覚悟。
魔物達を倒し、街の人々を守ろうとする私達の姿を見て兵士達はあきらかに戸惑っていた。
「魔王、ではないのか……?」
「隊長! 我々も民間人を守るべきでは!?」
「そ、そうだな……」
だが、そこへ伝令の兵士が現れ、全兵力を城へと集結させるようにとの命が下された事を告げた。
「街の人々を見捨てろというのか……?」
「王族の方々をお守りする名誉を与えられたのだ! 直ちに馳せ参じるように!」
それだけ言うと、伝令の兵士はほかの隊にも告げに行くのか走り去って行った。
……本当に、この国はろくでもないな。
王族だけ生き残ったところで、どうするつもりだ。
戦争に負けたとかならともかく、化け物に滅ぼされた国の王族に何の存在価値がある?
しかも、その化け物達は自分達で呼び出したんでしょうが!
さっきまで私と戦っていた兵士達は、愕然とした様子で立ち尽くしていた。
おこんが〈引っ掻き〉で麻痺させた化け物を、大鎌で切り裂く。
その隙に、よつばが建物のかげで震えていた子供を引きずり出す。
「門の外へ逃げて! よつば、門の近くまで一緒に行ってあげて!」
「にあん!」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を歪ませながら、子供はよつばに連れられて走り出した。
「あんた達も早く行ったら?」
振り向きもせず、私は兵士達に言った。
というより、化け物の相手をするのに精一杯で兵士達をかまっている暇などなかった。
本当なら民間人の救助に当たってほしいところだが、兵士である以上命令には逆らえないだろう。
「そこに突っ立っていられたら、邪魔なんだけど!」
化け物をチャビが雷を落としている方へと蹴り飛ばす。
チャビの周りにいた化け物共々、黒焦げになって倒れた。
「隊長!!」
「……そうだな」
兵士達の隊長が声を張り上げた。
「我が隊は、これより民間人の救助に当たる! 民間人を門の外へ避難させろ!!」
「隊長!」
「いいのですか……!?」
「責任は私が取る!」
「はいっ!!」
覚悟を決めた兵士達の行動は素早かった。
統率の取れた行動で、民間人を保護し外門の外まで送り届けるという事を繰り返している。
……命令違反だけど、いいのかな。
まぁ、さすが『魔王』に正面切って戦いを挑んできただけあって根性が座っているというか。
ほかの隊の兵士達は、城へ向かう者と民間人を守ろうとする者とに分かれたようだった。
どちらかといえば、後者が多いだろうか。
あー、うん。前言撤回だ。
ろくでもないのは上の連中だけで、国民はこの世界の国や都市の人々とそう変わらない。
ならば。
「みんな! 化け物を狩るよ!!」
私達なりに、この国の人々を守ろうか。




