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方針。

 さて、どうしたものか。


 ルッコという甘酸っぱい木の実の入った焼き菓子を頬張りながら、私は頭をかかえていた。


 結局、「勇者の保護」という神様達からの依頼は受ける事にしたのだが、具体的な方法が思いつかない。


 以前、ジルコニア王国の偵察に行った時に〈気配察知〉のスキルを持つせりが無反応だったから、あの時点では勇者は召喚されていなかったのだろう。

 そして、女神様からの情報によれば、すでに勇者はジルコニア王国を出たらしい。


 つまり、ジルコニア王国に行って勇者を掻っ攫ってくるという一番シンプルな方法は使えない。


 せりのスキルでは危険は察知できるが、特に知り合いでもない相手を探すには向いていない。


 向こうから来るのを待つしかないが、攻撃されれば、当然うちの猫達は反撃する。

 しかも、容赦なく。


 んー、トラウマNGだしなぁ……。


 おまけに、私達は決まった拠点を持っていない。 

 一応、クリスタル神聖王国が仮の拠点という事にはなってはいるが、それを知っているのは、神様達とごく一部の人達だけだ。


 聖域であるはずの泉が休憩所になっているのを知られたら、いろいろとマズイしな。


 普通なら、自分達の居場所をそれとなく噂として流し、そこで勇者を待ち構えるべきなのだろうが。


 はぁ、とため息をつくと、猫達がそれぞれの方法で仕留めたワイバーンを持って帰ってきた。


「お帰り」


 今回の依頼は水の都コーラルの冒険者ギルドからのもので、ワイバーンの群れの駆除だった。


 ワイバーンはドラゴンほどの脅威ではないが、群れとなると話が変わってくる。

 ワイバーンの群れは、囮役、追い込み役、仕留め役など、連携を取って襲ってくるのだ。


 もっとも、うちの猫達にとっては「ドラゴンより弱っちいヤツ」程度の認識なのだが。


 魔法を使うわけでもないので、物理特化型の私でも、火の神様とドワーフの鍛冶職人が造ってくれた特製の大鎌を使えばワイバーンは倒せる。

 しかし、空を飛ぶ相手に対して猫達のように狩れるわけがない。


 仕方がないので、邪魔にならないように離れた所でおやつを食べながら、猫達がワイバーンを狩り終わるのを待っていたのだ。


「じゃ、帰ろうか。キング、〈空間転移〉」


「にゃう」


 キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共に私達は水の都コーラルへと帰還した。


 そして、一番の問題点はコレなのである。


 キングの〈空間転移〉で、私達は世界中のどこへでも一瞬で移動出来てしまう。


 勇者が噂を聞き、どれほど急いで駆け付けたとしても、私達はその頃全く別の場所にいる可能性が高い。

 というより、確実にそうなる。


 いや、本当にどうしたものか。


 ……魔王城でも建てておくべきだったかなぁ。















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