第15話:ルイザの心情
――拳撃の戦乙女。
それが帝国における、ルイザの二つ名だ。
彼女の放つ拳撃はどんなに強固な鱗を持つドラゴンをも穿ち、世界最高硬度の鉱石で製造された盾も砕き、拳だけで国内にその名を轟かせた。
国内では敵知らずで、仮に超大国同士の争いが始まった際は最前線で戦う覚悟がある。
そのような彼女も、最初から強かったわけではない。
ルイザは元々、地方の村にあった孤児院出身だ。
今でこそ周囲から尊敬と畏怖を集めるが、孤児院時代は大人や同年代の幼子たちから蔑まれる日々だった。
ある日、村が強力な魔物の群れに襲われた。
死ぬ寸前のルイザと村を救ったのが帝国騎士団であり、人々のために戦う騎士の気高き信念と実力は輝いて見えた。
そういった経緯があり、彼女も帝国騎士団に入隊した。
屈強な男性に混じり鍛錬を積む日々。
身体能力は高かったが剣や槍などの得物がどうしても苦手で、素手での戦闘を究めることに決めた。
女性の団員は少ないこともあって、好奇の目で見られることもあった。
それでも厳しい訓練のおかげで肉体的にも精神的にも成長し、いつしかあの日の騎士たちのように誰かを守る立場に変わった。
帝国がもっと豊かになって、自分みたいな寂しい暮らしをする人がいなくなればいい……そうルイザは強く願っている。
飛び地での任務を受けたとき、ルイザは強く喜んだ。
帝国のために貢献できるし、何より他超大国との武力戦争が回避できるのなら、それが一番だと思っているからだ。
ネオンに取り入ることを決めたのも、最初は任務のため、愛する帝国のためだった。
(この少年を味方にすれば、帝国は国際競争で極めて優位に立てる。故に、あたしはネオンに好意的に接する。……信頼を勝ち取るために)
彼女が抱いたのは、一種の利己的な思いだ。
だが、自分の命を救ってくれたネオンを見て、領民のためにいつも一生懸命なネオンを見て、徐々にその気持ちに揺らぎが生じた。
帝国の任務はあるが、打算や計算などしない瞬間が来てほしいと願う自分もいる。
自分は帝国のスパイ。
その事実はこの先も変わらないし、途中で任務を辞めもしない。
(任務が成功するまでは、あたしは自分の正体を明かすことはできない。……ネオンにさえも)
だとしても、いずれ……スパイの皮を脱ぎ捨て、一人の人間として、一人の女性として、まっさらな自分で接したい。
隠し事など何もない身体で、幼くも立派な人間であるネオンと話したい。
(いつか許される日が訪れるのなら……ネオンに自分の正体を伝えたい。騙していたことを謝り、感謝の気持ちを伝えたい)
ルイザはその想いを、心の中にそっと仕舞う。
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