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第42話:転生王子、称賛される

 ネオンたちの勝利が決まってから少しして、一行はデビルピアの調査を始めた。

 どこから来たのか、それが主な調べる対象だ。

 特に、帝王グリゴリー、大総統ガライアン、皇帝バルトラスの三人がしきりに意見を交わす。


「早急に、デビルピアが再度招来した理由を明らかにせねばならん。ネオン少年がいない場所に襲来したら、世界が崩壊するぞ」

「今回はネオン少年がいてくれたから撃退できたが、いつもそうとは限らない。ネオン少年がいないときに襲撃を受けたら、我が連邦も焦土になりかねないでしょう」

「勇者様の封印が解除されたのは間違いないじゃろうて。問題は、どこに封印されていたかじゃな」


 彼らが思案を巡らす中、ネオンは"あの可能性"を伝えることにした。


「三大国家元首のみなさま、横から失礼いたします。お伝えしたいことがあるのですが……」

「そんなに怯えないでくれたまえ。朕はネオン少年の味方なのだから」

「君の意見ならいつでも大歓迎だよ」

「ぜひ教えてほしいの」


 ネオンが緊張して切り出すと、三大国家元首は優しく受け入れてくれた。

 今一度気持ちを落ち着かせ、その場にいる全員が聞こえるように話す。


「デビルピアはおそらく……僕の母国、アルバティス王国から襲来したと思われます」


 言い終わった瞬間、一同は息を呑んだ。

 そのまま、ネオンはより詳しい話を伝える。

 デビルピアの"血の主を殺す"という発言から、父親と双子兄が自分を殺すために封印を解いたのだと確信した……。

 話を聞いた一同は、厳しい顔で口を噤む。

 誰も何も話そうとしない光景を見て、ネオンは心が痛む。


 ――みんなに申し訳ないな……。


 自分が原因で、こんなに怖く辛い思いをさせてしまったのだ。

 ネオンは責任を感じ、謝らずにはいられなかった。


「謝って済む問題ではありませんが……僕の父上と兄上たちが申し訳ありませんでした!」


 謝罪の意を述べたが、誰も何も話さない。

 やはり、罪が重すぎるか……。

 厳しい現実に表情を硬くしていると、両肩に柔らかい手が添われた。

 ブリジットだとわかる。


「ネオン様が頭を下げる必要はまったくありません。謝るべきは、王国でのらりくらりと暮らすあの三人です。ネオン様を殺そうとするなんて許せませんね。……やはり、あの場で殺しておくべきでしたか」


 顔を上げると、ブリジットが怒りに身を焦がし、美しい赤髪が迸る魔力のオーラで揺れていた。

 さらに、怒りに身を震わせているのは、彼女だけではなかった。

 領地の全員が強く憤っている。

 特に、三大国家元首は溢れる怒りを抑えきれない様子で、ブリジットと同じかそれ以上の魔力の波動が迸った。


「アルバティス王国には制裁を与えたつもりだが、まだ足りなかったようだな。どうしたものか……」

「まさか、こんなに愚かな王と王子がこの世にいるなんてね。愚か者は死んでも治らないとはこのことか」

「それなりに長く生きてきたが、これほど腹が立ったのは初めてじゃよ……。願わくは、この場で八つ裂きにしてやりたいのぉ」


 国家元首だけでなく、その娘たちもまた強く怒る。

 

「世界の宝たるネオン君の命を奪おうとするなんて……許せない。怒りで頭が沸騰しそうよ」

「わたしも同感だわ~。ネオンちゃんに危害を加える人間は~死んでいいの~

「私……アルバティス王と王子たち……殺す……」


 スパイ三人もジャンヌもオモチも領民も地底エルフも、みな同じ感情を抱く。

 この場にいる全ての者の怒りの矛先は、遠い王国の宮殿で豪遊生活にしがみつくアルバティス王と双子兄に向いていた。

 ネオンの代わりに三大超大国がかなり強く怒ってくれるという話にまとまり、各国家元首は王国宛ての文書を合同で作製する。

 デビルピアの亡骸の処理なども決まったところで、ブリジットが空気を変えるように提案する。

 

「……さて、みなさん。私からご提案があります。デビルピアを倒した偉大なるネオン様を、讃える宴を開きませんか? 歴史に刻まれる伝説の始まりを、みなで祝いましょう」

「えっ! そんなことしなくても僕は……」

 

 できれば止めてほしいネオンに対して、領地の全員は大賛成の意を示す。

 ブリジットの胸は喜びとやる気に満ち、勢いよく右手を突き上げた。


「それでは、さっそく準備を始めましょうー!」

「「おおおー!」」


 満場一致。

 というわけで、ネオンを讃える宴の準備が始まった。



 □□□



 太陽が水平線にかかり始め、空が茜色に染まりつつある時分。

 夕暮れ時の飛び地では、すでに宴の準備が完了していた。

 国家元首たちの歓迎会より、何段階も豪華なものだ。

 畑は荒らされたもののテーブルには領地の保存食と、三大超大国から運搬された手土産から作られた豪勢な料理が並ぶ。

 各々に盃が行き渡ったのを確認し、ブリジットが代表して掲げた。


「では、ネオン様の功績を讃え、 ……乾杯!」

「『乾杯!』」


 盃がぶつかり、軽やかな音が響く。

 もちろんネオンは未成年なので、おいしいジュースを飲む。

 歓談が始まると、さっそくみながネオンの周りに集まった。

 次々と感謝の言葉を口にしては、崇め奉る。

 真っ先に最初にお礼を言うのはスパイ三人だ。


「何だかお礼を言ってばかりだが、改めて言わせてくれ。ありがとう、ネオン。お前はやっぱり凄いヤツだ」

「デビルピアを倒したときのネオン君は、まさしく勇者だったね。君のおかげで今のボクがいるよ。ありがとう」

「ネオンさんには数え切れないほど命を救われてしまいました。今はお礼しか言えませんが、いつか必ずお返ししますから」


 続けて、ジャンヌ率いる地底エルフとオモチ他ウニネコ妖精たち。


『妾が断言しよう。……ネオン、お前は強い! お前につくと決めた妾の目は間違っていなかったというわけじゃ』

『ネオンがいれば何も怖くないウニ! ネオンの隣こそが、世界で一番安全な場所ウニね』


 三大超大国の護衛部隊も感謝しきりで、みなの中からはネオンを救世主として讃える"ネオン教"とやらを設立する話まで出てきた。

「いや、何とも……」などと答える傍らでは、ブリジットが種々の料理を取り分けては大量の皿を並べ始める。


「さあ、どうぞ、ネオン様。こちらの 三大超大国の見事な名産品ばかりですね」

「う、うん、ありがとう……」


 タワーのようにそそり立つ料理を食べると、その見事な味わいに目を見張った。


 ――おいしいっ!


 領地での食事ももちろんのこと美味だが、そこはさすがに三大超大国と言えよう。

 諸々の料理を堪能しつつも、ネオンには心配事が一つあった。


 ――デビルピアの一件で、三大超大国の皆さんには僕のスキルを知られてしまったわけだけど……大丈夫かな……?


 "捨てられ飛び地"に来た頃を思い出す。

 当時は、三大超大国に目をつけられないよう力を隠して発展させるつもりだった。

 だが、今回国家元首たちは【神器生成】の力を目の当たりにした。

 "捨てられ飛び地"の扱いはどうなるのだろう、と思案するネオンに、グリゴリーもガライアンもバルトラスも穏やかな笑顔で語る。


「ネオン少年の功績は歴史に刻まねばなるまい。帝国民も貴殿の活躍を聞きたいはずだ」

「君の行いは、責任を持って未来永劫語り継いでいくよ。連邦……いや、全人類が知るべきた」

「お主と出会えたことは、一生涯忘れん。ワシと出会ってくれてありがとうの。老い先短い身じゃが、みなにお主の素晴らしさを伝えたい」


 国家元首たちの笑顔を見て、そんな心配は杞憂だと安心した。


 ――これからも領地の開拓を頑張らなきゃ。もっともっと……立派な土地にしよう。


 ネオンが決心したところで、三人はさて……とそれぞれの娘を己の前に出す。


「褒美と言っては何だが、娘との結婚を考えてみないか? 娘も貴殿との婚姻を望んでいる」

「君には娘も深く感謝しているよ。これも何かの縁だ。一緒に暮らしてはどうかな?」

「孫娘はお主のことが好きみたいでの。年齢も同じだし、良き関係になれると思うんじゃ」


 ――……おや? 話の様子が……?


 娘たちは三方向からネオンを囲む。


「ネオン君。私たちを救ってくれてありがとう。本当に感謝しているの。あなたの活躍を見て、私の夫になる人はネオン君しかいないと確信したわ」

「デビルピアを倒したとき、正直言って痺れたの~。まぁ、前から痺れていたけどね~。だから、ネオンちゃん、わたしと一緒に生きましょう~?」

「私……ネオン好き……」


 ライバル国に取られまいと、我先にとネオンに飛びつく。


「えっ! あ、いや、ちょっ……!」


 世界が羨む王女皇女に揉みくちゃにされる中、ブリジットが間に入った。

 そのまま、左手をそっと上げる。


「みなさま、こちらをご覧くださいませ」

「「そ、それは……!」」


 彼女の薬指に、全員の視線が集まる。

 ブリジットは一呼吸の後、淡々としかしやけに良く通る声で告げた。


「ネオン様との結婚指輪でございます。先ほども申し上げましたが、ネオン様は私の夫でいらっしゃいますので、どうぞお忘れなく」

「「ぐぎぎ……!」」


 娘たちの歯軋りが響く。

 すでに先約がいたことに対し、各国家元首はさすがに気持ちを抑えたが微妙な悔し顔となって滲み出た。

 とはいえ、次の瞬間にはみな表情が和らぎ、盃を掲げる。

 

「「我らがネオン・アルバティスに…………栄光あれー!」」


 みなの笑顔と明るい声、それが何よりの褒美であった。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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