表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/40

内情調査。

 まぁ、うちの猫達には関係ないけどな。


「せり、〈隠密〉」


 声をかけると、丸っこい顔をした黒猫が私を見上げながら「にゃあ」と鳴いた。


 せりのスキルは〈隠密〉〈気配察知〉と、身を守る事に特化している。

 使える魔法は〈召喚魔法〉で、クラーケンを呼び出す事が可能だ。

 せりのスキルが一番戦闘向きではないのだが、猫達の身体能力や狩りの本能がちょっとおかしな事になっているらしく、大型の魔物くらいは単騎で仕留められる。

 ……小型のドラゴンを狩ってきた事もあるくらいだしな。


「キング、壁の内側に〈空間転移〉」


 白黒の大きな体の猫に指示を出す。

 口元に名前の由来となったヒゲのような模様がある。


 キングのスキルは〈空間転移〉。

 どこへでも移動できるそれ自体はこの世界にも似たような魔法があり、冒険者ギルドや商業ギルドなどでも使っているようだ。

 だが、発動には時間がかかる上、キングのように世界中のどこにでも行けるわけではないらしい。

ちなみに、この世界に来たばかりの時にキングはこのスキルを使って逃げ回り、世界規模の鬼ごっこになったのは苦い記憶の一つだ。

 〈影魔法〉で自らや魔物の影を操れるようにもなり、攻撃手段も手に入れた。


「にゃう」


 キングがぱちりと目を閉じると、エレベーターに乗った時のような微妙な浮遊感と共に私達は城壁の内側へと移動した。


 中では、これといった騒ぎは起きていないようだった。

 人通りが極端に少なく、街の中を歩いているのは鎧兜を身に着けた兵士がほとんどだ。


 んー、戒厳令でもしかれたかな。

 まぁ、確かに非常事態だし、無理もないか。


 建築物や水路を見る限り、そこそこの文明程度ではあるらしい。


 だが。


 街中、特に下町と思われる辺りでは文字が書かれた看板はほぼ皆無だった。

 おそらく識字率が低い。

 兵士達の纏う鎧兜や携帯している武器からして、製鉄技術もあまり高くない。

 結論はギルドに任せるが、多分この国は今いる世界よりだいぶ文明が遅れていると思われる。


 私は小さくため息をついた。


 この世界がちょっと特殊すぎるんだけどな。


 様々な世界から人や物が迷い込み、それが融合したり、独自の発展を遂げていたりするのだ。


 茶白のふわふわの猫が、ふんふんと鼻を鳴らす。


「よつば、ダメだからね」


「にあん?」


 私の言葉に、くりんと首を傾げてみせる。


 あざと可愛く誤魔化そうとしてもダメです!!


 よつばはほかの猫達と違い、ある程度大きくなってから保護した猫だ。

 外の世界で飢えた経験からか、異常に食い意地がはっている。


 そんなよつばのスキルは、〈解除〉〈魅了〉、そして〈まな板の上〉。

 どこにでも入り込み、時には人や魔物の心を操り、狙った獲物は逃さない。

 どこまでも、食べるためのスキルだった。


 よつばの反応からして、食文化の方は期待できそうだ。


 ただなぁ……。


 国の中心に近づくにつれ、街の様子が変わっていく。

 王都と思われる中心部は、外壁よりよほど高く頑丈な石壁で囲まれていた。

 警備している兵の数も尋常ではない。


「…………」


 この国との交渉は難航するかもしれない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ