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第8話:超大国たちの反応

 ネオンがスパイ集団を領民に迎えた翌日。

 ”捨てられ飛び地”を囲う三つの超大国に、ルイザ、ベネロープ、キアラからの情報が届いた。


 ◆◆◆


 ~エルストメルガ帝国の場合~


 シックな赤色の巨大な宮殿で一番大きな部屋である、"帝王の間"。

 今年で18歳を迎えたばかりの美しい少女が、堂々と入室した。

 彼女は第一皇女のシャルロット。

 父譲りの金髪は煌びやかに輝き、深紅の瞳は見る者を離さないほどの引力を持つ、国内外の羨望を集める少女だ。

 シャルロットは玉座の前に行くと、丸まった羊皮紙を差し出す。


「パパ、ルイザから飛び地の情報が届いたわ。……先に言っておくけど、想像以上に面白かったわよ」

「ようやく来たか。予定よりずいぶんと遅かったな。それと、宮殿では父上と呼べと何度も言っておるだろう」

「まぁ、いいじゃない。親子なんだから」

 

 玉座に座るは、重く光る金髪と紅玉のような赤い瞳を持つ骨太な男性。

 エルストメルガ帝国の最高権力者、グリゴリー・エルストメルガだ。

 グリゴリーはやや不満げな表情で報告書を受け取る。

 "捨てられ飛び地"におけるネオンの活躍が記された文書を……。

 最初は文句を言いながら読んでいたが、徐々にグリゴリーの瞳は驚きで見開いた。


「このネオンと呼ばれる人物は……何者だ? アルバティス王国にそんな有望な人材がいたのか?」

「私も知りませんわ。何もない国かと思いましたが、優秀な人間もいるようですね」


 魔力の衝撃波を自由自在に操る剣に、極めて高度な土木技術で作られたバリア付きの水路、地中深くまで瘴気に汚染された土を浄化する鍬、さらには収納機能のある指輪など、見たことも聞いたこともない魔導具を生み出せる人物……と書かれている。

 そのような人間は帝国はおろか、世界中のどこにもいなかった。

 唖然としながら報告書を読み終わったグリゴリーを見るシャルロットの目は怪しく光る。

 

「パパ、これはチャンスよ。ネオン君を引き込んだ国が勝つ」

「ああ、そうだな。この人物を味方にしたら、間違いなく連邦と皇国より優位に立てる。飛び地にスパイを送り込んだのは正解だった」


 ルイザの進言通り、拠点製作は中断しネオンを味方につける方針を互いに確認した。

 とはいえ、やはりネオンの詳細が気になる。


「……シャルロット。このネオン・アルバティスという少年について、お前は実のところどう思う?」


 父に尋ねられ、娘は小さく笑う。

 報告書を読んだだけで、すでにネオンに対して強い興味を抱いていた。


「面白いと思うわ。まだ12歳ってことは、スキルを発現して間もないということ。これからもっと強くなったりして。まぁ、何にせよ、神器と呼ばれる魔導具を見てみたいわね」

「うむ、朕も同じ考えだ」


 グリゴリーは一呼吸つくと、シャルロットに命じる。


「まずはその神器とやらを入手するよう、ルイザに指示を出せ。ネオン少年へのアプローチも忘れるな」



 ~カカフ連邦の場合~


 時を同じくして、カカフ連邦。

 石造りの堅牢な官邸の大総統室で、30代半ばの若い男性が娘とともに、ベネロープから"捨てられ飛び地"の報告を受けていた。

 男の名はガライアン・カカフ。

 超大国の中で最も若い元首だ。

 一通り報告を聞いた後、顎に手を当てながら呟いた。


「……ふむ、【神器生成】とは面白いスキルだね。僕も初めて聞いた。まさしく、夢のような魔導具の数々じゃないか。彼を引き込んだ国が国際競争を勝利するだろうね」


 濃い紫の髪は短く切り揃えられ、薄い紫の瞳はネオンの話を聞いても凪のように穏やかだった。

 ガライアンは同席する娘に視線を向ける。


「アリエッタの意見はどうかな?」

「もちろん、わたしも興味津々よぉ。ネオンちゃんって言うのねぇ。可愛い名前だわぁ」

「……君はいつも通りだな」


 次女の反応に、ガライアンはため息交じりに呟いた。

 アリエッタは今年で15歳。

 母親譲りののんびりした性格であり、何も考えていないように表向きには見えた。


「ネオンちゃんは兵器も作れるのかしら。もしそうなら、帝国と皇国を戦わずして奴隷にできるかもしれないですわねぇ、お父様ぁ? まずは、神器を確認したいですわぁ、んふふふふふ」


 内実は、国内有数の強硬派で野心あふれる女だった。

 ガライアンは「私も同感だ」と返し部下に向き直ると、真剣な表情で命じる。


「ベネロープに伝えてくれ。神器を入手せよ、とね。もちろん、ネオン少年自身も連邦に引き入れるんだ」



 ~ユリダス皇国の場合~


 さらに時を同じくして、ユリダス皇国。

 芸術性を重視された豪華絢爛な宮殿では、初老の皇帝が孫娘とともにキアラの報告を受けていた。


「……ほぅ、神器を生み出す少年か。これはまた面白い人間がいたものじゃ。おそらく、ネオン少年を引き入れた者が勝者になるの」


 皇帝の名は、バルトラス・ユリダス。

 銀色の髪と長い顎髭はすっかりくすんでいるが、金色の瞳だけは少年のように爛々と輝いていた。

 バルトラスは傍らの小さな椅子に座る、大事な孫娘に問いかける。


「ラヴィニアはどうじゃ? 飛び地にはネオン少年とやらがいるようじゃぞ」


 視線の先にいるのは、煌めく銀髪に黄金よりも美しい金色の瞳を持った少女だ。

 ネオンと同じ12歳の彼女は無口で、感情表現に乏しい。

 だが、祖父の目にはいつもより興味を惹かれているように見えた。


「興味……ある……。神器……見たい……。皇国に……有益な人物だから……」


 ラヴィニアの呟きを聞くと、バルトラスは満面の笑みとなる。

 自分と意見が一致したこともそうだが、日頃から物事にあまり興味を示さない彼女が興味を持ってくれた。

 それが何よりも嬉しく、心の中でネオンに礼を述べた。

 バルトラスは部下に指示を出す。


「とりあえずは、実際に神器を確認する必要があるのぉ。キアラに手配を頼むんじゃ。ネオン少年にも皇国に来てほしいところじゃな」



 ◆◆◆


 超大国の元首たちは、「まずはどうにかして神器を入手せよ。そして、ネオンを友好的に自国に引き入れよ」と各スパイに命じた。

 命令を確認次第、ルイザ、ベネロープ、キアラは任務のため画策する。

 そして、この先もネオンは目立ちたくないのに何かするたび超大国に報告されてしまい、自分の知らないところでどんどん有名になっていくのであった。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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