惨状。
化け物達を倒しながら城へと走る。
中心部へ向かうにつれ、ひどい状況になっていく。
気を抜くと吐きそうだ。
城だ!
「りゅうたろう! コハク!」
上空からりゅうたろう達が降りてきた。
「突っ切るよ!」
りゅうたろうとコハクが化け物達を薙ぎ払いながら、私達の前を飛んで行く。
「チャビ! くぅ!」
チャビとくぅは特大の魔法を化け物に向かって一発かましてから、私達と合流した。
「福助、〈風魔法〉!」
「にゃ!」
いつも通り全力の福助が放った〈風魔法〉で城の壁が大きく崩れた。
りゅうたろうとコハクも城の中に入れるくらいのサイズに変わった。
化け物達が湧いて出てきたのは城の中心部か?
なら、玉座のある大広間か。
城の造りは大体どこも似たようなものだ。
……いや、まぁ、魔王城はちょっと違うけど。
レオ達はマリアを捜しているなら、おそらく中心部にはいないだろう。
……マリアが無事だといいが。
城の中は凄惨としか言いようのない状況だった。
倒れている兵士の多くは、あの時王族を守るために城へと向かった連中だろう。
そして、使用人や、元は豪奢だったであろう衣装をまとったおそらく貴族達。
化け物達は、平等に彼らの命を奪った。
あれは……。
倒れている中に、見知った顔を見つけた。
レオの取り巻き兼監視役だった女剣士だ。
扉を塞ぐように座り込んで息絶えていた。
……もしかして。
「ちょっとごめんね」
彼女を傍らに寄せ、扉を蹴破った。
中にいたのは服装からして修道女見習いとおぼしき少女と、10歳ほどの女の子。
修道女見習いの少女は女の子を抱きかかえたまま気を失っていた。
女の子は私達に気づくと、少女の腕の中からじたばたともがきながら抜け出した。
そして、少女の前へと立ち、守るように両手を広げた。
「だめっ!!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにし、その小さな身体は震えている。
それでも、その目は真っ直ぐに私達を見ていた。
ああ、この子がマリアだ。
レオと同じように、誰かを守ろうとしている。
『聖女』というより『勇者』だ、この子も。
にっこりとマリアに向かって笑ってみせる。
「マリア、だよね? レオに頼まれて助けに来たよ」
「お兄ちゃんに……? お兄ちゃん、生きてるの!?」
「うん、レオもお城に来ているはずだよ」
私がそう言うと、マリアはほっとしたように少しだけ笑った。
……城の中にいるなら、呼べばせり達には聞こえるか?
「少し待っててね」とマリアに言い、よつばとおこんを残して部屋を出た。
ちらり、と女剣士を見やる。
彼女は、マリアを守ろうとしていたのか。
中に入れまいと、死に際に自らの身体で扉を塞いで。
「……」
コハクを「ちょーだい」とかぬかしたアホだったが、彼女なりに思う事はあったのだろう。
もしかして、レオの事も上からの命令とは別に好ましく思っていたのかもしれない。
……いや、やめよう。
他人の気持ちを推測したところで意味はない。
「せり! キング! マリアがいた! 合流して!!」
私は声を張り上げて叫んだ。




