世界の危機?
だが、まぁ、たかが魔王程度はどうとでもなる。
「せり、あいつの動きを見張って!」
「にゃあ!」
「よつば、せりの合図に合わせてあいつの魔法を〈解除〉!」
「にあん!」
よつばがもふもふのしっぽをぴんと立てた。
あとは。
「……」
しずしずと、真っ黒な猫が私達の前に出た。
目が爛々と輝いている。
長いしっぽがゆらゆらと揺れている。
……張り切ってますね、魔王様。
最近は、ドラゴンごときでは満足出来なくなっていたみたいだしな。
「くぅ、任せた!」
「……にゃお」
物理無効に魔法無効のラスボス仕様に、あっちの魔王はどう対抗するんだろうか。
じっくりと見たい気はするが。
「厄介なのは、こっちなんだよね……」
床に描かれた魔法陣からは、いまだ次々と化け物達が溢れ出してきている。
魔法陣の上の空間がぐにゃりと歪み、その度に新たな化け物が姿を現すのだ。
おこんやりゅうたろうが狩ってくれてはいるが、これではきりがない。
元から絶たないといけないのだろうが、ジルコニア王国の古い文字で描かれているらしく、私には解読できない。
つまり、よつばにも〈解除〉できないという事だ。
……悩んでいても仕方がない。
私は〈無限収納〉から大鎌を取り出した。
「キング、取り逃がした奴を頼むね!」
「にゃう!」
キングの影が長く伸びる。
〈影魔法〉を使い、運良くおこん達から逃れた化け物達を捕らえていく。
「おこん、りゅうたろう! いったん下がって!」
りゅうたろう達がひらりと身を翻す。
「福助、吹き飛ばせ!!」
「にゃ!!」
福助の回りをきらきらとしたものが踊るように跳ね回っている。
福助と契約している風の精霊達だ。
凄まじい風が吹き、化け物達を吹き飛ばす。
くぅやチャビ程ではないが、福助だって魔王と呼んでも差し支えない。
そして、たかが人間の私はいつも通り物理で一体ずつぶん殴るしかないわけだが。
大鎌を振りかざし、化け物達の群れに向かう。
りゅうたろうやおこん達も、化け物の群れ目がけて突っ込んでいった。
これだけ数がいれば、大鎌を振り回しているだけで化け物達を倒すのは容易だ。
とりあえず、城の外に出さない事だけを考えよう。
サナやナルシ達やエルフ達も加勢に来てくれているし、ジルコニア王国の外には各国や都市から派遣された騎士団や冒険者達がいる。
ジルコニア王国の人々が逃げるだけの時間が稼げればいい。
あとは魔王姉弟に任せよう、うん。
あれ、でも、魔王対決とかしてもこの世界って無事にすむのか……?




