第37話:スパイのお茶会2 with ジャンヌ&ブリジット
人魔寄種の襲来を受けた領地の復興は進み、今では以前と元通りかそれ以上にまで発展していた。
神器による開拓は、通常より何段階も効率が良いと言えよう。
戻ってきた穏やかな日々が過ぎる中、領地の片隅ではお茶会の準備を進める人物たちがいた。
ルイザ、ベネロープ、キアラの三人だ。
なぜか気が合う彼女たちはずいぶんと仲良くなっており、もはや同志のような思いさえ抱く。
互いに同じ志を持つスパイなのだから、惹かれ合うのは当然だ。
当の本人たちは未だに難民同士だと思っており、目の前にいるのがライバル国のスパイだとは少しも気づいていなかったが……。
お茶会の準備は滞りなく終わり、三人は笑顔でカップを持つ。
「それじゃあ、領地の発展を願って乾杯といこうじゃないか」
「ルイザ君、お茶会に乾杯は変だよ」
「領地の発展を、天に祈りながらいただきましょう」
三人は一緒にこくりとお茶を飲む。
芳醇で豊かな香りとともに、程よい渋みを携えた甘みが広がる。
香りと味を楽しみながら、彼女たちは同じ願いを思う。
((できることなら、この先もこうやって過ごしていきたい……))
飛び地で過ごす毎日は、楽しくて幸せだ。
充実感に溢れている。
初めてこの土地を訪れたときの、厳しい環境からは考えられない。
これからも領地を開拓しながら楽しく暮らせたら、どれだけ幸せだろうか。
だが、己が拝命した任務を考えると、そういうわけにもいかない。
三人は紅茶を飲みながら、改めて気持ちを入れ直す。
――ネオンを引き入れれば本国に貢献でき、ずっと一緒にいられる。
任務もそうだが、何よりもネオンと一緒にいたい。
日増しに、その気持ちは強くなっていた。
領地を開拓したり、魔物を倒したり、食事を食べたり……その全てが、自分たちの心を豊かにする。
特に、ネオンと話したり近くにいる時間が、最も幸せな時間だった。
――絶対に、ネオンを本国に連れて帰る。これからも一緒にいるために。
各々が均絵図決心を新たにしたとき、雰囲気を壊すような太い声が聞こえた。
『なんかいい匂いがするのぉ~、なんじゃ~なんじゃ~? 菓子か~? 妾にも寄越せ~』
ジャンヌだ。
スパイ三人を包むどこか哀愁漂う空気などいざ知らず、彼女は菓子を求めにやってきた。
無遠慮に菓子を掴み、口に運んではお茶で流し込む。
その様子にテーブルからは顰蹙が上がる。
「おい、なに勝手に食べてるんだよ。お前の分まではないんだぞ」
「食べたかったら自分で作ってくれたまえ。お茶もお菓子も自然に出てくるわけじゃないんだ」
「そんなに取ったらわたくしたちの分がなくなってしまいますわ」
『少しくらい良いではないか~』
突然の訪問者に抵抗していると、静かに淡々と近寄る影があった。
「……どうしましたか、騒がしいようですが」
「『ゲッ!』」
現れたメイドを見て、三人+一人は悲鳴を上げた。
ブリジットは優雅なテーブルを見て、表情が厳しくなる。
「あなたたちは本当にお茶会が好きですね。隙あらば、三人で集まっているような気がします」
「気のせいだな」
「気のせいさ」
「気のせいです」
彼女の言葉に、スパイ三人は間髪入れず答える。
実際のところ、お茶会は五日に一回ほどのペース開かれていたわけだが、気のせいだと押し通した。
「そういえば、みなさんのお仲間はずいぶんと優秀でいらっしゃいますよね。これほど優秀な人材ばかりどうして…………怪しい」
『まぁまぁ、そんなのはちょっとした偶然じゃて』
ギクリ……とわずかに動いた三人に気づかず、ジャンヌは菓子を摘まみながら笑う。
ブリジットは小さく呆れた後、パンッと軽く手を叩いて呼びかけた。
「さあ、休憩の時間はおしまいですよ。片付けて仕事を再開しましょう。今日もやるべきことはたくさんあります」
「「は~い」」
大好きなネオンのため、スパイ三人とブリジットは今日も領地開拓に勤しむ。
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