破滅への道。
《世界の傷》と呼ばれる次元の裂け目から現れたのは、有象無象の化け物達だった。
この世界の魔物と同じような姿をしているものもいれば、全く見た事のない姿をしているものもいた。
途切れる事なく、まるで水が溢れたかのように化け物達が湧いて出てくる。
「あれは……!!」
大型の鳥の群れ。
羽毛は青く、尾羽根の先だけが白い。
フラーだ!!
《災いを呼ぶ鳥》と呼ばれ、どこからともなく現れては群れを作って街や国を襲う凶鳥の群れ。
作物も動物も人も、なにもかも食べ尽くす。
この国の連中は、やはり自ら化け物を招き入れたのか!
「みんな、ターゲットを化け物達に変更! 全滅させる!」
私も、再び大鎌を構え直した。
「よつば、おこんが麻痺させた連中を〈解除〉して!」
魔物の集団との戦闘なら、いくらでも経験がある。
だが、それは街の中に入れまいとする防衛戦だった。
国の中心から化け物が湧いて出てくるなど、今まで見た事がない。
おまけに。
「あああ、終わりだ……」
「魔王め! 我らを蹂躙しようというのか!」
「逃げろぉぉぉぉ!!」
ここにいるのは味方どころか、私達を魔王として倒そうとしている連中だ。
せめて、こいつらが民間人を守ってくれればいいが。
上空ではくぅが炎をまとわせた剣で化け物達を串刺しにし、コハクとりゅうたろうが化け物達の群れの中に突っ込んでいっている。
福助は〈風魔法〉で切り裂き、チャビが広範囲に雷を落とす。
兵士達を〈解除〉し終えたよつばは、おこんとコンビを組んで逃げ遅れた人達を助けている。
私も駆け回って、大鎌を振るう。
レオ達は無事か?
城の方をちらりと見た。
いや、キングとせりがついているし、レオ自身も〈勇者〉だ。
問題なのは、レオの召喚に巻き込まれた妹のマリアだ。
〈聖女〉だと言われてはいるが、女神様達の反応からして、おそらくそんな力はないのだろう。
レオ達と合流してくれていればいいが。
兵士達の怒声に紛れて、悲鳴が聞こえてくる。
……民間人が襲われている!
「魔王め!!」
兵士達の一団が、私めがけて剣をかまえて襲いかかってきた。
邪魔だ!!
「チャビ、援護して!」
「にゃお!」
雷をまとったチャビが、兵士達の中に突っ込んだ。
おい、待て。
チャビ、あんたもか!
チャビもくぅと同じように、雷をまとって空を飛ぶんだな!?
これだから、魔王姉弟は……!
チャビの雷に触れたせいか、兵士達は一瞬痺れたように剣を取り落とした。
その隙に、大鎌を構えたまま悲鳴の聞こえた方へと走った。
「きゃあぁぁぁ!!」
やはり、街の人々が襲われていた。
大鎌を振りかざし、襲っていた化け物を切り裂いた。
「あ、あ、あ……」
へたり込んだまま動けないようだが、傷はそれ程でもない。
「門の外へ逃げて!」
化け物達は国の中心から湧いて出てきている。
それに、ジルコニア王国を監視する為に、国や都市などから派遣された兵士や冒険者達が外門の外にいる。
逃げてきた民間人なら、彼らが保護してくれるはずだ。
それにしても。
私は王城の上に現れた《世界の傷》を睨みつけた。
とどまる事なく、次から次へと化け物達が現れる。
数が多すぎる。
うちの猫達が無敵だろうと、これではキリがない。
国ごとふきとばしていいなら、簡単なんだがな……。




