的衝動快感が俺の胸をざわめかせたが、隣りに居る彼女を咄嗟に思い出しホレっ!とその冷たいままのウインナー的食べ物を彼女にも差し出した。


「え?いらないわよ・・・もぅ・・・」


内股で座り差別的冷遇視線を投げかける彼女を無視するよう、俺はダンボール奥の奥、その底辺に至るまで一体ナニが入っているのか?ということを念頭にウインナーを口に大きな手を突っ込ませたが、ガサリ、という紙状のモノを手にした途端、俺の脳裏に発作的に嫌な予感が走っていった。


「えー?なにそれー?見せて見せてー」


くはっ!これは完全にオントシ88歳になるお婆ちゃん&おふくろの雑な手書きとも言える手紙状のモノがスーパーの広告の裏側を利用したであろう紙片に太いマジックらしきペンで書き留められているものじゃんかっ!


内容はこうだった。





①風邪はひくな

②会社で真面目に働け

③彼女を大事にしろ

④酒はあまり飲むな

⑤お婆ちゃんももう余り長くない


風邪っっ!!・・・真面目にとかっ!!ちょっ!!!・・・うはっ!マジかっ!!


20代後半にも差し掛かる俺にタマサカ来た宅配便に狂気乱舞してる姿、というモノもそれはそれで恥ずかしかったが、俺の2つ歳下の彼女はまず①を読んだだけで吹いていた。


「ぷはっ♪・・なにこれー??風邪はひくな・・・だってさー♪…ぷぷっ!」


その小声に続き大笑いしたのち、もう1度思い出したよう涙を浮かべ俺を指差したまま爆笑する彼女。


よくよくダンボールの中身を見ればお婆ちゃん的マストアイテムがそここにあり、そこらの大型スーパーで100円も出せば買えるゴマせんべい、とか、1度開封したら最後、汁モノにしか使えない、日に日に湿気を吸いしまいには使い物にならなくなるであろう大袋トロロ昆布、果ては10個程入った小型みかん、2重にされたビニール袋に入った生米など、別にクール便じゃなくっていいだろっ!持てばキンキンに冷えた数種の缶詰類を手に、どう考えても費用対効果の悪い、俺からすれば運賃のほう高く付くんじゃね??と思えるような品揃えに苦笑してしまう。


しかしソコには孫である俺、息子である俺に対する何物にも代え難き愛情と呼ぶべきモノがヒシヒシと伝わり見え、クール便の低温ダンボールの内側、ソコに詰まっているであろう温かい気持ちが溢れてくるようだった。


爆笑して落ち着いたのか、隣で優し気にフンワリ笑う彼女もまた両親の愛情をたっぷりに育ってきた女の子らしく、その侮辱心など一切感じさせない屈託ない笑顔に俺も釣られて1度だけ小さく笑った。


③の彼女は大事にしろ、という文字に妙な気恥かしさを覚えること数秒、突然に彼女が柔らかいキスなど頬にしてくる。


「あたしお風呂入ってくるから、ちゃんと冷蔵庫しまっておいてねー。缶詰も~♪…ぷぷっ!」


「うっせっ!!」


俺はそう毒づきながら果たして俺がお爺ちゃん、いや、もしかしたら彼女との間に生まれ落ちる子供、その親、と呼ばれるモノになった時、このような笑いを誘うトンチを効かせられるだろうかと独り思った。


人が人を想う時、それは形や価値なんかじゃない。

その物に宿った愛情の重さなんだ・・・・・


俺はそう静かに思いを馳せ、彼女、そして両親、更にはお婆ちゃんをもっともっと大事にしていかないとなー。そう深く思った。


東京生まれの東京育ち、電車を乗り継げば実家に帰るのにこのマンションから1時間もかからぬ都会育ちの彼女にしてみればこういった時折俺の住むマンションに対する地方からの物資補給は珍しいのか、風呂上がりもフンフンなどと独りうなづき何かを納得したよう冷蔵庫の中、そしてその小っ恥ずかしい手紙の内容を目を丸くし吟味していた。




ベッドの中・・・・・・



今夜誘ってきたのは・・・・・・・・・彼女の方からだった・・・・・・・・




                         完

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― 新着の感想 ―
[一言]  ごちそうさまです!  というしかないおノロケ話かと思いきや、ホロリ。  手紙というのは、言葉と違って一回きりではなく、何度も繰り返し読んでしまうため、その度に泣けて来てしまいます。  家…
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