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六話「獣たちの結束」.2


 これからどうするべきか。 その方針は定まった。


「急いで仲間を集めないと。あの婦人……フランクリンが何をしてくるか」

「攻撃に来ていたのは、奴らの腰ぎんちゃくのルーサーでした。もしあやつが泣きつくとしたら、主のエドガー・フランクリンしかないでしょう」


 エドガーの名前が出た時、長は顔をしかめた。


「かつて、この地を救うために巨人種たちが三つの山を越えて集まってきたのですが、そのほとんどが、奴の乗ったアルマートゥスに倒されました。四十年前、あやつは二十にもならぬ子どもであったのに……」


 クラトーリア連合帝国、その中でも名を轟かせるのが、あのエドガー・フランクリン総督だ。孫もいるほどの歳になったが、未だその力は衰え知らず。たとえ種族間の協力を築けたとしても、あの男を倒せないことには民族解放は果たせない。


「フランクリンたちの次の攻撃がいつになるか。でも、早く協力を取り付けないと……」

「行ってくださいませ。見守り様――いえ、ルガリ様ご自身がいかなければ、彼らを説得はできないでしょう。我ら獣の民は、その本能ゆえ力ある者に従います」


 ルガリの指を掴みながら、長は力強く続ける。


「ルガリ様がお戻りになるまで、鳥の民(ハルピウス)は決して奴らに屈しませぬ。我ら森女神の子であるがゆえに」


 決意は固い。もしかしたら、明日にも報復が行われるかもしれない。その恐怖があるだろうに、彼は毅然としてルガリの目を見ていた。

 彼の意志を無駄にはできない。時間もないのだ、迷っている暇もない。


「わかった。フェイジア、一緒に来てくれるか」

「もちろん。ルガリ様と一緒ならば、どこまでもお供いたします」


 肩のフェイジアが頷く。

 長は地面に降りると、自らの家から数種類の色塵(しきじん)を手に取った。紅い印をフェイジアの眉間から鼻筋にかけて。黄色と青の筋を、右頬に一本ずつ、

 それが鳥の民(ハルピウス)の、他部族へと赴く使者に施す装飾なのだという。


「ルガリ様にも、失礼いたします」


 同じペイントを、ルガリの頭部にも施す。掌にべったりと乗せた色塵を三色引く。

 使者の印をつけたことで、あまり色映えのしなかったルガリが、少し明るくなったように見える。


「もともとモズみたいな青灰色で無骨な感じでしたから、これでもっとかっこよくなりましたね」

「そんな風に思ってたんだ」

「あ、別に今までのが悪いとかではなくてですね」


 慌てて取り繕うように手を振るフェイジア。彼女の慌てぶりに、ルガリは笑うことのない声帯代わりに、金属の擦れる音を流す。


「かっこよくなったのなら、それでいい。さ、行こう」


 ルガリの視線を向けた先にあるのは、犬の民(ショロトリス)が住む山岳部だ。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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