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消えないテレビ/人格内他者
『消えないテレビ』
消し忘れのテレビみたいに観ていないのに目に入る。
聞いていないのに耳にこびりつく。
生まれてからこの方、嫌な記憶ばかり残る。
4K放送はいらない。
消せ、消せ、消えろ。
観たくもないのに消えないテレビ。
忘れるなと言うように、刷り込むように止まないテレビ。
精神を蝕む。
消えろ、消えろ、消えろ。
声がする。
聞きなれた声だ。
『人格内他者』
そこには自分ではない人格があった。
彼が見えたとき、彼がどうしようもないほどに他人であることを知った。
自分の人生の半分以上を彼で形作っているのに。
私の人格の一部は彼の言葉だというのに。
言葉に出来ない思いを、彼の曲が形にしてくれた。
私の宇宙の中には、彼の惑星がある。
それでも、彼の宇宙で私は惑星になれない。
不思議な心地だ。
彼の宇宙の認知しないその一部に、欠片として存在するのみだ。
私の人格で溶け合っている彼は私のものではない。
呼吸する宇宙は私のものではない。