魔王襲来。
微妙な浮遊感と共に、私達はジルコニア王国の中に入った。
キングはそのまま、せりを抱いたレオと共に王城へと向かう。
さてさて。
ひと暴れしますか。
「りゅうたろう、コハク。上空から」
「……!」
「ピィー!!」
本来のサイズに戻ったコハクが、りゅうたろうを背中に乗せて空へと舞い上がる。
ドラゴンが襲ってきただけでもインパクト大だろうが、生憎りゅうたろう達は私と同じ物理特化型だ。
「くぅも空からお願い」
「にゃお」
実は、うちの魔王様。
炎を翼に変えて空を飛ぶ事が出来るのだ。
初めて見た時は、もはや何でも有りだな、と半ば呆れていたのだが。
「チャビも福助も魔法で攻撃。ただし、福助が狙うのは街を囲んでいる壁だけね」
「にゃお」
「にゃ!」
チャビは欠伸しながらでも、ターゲットである魔物に雷を当てられるくらいコントロールがいいので心配はいらない。
福助は常に全力なので、その辺りは難しいが素直な性格なので私の指示に従ってくれる。
「おこんとよつばは、好きに暴れなさい」
「にゃん!」
「にあん?」
荒事の好きなおこんは張り切っているが、引っ掻いて回るだけなら問題ない。
麻痺して動けなくなるだけだしな。
よつばは食べられない物には徹底して興味がないので、今ひとつやる気が感じれない。
……まぁ、いいけど。
「なんだ、あれは!?」
「ドラゴンが2頭!?」
「どこから……、いや、上に報告を!!」
りゅうたろう達を見た兵士や街の住民達が騒ぎ始めている。
うむ、いい感じに混乱しているな。
私は無限収納から、大鎌を取り出した。
火の神様からもらった真紅の刃を持つ大鎌だ。
「チャビ、福助。攻撃!」
「にゃお!」
私の掛け声と同時にチャビが雷を落とす。
器用に人を避けて落とすが、地面は真っ黒に焼け焦げている。
「にゃ!!」
福助の回りをきらきらと踊るように飛び回っているのは、福助と契約している風の精霊達だ。
福助の〈風魔法〉がぶつかった壁が、がらがらと音を立てて崩れていく。
……思っていたよりヤワだな。
このままだと巻き込まれる人間が出るかもしれない。
「よつば、変更。巻き込まれそうな人間を回収」
「にあん……」
「助けた人数に応じて、おやつを配布します」
「にあん!!」
私の言葉に、俄然よつばがやる気になった。
上空では弓矢をかまえる兵士達を煽るように、コハクが飛び回っている。
くぅは器用に人々を避けながら、岩を落としてほどほどに街を破壊している。
まぁ、くぅからしたら岩というより石みたいなサイズだが。
私は、大鎌の柄で地面をダンッと突いた。
そこを中心に地面に大きなヒビが入った。
……だ、大丈夫だよな?
特製の大鎌な上に私が馬鹿力だから、うっかりやり過ぎると、地面がぱっくりと割れかねない。
とりあえず大丈夫そうだったので、私は声を張り上げた。
「ジルコニアよ! 来てやったぞ!!」
「な、なんだ、お前は!?」
「ドラゴンを連れて来たのはお前か!!」
「何故、こんな事を!?」
ざわつくジルコニアの人々に、にやりと凶悪に見えるように笑ってみせた。
「魔王を倒すのだろう? こちらから出向いてやったのだ。文句があるか?」
くっくっく……。
いや、うん。
魔王ごっこ、キツイな、これ。




