おいしいごはん。
猫達に軽く食べさせたあと、依頼を受けたギルドに戻り、モルア討伐の報告とラカッグの毛皮の剥ぎ取りと買い取りをお願いした。
数が多いので驚かれたが、夕方には肉を受け取れるそうだ。
本来なら血抜きやらなにやらあるのだが、解体スキルを持っている職人さんがさばくと短時間でお肉の状態に出来るらしい。
ギルドではラカッグの肉も卸してほしそうだったが、そんな事をしたらよつばに死ぬまで恨まれそうなのでムリである。
それに、私も高級食材であるラカッグを食べてみたいしね。
シチュー? 香草焼き?
うーん、どうしようかな。
わくわくとしながら、小さな町で必要な物を買い揃える。
パンの焼けるいい匂いにつられて店をのぞくと、よつばがキャットハウスから出てこようとした。
よし、この店は当たりだ。
ふかふかの白パンと、香ばしいライ麦パン。
スカイビーの蜜で煮た果実を入れて焼いたパウンドケーキ。
目についた美味しそうなものを買い込み、無限収納にしまった。
この中に入れておけば、悪くなる事もない。
体の大きさを変えられなかった頃、ドラゴンであるコハクも無限収納の中に入っていた。
生物も問題ないらしい。
普段は目立ちたくないので、街中では猫達やコハクはキャットハウスに入ってもらっている。
馴染みのターコイズやクリスタルなど、一部の国や都市ではりゅうたろうを連れて出歩いたりもするが。
この町では、モルア退治の依頼を受けた時にすでに面が割れているので、りゅうたろうやおこんなど出てきたがる猫達は店に入る時以外は外に出している。
騒ぎを起こすとヤバい事になるくぅは、あまり町中が好きではないのでチャビと一緒にキャットハウスで休んでいる。
福助も早々と飽きたので、さっさと戻ってしまった。
魔王チームが出ていないので、私ものんびりと町を見て回った。
時々、子供達がそわそわした様子でかわるがわる猫達を見に来たりしていた。
夕方、ラカッグの肉を受け取って町を出た。
人のあまり通らないような場所まで移動してテントを張る。
見た目は1人用の小さなテントだが、女神様からもらった特別製で、中は広くキッチン、バス・トイレ付きで大きなベッドもある。
もちろん、猫達が一緒に眠れるようにだ。
さて、ラカッグを食べようか。
ちなみに、なぜ水道や電気が使えるのかはいまだに不明である。
ラカッグの肉を皮がパリパリになるように、じっくりと焼く。
もちろん、中はジューシーに。
脂がじゅうじゅうと音を立てる。
あー、美味しそう!!
猫達、特によつばがそわそわと動き回る。
猫達には、そのまま味付けなしで。
私は香草と塩コショウで味をととのえる。
適度な大きさに切ったものを皿に出すと、猫達は夢中でかぶりついた。
よつば、誰も取らないから落ち着いて食べなさい。
人間用に薄く切ったものをしゃきしゃきの葉野菜と共に、今日買ったライ麦パンに挟んだ。
それと、作り置きしておいたボーショという真っピンクの芋で作ったスープを温める。
「うっまぁ……!!」
香草との相性もよく、上品な香りの脂がパンにじゅわっと染みている。
ぱりっとした歯ごたえの皮も絶品だ。
うんうん、あっさりとしていてボーショのスープとも合っている。
自分達の分を食べ終わった猫達が、私のまわりをうろうろしだした。
おかわりがほしいらしい。
えー、食べ過ぎじゃないの?
いや、でも、今日は動いたから少しくらいいいか。
くぅやよつば達が前半のモルア退治には参加せず、ぐだぐだとしていただけだった事を思い出したのは、猫達がとっくにおかわりの分まで食べてしまったあとだった。