もう少しだけ。
化け物達も何かに気付いたのか、あきらかに私達の方へ向かってくる数が増えた。
大鎌を振るい、化け物達を斬り伏せる。
レオやマリアとコハクも奮闘しているが、猫達と比べれば戦力はやはり格段に劣る。
よつばとせりはベルに魔力を分け与えているので、歌が終わるまでは参戦できない。
「りゅうたろう、おこん、キング! こっちに来て!!」
私が叫ぶと、りゅうたろう達が駆け寄ってきた。
「福助、ごめん! 少しだけ一人で頑張って!!」
「にゃ!!」
福助の周りをきらきらと風の精霊達が飛び回る。
常に全力の福助なら、守備より攻撃に専念させた方がいい。
単騎の方が思う存分やれるだろうしな。
さすがに取り逃がす化け物達の数は増えるが、まぁ、サナ達がどうにかしてくれるだろう。
「つかさァ?」
「…………」
何故か、何か言いたげなサナとナルシの顔が浮かんだが。
……うん、大丈夫、大丈夫。
それよりも。
「歌が終わるまで、彼女とせり達を守って!」
私の言葉を聞き、りゅうたろうは化け物達とベル達の間に入って立ち塞がり、キングはそれをサポートするような配置についた。
おこんは相変わらず、その小さな体で縦横無尽に駆け回っている。
「終わらせるよ!」
そう叫びながら、私は化け物達の群れの中に突っ込んだ。
大鎌を振るいながら、別の個体を蹴り上げる。
上空にいたマリアを乗せたコハクがとどめを刺す。
おこんが引っ掻いて麻痺させた化け物を、レオが切っていく。
キングが〈影魔法〉で化け物達を貫き、大きくなったりゅうたろうは前足ではたき落としている。
ベルの歌は緩やかな旋律へと変わり、歌声は次第に小さくなっていった。
魔法陣から漏れ出ていた気持ちの悪い気配が薄れていく。
絶え間なく湧き出てきていた化け物達の数が、目に見えて減ってきている。
もう少しだ。
もう少しで終わる。
「みんな、頑張れ!!」
猫達はともかく、私を含めて人間は疲労してきている。
サナ、ナルシ。
エルフや冒険者達。
この国の兵士達。
もう少しだ。
もう少しだけ頑張って、この惨劇を終わらせよう。




