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五話「森の守護神」.1


『グラディウス』の膝を付いたルガリは、呼吸する肺もないのに、息切れしたような気分になった。


「稼働効率がどんどん落ちてきている。二回も三回も来られたら、動けなくなる……」

「ルガリ様、大丈夫ですか?」

「まだ、行ける。新しい爆弾も手に入ったから、まだやれる」


 手に入れた機体を使えればよかったのだが、今のところ爆弾と盾にする以外に使い道はない。幸い、アンブロス・ジェネレーターに自爆機能はないが、ルガリでも多少調整するだけで、十分な破壊力が生まれることが証明できた。


「動けるうちに、あの黒焦げの機体を開いておく。戦闘機動でなければ、まだ十分稼働できるから」

「そっか。あの一機だけは、コクピットを潰していませんでしたね」

「まだパイロットは生きているはずだ。男衆を集めて、警戒を」

「はい!」


 偶然にも、捕虜が手に入りそうだ。必要かと問われれば不要であるし、原住民(プリミティ)に罪人ではない奴隷の文化はない。

 そもそも、この豊かな森では、原住民(プリミティ)同士で争うことさえ稀だ。捕虜だの、奴隷だの、そんな文化が広まるはずもなかった。


「開けるぞ」


 ナイフを装甲の隙間に入れ、固定している部分を削いでいく。パイロットを守るために装甲周りは厚い。だが、稼働するためには隙間と脆弱な部分が生まれざるを得ない。


「開いた、落ちてくるぞ!」


 ハッチをねじるように開けたせいで、パイロットがコクピットから投げ出される。とっさに差し出した手の上に、人間が落ちた。

 原住民(プリミティ)たちがそこに殺到する。


「縛れ、縛れ! あれ?」

「気絶してら。まぁ、あんな炎にやかれりゃあな」

「見守り様! 問題なさそうです!」


 コクピットから落ちてきた軍人は、軍服を身に着け、頭部保護のためのヘルメットを被っている。ルガリが知っているパイロット服は、軍服というより潜水服のようなもので、上級特務兵などが自らに施した機械化強化施術を後押しするような機能があった。

 しかし、このパイロットの恰好はそれとは違う。

 作業服と言われても違和感がない。


「どこかに閉じ込めて置ける場所はあるか? そこに押し込んでおこう。武器を隠し持っているかもしれないから、身体検査は慎重にしてほしい」

「はい……ん?」


 男衆の一人が、何かに気づいたのか首を傾げた。どうしたのか問いかけてみれば、じっとパイロットのことを見ている。


「こいつ……もしかして」

「どうした? このパイロットに何か?」


 ルガリも気になって覗き込み、そっと摘み上げる。下手をすればそのまま摘み潰してしまいかねない。慎重にひっくり返してみると。


「おい、こいつは……」

「……人間ってのは、メスを戦に出すのか」

「狩りならまだしも、土地の奪い合いをするのは、オスの仕事だろうて」


 生き残ったアルマートゥスのパイロット。そこにいたのは一人の女性兵士。

 呼吸しているのは間違いない。まだ生きている。


「フェイジアに手を貸してもらおうか」


 さすがにこれを、人間と獣人という種族の違いがあるとは言え、男衆に任せるわけにはいかない。

 逃げられないように、潰さないように握ったルガリは、フェイジアを探して集落の方へ踏み入れた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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