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火の宝剣。

 神殿の外に出ると、神官達がそわそわした様子で待っていた。

 私達に気づき、急いで駆け寄ってくる。


「火の神様は?」


「今は眠っているよ、多分」


 姿を確認したわけではないので確証はないが、暑さはやわらいだので多分大丈夫だろう。

 まぁ、チャビのごろごろを聞いたら、火の神様も心が落ち着いて眠くなっただろうしね。


「何があったの?」


 私がたずねると、神官達はため息をついた。


「大変だったんですよ」

「火の神様は大変憤ってしまわれて」

「あいつらときたら」

「暑くて死ぬかと思った!」


 ……あー、一人ずつ話してもらえるかな?


「実は、ジルコニア王国の使いだという者が来まして」


 馴染みのある神官さんが話し出した。


 ジルコニアが?

 もう来ていたのか。

 ……思っていたより素早いな。


「それで、火の宝剣を渡すようにと」


「火の宝剣……って?」


 そんな物があるのか?

 いや、待て。

 確か、以前火の神様に長々と聞かされた恋物語の中に出てきたような……?

 あの時は、右から左に聞き流していたからなぁ。


「火の神様が、恋仲になった人間の男にお授けになった物です」


 やっぱり、そうか。


「その昔話は有名なものですから、ジルコニアが知っていても不思議ではないのですが」


 まぁ、私にも長々と聞かせたくらいだから、秘密にしているわけじゃないだろうしな。


「ジルコニアの使いの者は、その火の宝剣を渡せ、と」


 おまけに、火の神様に対してずいぶんと失礼な態度でして、と神官さんは苦虫を噛み潰したような顔をして言った。


 私達が会った馬車の男が重大な任務と言っていたが、もしかして、この事か?

 あいつなら、確かに失礼だっただろうな。


「使いの者を追い返したあとも、火の神様のお怒りが鎮まるご様子はなく、あのような状況になっておりました」


 つかさ様達に来ていただいて、大変助かりました。と、神官さんは頭を下げた。


「…………」


 ジルコニアの目的が火の宝剣というなら、それは当然勇者の武器、つまり対魔王用として手に入れるつもりだったのだろう。


「その、火の宝剣は今どこにあるの?」


 私がたずねると、神官さんはため息をついて言った。


「とっくに折れて、使い物になりませんよ」


 ……………………折れたぁ!?

 神様が授けた宝剣が!?


「武器ですから、使用すれば磨耗しますし」


 驚愕する私に、神官さんは当たり前のように言った。


 ここガーネットはドワーフ達が多く住み、武器や防具、魔道具などを造る職人の街でもある。

 武器が破損するという事は、ここに暮らす人々にとっては当たり前の事らしい。


 まぁ、確かに魔物とか切っていたら壊れるよなぁ……。

 ドラゴンとか硬いし。


「そもそも、火の宝剣というのは、火の神様がお授けになられた魔炎石を優れた鍛冶職人が打った武器の事を指していまして」


 ……ん? あれ?


「現存しているのは3本。ナルシ様の大剣とサナ様の短槍」


 ……いや、待て。


「それと、つかさ様の大鎌になります」


 やっぱりか!


 持ってたよ!

 私、火の宝剣とやら持っていましたよ!?







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