潜入作戦。
キングの〈空間転移〉でジルコニア王国の近くまできた。
さて、どうするか。
中に入るのはキングがいるから問題ない。
問題はマリアがどこにいるかだ。
せりの〈気配察知〉は、敵意を持っていない者や知り合いではない相手には効果が薄い。
レオの妹なら多少は分かるだろうが、おおよその目安はつけておきたい。
だが。
「場所はよく分かりません」
レオが困ったような顔をした。
「マリアを探してうろうろしていて、偶然見つけただけだったし。それに」
レオは城の中以外はろくに見せてもらえなかったらしい。
魔王、つまり私達討伐のために旅立つ時にも「勇者様の身に何かあれば大変ですから」と言われ、夜中にひっそりと馬車で国外に出たという事だった。
……つまり、徹底的に自分達以外からの情報を遮断していたわけか。
一緒にいた女達は、やっぱり見張りも兼ねていたわけだ。
何が「勇者様」だ。
ああ、ムカつく。
すり、と肩に乗ったりゅうたろうが私の顔に頭をこすりつけてきた。
はいはい、分かってますよ、落ち着きます。……今はな。
前にギルドの依頼で来た時は街の様子だけで、お城周辺は確認しなかったからなぁ。
せりの〈隠密〉と〈気配察知〉で地道に探すしかないか。
ただ。
せりに触れていないと〈隠密〉の効果はない。
まさかレオと手を繋いで歩き回るにはいかないし。
……いっそのこと、また肩に担いで歩くかな。
そう言うと、レオがぶんぶんと激しく首を横に振った。
そうか、嫌か。
うん、だろうな。
ならば二手に分かれるのがいいか。
せりとキングにレオと一緒に行ってもらい、マリアを探す。
私達は陽動として、少しばかり暴れまわる。
ドラゴンであるコハクや大きくなったりゅうたろうは目立つし、どうやら黒猫を連れているのが魔王だとジルコニアは認識しているようだからくぅや福助に暴れてもらおう。
街の人達に被害が及ばないように、狙うのはお城やその周辺だけ。
ああ、いっそのこと魔王として名乗りをあげてもいいかもしれないな。
あんた達が敵に回そうとしていたのがどんな相手なのか、身を持って知るが良い。くっくっく。
……うん、やめよう。
魔王ごっこをしている場合ではない。
レオに私の考えた作戦を話すと、素直に頷いた。
レオがせりを抱きかかえる。
小柄なレオだと、せりもいつもより大きく見える。
キングはレオの足元に座っているので姿は消えていないはずだが、猫一匹がうろうろしていたところで大して目立ちはしない。
それじゃ、行きますか。
「キング、〈空間転移〉!」




