私なりの覚悟。
「うあぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ん? この声は。
ちらりと様子を見れば、チャビがくぅと魔王との戦闘に参戦していた。
レオの〈回復〉が終わったのか。
そして、レオとコハクに乗ったマリアも対魔王戦に突入するようだ。
……いや、それ、過剰戦力だろ。
と一瞬思ったが、くぅ達はなにやら苦戦しているようだった。
どういう事だ?
大鎌をひたすら振り回しながら、魔王の様子をうかがう。
あれ、あいつ……。
くぅ達の与えた傷はどれも致命傷にはならず、そして、その傷は一瞬で治ってしまっている。
あー、アレか。
自己修復系。
魔王は、くぅとはまた違った面倒くさいタイプのラスボスだったか。
いや、くぅがその気になれば自己修復する間もなく消し炭に出来るはずだ。
無傷で捕まえる必要もないし。
つまり、くぅが全力で戦えていない。
……ああ、そうか。そうだな。
魔王が人間の姿をしているからか。
くぅやチャビは、人間に直接手を下した事はない。
盗賊や今まで敵対してきた奴らに対しても、命までは取った事はないはずだ。
おそらく、レオや、これが初めての戦いであろうマリアもそうだろう。
……この子達に人は殺せない。
ならば。
私は大鎌の柄を握り締めた。
「こっちを頼むね!!」
りゅうたろう達に声をかけると、私はくぅ達の元へと走った。
「…………」
くぅ達がそうであるように、私も人に手を下した事はない。
魔物相手になら躊躇はしないが、対人間となると話は違ってくる。
幸い、私には猫達がいた。
強い猫達で、危険な目にあったとしても相手の命までは奪う必要がなかった。
……息さえしていれば、チャビの〈回復〉でどうとでもなったしな。
だが、いや、だからこそ。
私は覚悟を決めなければ。
私が猫達を守らないといけない。
例え、どんな事をしようとも。
私は大鎌を振りかざし、魔王へと向かって跳び上がった。
くぅ達に気を取られていた魔王は完全に油断していた。
猫達と比べればちっぽけな存在である私の事など、頭の片隅にもなかったのだろう。
「くらえっ!!」
魔王目がけて大鎌を振り下ろす。
……しまった! 浅い!!
傷つける事は出来たが、一太刀でトドメをさすまでは出来なかった。
距離を取り、もう一度大鎌を構え直す。
覚悟は出来ていたつもりだったが、土壇場で無意識の内に躊躇してしまったようだ。
だが、今度こそ。
「……ん?」
魔王の様子がおかしい。
一瞬で治るはずの傷が赤く焼けただれて、もがき苦しんでいる。
……そういえば、私の大鎌って火の神様がくれた火の宝剣の内の一振りだったな。
よその世界の魔王にも効くのか。
そりゃ、そうか。あんなんでも神様だもんなぁ……。




