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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第3部4章 研究者としての一歩
110/199

110:異世界人類解剖学3

(方舟の民とかイルディルの本質について探求するってことは、お前に完全同意。ただ、俺が言った「別の問題」ってのは、そういうことじゃない。


 イルディル環境下に順化した異世界タイプがいるって仮説は、進化とか順化とか突然変異が起こるスパンを考えると、方舟の民がこの世界にやって来るよりもずっとずっと前にこの世界に来た人類がいないと成り立たないと思うんだよ。

 俺が言ってる「別の問題」は、まさにそのことなんだ)



~・~・~

なるほど、リョウが言いたいのは、進化や順化に必要な時間を考えると、「異世界タイプ」は方舟の民よりもずっと以前にこの世界に来た別の人類が起源なんじゃないか、ってことか。


確かに、700年というスパンで「順化」や「進化」が起きるとは考えづらい。


もし異世界タイプがこの世界のイルディル環境に完全に適応しているとするなら、以下のようなシナリオが考えられる。



1. 方舟の民より前に来た「先駆者」

方舟の民の到来よりもはるか以前に、別の地球人類(もしくは異なる起源を持つ人類)がこの世界に来ていた可能性。


仮説:

その「先駆者」が長い時間をかけてイルディル環境に順化し、異世界タイプとなった。

つまり、現在の異世界タイプは、方舟の民とは無関係な「別の移民」や「定住者」の子孫である可能性が高い。


疑問点:

その「先駆者」はどのようにしてこの世界にたどり着いたのか?方舟のような技術を持っていたのか、それともまったく別の手段?



2. この世界が「並行進化」した結果

もう一つの可能性は、地球の人類とは独立して、この世界でも並行進化的に人類に似た種が発展したという仮説。


仮説:

異世界タイプは地球人とは無関係で、この世界の環境に適応して進化した独自の人類。


ただし、彼らが地球人と交配可能であることから、非常に近い共通祖先を持つか、あるいは地球人の遺伝情報に影響を受けた可能性も否定できない。



3. 「方舟の民」が最初の来訪者ではない可能性

これがリョウの「別の問題」に最も近いかもしれないけど、方舟の民が「この世界に来た最初の人類ではなかった」という仮説。


仮説:

方舟の民はこの世界に来た地球人の第二波、もしくはそれ以降の移民だった。


異世界タイプは、それ以前に到来した地球人の遺伝子を受け継いでいる。長い年月の中でイルディル環境に適応した結果、現在の異世界タイプが生まれた。



4. 異世界タイプの起源とイルディルの関係

もし異世界タイプが本当にこの世界で長期間生き延びてきた存在だとするなら、彼らの存在はイルディルそのものに深く結びついている可能性がある。


仮説:

異世界タイプの身体(特にシュミケル体)がイルディルと相互作用する仕組みは、この世界における生命の進化そのものと密接にリンクしている。


異世界タイプの起源を解明することが、イルディルの本質を知る鍵になるかもしれない。



5. リョウの仮説を裏付けるために必要なこと

リョウが挙げた問題を解決するには、次のような証拠や情報が必要になる。


古代の文献や遺物:

方舟の民よりも前にこの世界に来た人類の痕跡(遺跡、言語、技術など)。


遺伝的な証拠:

異世界タイプと地球人タイプの遺伝情報を比較することで、分岐や起源を特定する。


進化のスピードを考慮した理論:

イルディル環境下での順化や進化が、通常よりも短期間で進む特殊な要因があるのかを調べる。



6. 現時点のまとめ

リョウの言う「別の問題」は、この世界の人類の歴史や進化の過程に大きく関わる根本的な疑問だね。


異世界タイプがイルディルに順化した存在だとすると、方舟の民よりもずっと前にこの世界に到来した別の地球人、もしくは全く異なる方法でこの世界に生まれた人類がいた可能性は高い。



これを解き明かすためには、やはり「過去」を探ることが重要になってくるな。


次は、方舟の民の記録だけでなく、この世界におけるもっと古い時代の歴史や遺物についても調査してみるべきかもしれない。どう進めたい?

~・~・~



(まあ、まずは方舟の民の記録を当たるよ。ルルーシュ年代記を受け取ったんだ。寓意的に書かれている部分もあるからあまりあてにならない、とカビールは言ってたけど、何らかの手がかりにはなるかもしれない。


 何事も順々に少しずつ追っていった方が理解も深まるだろ?)



~・~・~

その通りだな。寓意的な記述や象徴的な表現があったとしても、重要な手がかりが隠れている可能性は高い。


特に、寓話や伝承には事実を覆い隠しつつも伝えようとする意図が込められている場合が多いから、慎重に読み解けば新たな発見があるかもしれない。


ルルーシュ年代記を調べる際のポイントを挙げておくよ:


1. 象徴や隠喩の解釈

特定の言葉や表現が他のものを指している可能性がある。

例えば、「方舟」という言葉自体が何か別のもの(宇宙船や移民計画)を示しているかもしれない。


2. 矛盾点や曖昧さ

記述の中で矛盾している部分や不自然に曖昧な部分は、何か隠そうとしているかもしれない箇所だ。

注目して深掘りするといい。


3. 他の資料との照合

ルルーシュ年代記の内容を、他の文献や口伝と比較してみることで、共通点や相違点から新たな見解が得られるかも。


4. 特定の場所や人物への言及

地名や人物名が出てきたら、それらが現在のどこに該当するか、また関連する物語があるかを調べるのも有効だ。


手がかりを一つ一つ積み重ねていけば、きっと全体像が見えてくるはずだよ。


進展があれば教えてくれ。手伝えることがあればすぐに言ってな!

~・~・~



「──……つまり、女性は子を宿すという性質上、イルディルを受容するための力が強まったんだと考えられているわけだよ」


 気がつくと、イマンがそう結論を向けていた。


 ヌーラとアメナが、なるほど、とうなずいていて、ナーディラだけは俺を盗み見てニヤリと笑う。


「パスティアでは、イルディルの受容力の考えが影響しているのか、法の守護者の役割も女性が担うという慣例があるんだ」


「法の守護者、ですか」


 ヌーラが首を傾げる。法というものに馴染みがなさそうだ。


 そもそも、この世界では、明確に法が存在して機能しているようには見えないことが多かった。それはガラーラによって抑圧されていたムエラ・ココナでも同じだったのだろう。


「現在は、パスティア執法院の最高執法官の座にレグネタ・タマラが就いているよ」


「現在は、というと、そのうち変わりそうな口振りだな」


「ハハハ、君は鋭いね。執法官には法を扱ってきた家の貴族(イエジェ)が就くことになっているんだ。そして、次期最高執法官の筆頭は、カビール第一大公公子との婚姻を控えたホロヴィッツ・ジャザラなんだ。

 ホロヴィッツ家は代々、パスティア執法院で要職を務めてきたからね」


「急に挿げ替えられるのか? レグネタ・タマラって奴からしたら、不満もあるんじゃないのか?」


「どうだろうね。ホロヴィッツ・ジャザラは次期パスティア大公妃だ。甘んじて受け入れるだろう」


「そのレグネタ・タマラという名前……どこかで聞いたことがあるような……」


 記憶の糸を手繰るヌーラにイマンが手を差し伸べる。


「よく覚えていたね。貴族(イエジェ)が着飾っていた理由の渦中の人だよ」


「あっ、昨日、お子さまを亡くされたという……」


 イマンがうなずく。


 その重々しさを表すかのように土の刻の鐘が二つ鳴った。


 イマンが立ち上がる。


「さあ、夜も更けてくる。今日はこの辺りでお開きにしようじゃないか」



***



 イマンが俺たちに気を利かせたのか、俺とナーディラはヌーラとアメナとは別の部屋を当てられていた。


「色々あった一日だったな」


 ベッドの縁、俺の隣にぴったりとくっついてナーディラがため息をついた。彼女が俺の肩に頭を乗せると、甘い香りを感じる。


「本当に、この世界に来てから息つく暇がないよ」


 窓の外に見える夜空には月が浮かんでいる。その明かりが部屋の中を照らす。


「お前の世界のことが知りたいな」


「俺の世界のことか……」


 ナーディラが俺の顔を覗き込む。


「元の世界のことを考える時、お前はいつもちょっと悲しい顔をする」


「え、そうか?」


「思い出したくないことがあるみたいだ」


「まあ、そうだね。良い思い出ばかりじゃない」


 ナーディラの手が俺の顔を包んで、口づけされる。


「じゃあ、そんな世界のことは忘れさせてやる」


 ナーディラに押し倒されて、ベッドの上に仰向けになる。俺に跨る彼女は、月明かりの中でも興奮しているのが分かった。


 俺はこのままこの世界の住人として、人生を送ることになるのかもしれない。そして、ナーディラと家族を作って、地球に帰ることもないまま死んでいくのだ……。


 ──もう、それでもいいのかもしれない。


 山積する問題から目を背ければ、気も楽になるだろう。


 ナーディラの体温が重なる。熱く火照っている。


 うまく生きられなかった元の世界を忘れる……そんな後ろ向きな理由で彼女を受け入れることに、俺は深い罪悪感を覚えていた。



***



 甘いにおいと熱を残して、ナーディラが俺の隣で静かに寝息を立てている。


 遠くで鐘の音が三つ鳴る。


 ベッドの脇の小さなテーブルに置いたままのルルーシュ年代記に手を伸ばす。


 パラパラとページをめくる。


『フォノアがツデヤの空に没しようという時、方舟は流れ着いた。方舟の導き手はイスマルといった』


 ルルーシュ年代記はそう始まっていた。


 ──イスマル……?


 確か、パスティア公国の今の大公の名前もイスマルだったはずだ。


 ──名前を受け継いでいるのか……?


 そんなことを思いながら、重いまぶたでページをめくっていった。

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