却下します。
「なぁなぁ」
「却下します」
「せめて、聞いてから言えよ!」
ろくでもない事しか言わんでしょうが!
聞かんでも分かるわい!!
無事、魔王城も完成し、女神様に結界を張ってもらって一般人の被害が出ないようになったのはいいのだが。
私達が魔王城を建てたという噂が、どういうワケかあちらこちらに広まってしまっていた。
いや、勇者をおびき寄せるために、冒険者ギルドやキャラバン等の商隊を通して噂をさり気なく広めてもらってはいるのだが。
予想外の所に噂が広まってしまったのだ。
「城の広間に、俺の銅像とか建て……」
「却下します」
言い終わる前に切り捨てる。
「えー、何でだよ」
「どこの世の中に、神様の銅像が建っている魔王城があるんだよ!!」
ぶぅ、と海神様がふくれっ面をする。
そんな顔しても、かわいくないからな。
「もう少し罠を増やしてはどうじゃ?」
「却下します」
「ドワーフ達が張り切っておるのじゃが」
火の神様、ドワーフ達まで巻き込まないでくださいよ!
これ以上、殺意ましましになったら勇者がお亡くなりになっちゃうでしょうが!!
「城の裏庭に畑を作りたいのだがのぅ」
「……却下します」
農耕神様まで、何を言い出すやら。
そんな生活感あふれる魔王城とか、いらんから。
「猫さん達と触れ合う場所も欲しいですね」
「却下します」
女神様、それ、ただの猫カフェだから。
猫カフェのある魔王城とか、おかしいからな!?
私はため息をついた。
私達の建てた魔王城の話を聞きつけ、神様達が見学に来てしまったのだ。
おとなしく見学だけして帰ればいいものを、何故かみんな自分好みにアレンジをしたがるのだ。
唯一マトモなアレンジをしてくれたのは、普段は木こりや製材業に関わる人達を守護しているという木の神様だった。
初めてお会いしたが、無口で気のいい大男という感じの神様だった。
私達が魔王城を建てたのは、以前福助が森を吹っ飛ばして平地にしてしまった場所だった。
それ以来、人も魔物も寄り付かなくなったらしいので誰にも迷惑はかからないだろうと、この場所を選んだ。
ほかの国や街から、適度に距離があることも理由の一つだったのだが。
「広い平原に、ぽつんと魔王城だけ建っていたらおかしいだろう」と、木の神様が魔王城の周囲に森を作ってくれたのだ。
しかも、魔王城に相応しい暗くておどろおどろしい森を。
とはいっても、実際には雰囲気があるだけの森で特に危険はない。
猫達は木登りしたり、木の幹で爪研ぎをしたりして楽しんでいる。
……いや、まぁ、うちの猫達なら危険があったとしてもやる事はあまり変わらないのだが。
問題は、それを見たほかの神様達が我も我もとアレンジをしたがる事だった。
「だから、却下だと言っているでしょうが!!」
魔王城がテーマパークになってしまう前に、早く来なさいよ! 勇者!!