第5話:転生王子、巨大な水路を作る
突撃猪を倒した翌日。
野菜たっぷりの朝食を終えたネオンは、ブリジットと一緒に外に出た。
ぐ~っと背伸びして、彼女に話す。
「水源を手に入れたいところだけど、この辺りに川はあるのかなぁ」
「そうですねぇ……ちょっとお待ちください」
ブリジットは家の屋根に登り周囲を見渡すが、どこまでも荒れ地が続いており川は確認できなかった。
シュタッと地面に降りてネオンに報告する。
「私の見える範囲にはないようです」
「そっかぁ、残念だね。じゃあ、井戸を作ってみよう……<神器生成>!」
ネオンは井戸を生成するが、水は噴き出してこなかった。
中を覗き込んでも枯れており、水があふれる気配もない。
「あれ……失敗しちゃったかな」
「おかしいですね。ネオン様に不可能はないはずなのですが」
鑑定リングで井戸の中を鑑定すると、理由がわかった。
「そうか、ここには地下水脈がないんだ」
「なるほど、それならば井戸を掘っても水は出てきませんね」
地下水脈がない状況に、ネオンは思案する。
水はブリジットが魔法で出してくれるものの、やはりちゃんとした水源は必要だ。
なければ……。
――探せばいいよね!
幸い、領地は飛び地と言えども結構広い。
探せばどこかで見つかるはずだ。
そして、水を探す道具と言えば"あれ"だと、ネオンは思い描いていた。
「<神器生成>!」
拾った石と土が白い粒子に変わり、L字型の棒が二本生成された。
<神視のダウジングロッド>
等級:神話級
能力:地下に埋まった水源を探し出す。的中率は100%。
「これなら水源が見つかるよ!」
「この細い棒でわかるのですか?」
「まぁ、見てて」
ダウジングロッドを握って色んな方向に向けると、東側に反応があった。
「あっちの方にあるみたいだよ。行ってみよう」
「やはり、ネオン様に不可能はございませんね! 魔法でも水源を探し出すのは難しいです」
ネオンはブリジットを連れて東に向かう。
探知魔法は鑑定と同じくらいの難易度を誇り、習得は難しい。
特に、地下水脈は分厚い土壌の下にあることが多いので、探知が阻まれどうしても不確実性が増してしまうのだ。
歩きながら、ネオンは初めて飛び地に訪れたときの感触を覚えた。
「家から離れると肌がピリピリするね。いずれは飛び地全体を開拓したいな」
「そうですね。私も全力でお手伝いさせていただきます。まぁ、愛する旦那のためならば、私はどのような環境に住んでも構いませんが。それでも、住む場所は快適に越したことはありません。いずれ、子どもも産まれるでしょうし……。ああ、私は毎日が楽しくなってきました」
「あ、ありがとう、嬉しいよ」
ブリジットの惚気をを聞きながら歩くこと、時間にして15分。
家からおよそ1kmも進んだところでダウジングロッドがひとりでに開いた。
「水脈はこの下か。今度こそ……<神器生成>!」
地面に手を当て魔力を込める。
頑丈な井戸が生成され、勢いよく水が噴き出した。
<神造りの井戸>
等級:神話級
能力:自動で水を浄化して汲み上げる。バリアで覆われているため汚染されず、子どもの落下も防止する。
溢れる水はどこまでも透き通り美しい。
念のため鑑定すると、ネオンもブリジットも質の高さに驚いた。
<捨てられ飛び地の水>
等級:神話級
説明:ネオンの生成した井戸により浄化された地下水。常に10度ほどに保たれており、冷たくてとてもおいしい。健康にも良い。
「し、神話級の水!? そんな水この世にあるの!?」
「いいえ、今まではありませんでした。ネオン様が作ったのです!」
超大国が保管する、天使の涙と言い伝えられる聖水ですら伝説級だ。
世界宝と評される水を、ネオンの神器は軽く超えてしまった。
ネオンは指輪から収納したコップを取り出して、ブリジットと乾杯する。
コクリと一口飲んでみると、たちまち身体に爽やかな風が吹き込んだ。
「おいしい~! 宮殿で飲む物より何段階も美味~!」
「こんなにおいしいお水が毎日飲めるなんて、私は幸せでございます!」
徒歩の疲労も相まって、地下水はとてつもなく美味だった。
ネオンはおいしさを堪能した後、再度地面に手をつける。
まだ完成ではないのだ。
「このままじゃ、いつも水を汲みに来るのが大変だから水路を作ろう……<神器生成>!」
「壮大な光景でございます!」
水路がドドドドドッと1km超も生成されていき、瞬く間に家の井戸と繋がった。
<神流れの水路>
等級:神話級
能力:水路は特殊なバリアで守られており、雨や諸々の汚染を防ぐ。大雨のときなどは魔力でできた堰板が水を堰き止める。自己修復機能を備えているので、修理も修繕も必要ない。
「これで水問題は解決だね。領内に水源地があってよかっ……もごっ!」
「ネオン様はなぜそんなに優秀なのですか! これでは、一ヶ月も経たぬうちに王都を超えてしまいます!」
「ま、まずは解放を……!」
ブリジットに強く抱き締められ、呼吸が困難となる。
これだけ大規模な水路の工事には、王国でも10年以上要した。
現代でも所々破損した場所の修復が常に行われており、ゴミを捨てられた場合は汚染の危険もある。
彼女の評価の通り、王都の開拓以上のスピードだ。
しばらく胸に埋もれながらそのような話を聞いた後、ネオンは解放された。
「……こほんっ、そろそろお家に帰ろうか。水路がうまく機能しているか確認したいしね」
「そうですね。まぁ、ネオン様のことなので大丈夫だとは思いますが、帰りましょう。私たちの愛の巣に」
二人は家への帰路に就く。
来た道を帰るだけだが、水源地から5分も歩かぬうちに、ネオンが小さな異変に気づいた。
「あれ……なんだろう?」
「どうかなさいましたか?」
「向こうの方で、小さな黒い点が何個も動いているよ。魔物の喧嘩かな」
ネオンが南の方角を指すと、ブリジットは目に意識を集中する。
(遠くにいるネオン様を愛でられるように鍛えた視力……今ここで発揮する!)
いくつもの黒い点の正体が明らかとなったとき、彼女は緊迫した口調で報告した。
「ネオン様、あれは魔物の喧嘩ではございません。……何人もの人の集団が魔物の群れに襲われています!」
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