報告。
レオからの依頼を受けるとして。
まぁ、女神様に一回報告した方がいいかな。
「今から、女神様の所に行くよ」
私がそう言うと、レオは不思議そうな顔をした。
「女神様?」
「ああ、うん。ちょっとポンコツだけど、基本的には真面目だしいい人、いや、いい神様だよ」
……ただし、猫さえ絡まなければの話だがな。
ああ、そうか。
レオはジルコニア王国の連中の話しか聞かされてないのか。
元々こっちの世界の人間でもないし、知らなくても無理はないな。
……いや、待てよ。
使者が火の神様に会いに来たという事は、ジルコニアはこの世界の神様達の存在を認識しているという事だよな?
つまり、レオに対しては自分達の不利益になりそうな情報を与えていなかったという事か。
一緒にいた女達は単なる勇者の仲間ではなく、レオの見張りでもあった可能性が高いな。
……ああ、本当にムカつくな。
と、いかんいかん。
またレオが怯えている。
「とりあえず行こうか。キング、〈空間転移〉」
エレベーターに乗った時のような微妙な浮遊感と共に、私達は女神様の神殿へと移動した。
「キングさん! 今日も立派なアゴヒゲですね! 触ってもいいですか!?」
「……」
レオがぽかんとしている。
うん、こういう奴なんだよ。
それとキングのソレはアゴヒゲではなく、白黒の模様だからな。
女神様に顎を撫でてもらったキングがご機嫌だから別にいいけどさ。
「女神様、〈勇者〉を保護したよ」
私がそう言うと、女神様は初めてレオの存在に気付いたようだった。
慌てて身だしなみを整えている。
「〈勇者〉よ。よくぞ参られました」
……いや、もう遅いから。
キング相手にごろんごろん転がっていたの、もう見てるし。
レオはどうしたらいいのか分からないようで、私の顔を見上げている。
「そういうの、いらないからね」
私がため息をつくと、女神様は不満そうな表情になった。
「私だって神なんですから、形式というものがあるんです」
形式なんだ……。
ちょっとしたコントもどきを終え、私は女神様に事情を説明した。
レオの妹の話を聞いた女神様が、何やら考え込んでいる。
「そうですか、妹さんが……」
「私達はレオの依頼でマリアの救出に行く事にしたから、ミーコさんに言っておいてくれないかな」
本来、レオが〈勇者〉として救いに行くはずだった世界は、一時的に猫神のミーコさんが保護している。
時間の流れを止めているようなものなので、あまり長くはもたない、という話だった。
「マリアの事も心配だし、なるべく早く終わらせるから」
「分かりました。伝えておきます」
それと。
「ちょっと派手に暴れるだろうけど、別にかまわないよね?」
実のところを言えば、コレが本命だったりする。
いまだ守護する神様もいない国ではあるが、一国を相手に暴れるのだから一応は神様に確認しておかないとな。
女神様が目をきらきらさせた。
「では、くぅさん達の勇姿が……!?」
久しぶりに見れるのですね! と女神様が身悶えている。
……女神様、なんだか前より過激思想になってないか?
ああ、ほら。
レオがドン引きしているし。
形式とやらは、どこにやったんだ……。




