保護者達。
いや、まいった。
こんな所で勇者と会うとは。
と、完全に魔王サイドの考えになりながら、私は彼らを観察した。
勇者と呼ばれた少年は、武装した女達に囲まれて困惑している様子だった。
「お一人でなど危なすぎます!」
「私達と離れないでください!」
「あ、でも、ドラゴンがいた、から……」
「そういえば、ドラゴンは……?」
振り向いた女の一人と目が合った。
杖を持つ姿から、おそらく魔法使いだと思われる。
「おい、女」
…………。
「ここにいたドラゴンはどうした?」
あ、ダメだ、こいつ。
初対面の相手に向かって取る態度じゃないだろ。
それに、いまだにせりがイカミミ状態だ。
それに反応して、くぅ達まで戦闘モードに入っている。
私の足元にいる福助も同様だ。
こいつら、ろくでもないな?
「後ろにいるのは、子供のドラゴンか?」
「えー、珍しい! 私、欲しいんだけど!」
そう言ったのは、剣を持った女だ。
にっこりと笑いながら、私に向かって手を差し出してきた。
「それ、ちょーだい」
お金ならあげるよー、と能天気に言いやがった。
誰がやるか!
……保護を依頼されたのは勇者だけであって、仲間達はその限りではない、うん。
私達が戦闘態勢に入ろうとした瞬間、魔法使いの女が福助を見た。
「黒い猫……、魔王か!?」
はい、半分不正解。
福助は隠れ魔王だからな。
「って事は、この女が魔王!?」
あ、違った。
完全に不正解だった。
勇者の連れという事は、こいつらもジルコニア王国の人間なのだろうが、あの国の情報収集能力はどうなっているんだ?
魔王は、あんた達の後ろで目をらんらんとさせているくぅさんだよ。
私はただのおまけです。
「ここで勇者様を待ち伏せしていたのか!」
なんで、そうなる。
いや、ダメだ。
さっきからツッコミどころが多すぎて、マトモな思考ができない。
……なんか、引っかかっているんだけどなぁ?
魔法使いがなにやら呪文を唱え始めた。
「よつば! か」
私が指示するより先に、よつばが前足をちょいちょいと動かして魔法を〈解除〉した。
……え?
りゅうたろうは大きくなって、いつの間にかコハクを守るように前に立っていた。
福助のまわりをきらきらしたものが踊るように舞っている。
福助と契約している風の精霊達だ。
猫達が自らの判断で戦闘態勢に入っている。
女達を、コハクを奪おうとした敵と認識したのだ。
ドラゴンであるコハクは、何度か捕まりかけた事がある。
おそらく、そのせいだと思うが。
やばいぞ、これ。
このまま戦闘に入ったら、私の制御がきかない。
女達がどうなろうと知ったことではないが、世界まで滅んだらどうしてくれる!!




