旅立ちの日
王城の正門の手前。ノアは、ルージュとルミエールの準備を待っていた。
「あのう、すいません」
「何ですか?」
ノアは、監視の騎士に話しかける。
「いつ、手錠を外されるんでしょうか?」
「知りません」
「知りませんじゃねーよ。これでも、世界を救う片棒を担ぐ人だぞ。こんな扱いでいいのか!」
「そんなこと言われても鍵ないですし」
「えっ。誰が持ってんの?」
「知りません」
〔俺、こいつと一生付き合っていかなきゃならんのか。世界救う以前の問題じゃね〕
ノアが、手錠との一生を考えていると後ろから声が聞こえる。
「お待たせしましたー」
「あんな奴、ずっと待たせとけばいいのに」
「おい、聞こえているぞ」
「聞こえるように言ったんです」
〔尚更たちわりぃじゃねーか〕
「髪の色を変えたのか?」
ルージュの紙の色がこげ茶色になっていた。
「私が王女だとばれると大変なことのなるからね。この魔道具、髪色を変える指輪で色を変えてるんだよ」
ルージュは指にはめている指輪を外すと元の色に戻る。
〔身バレ防止か。魔法具は、そんなことができるんだな〕
「はい、これ」
ルージュがもう一度指輪指にはめるとまた髪色がこげ茶色になる。そして、ノアのナイフを取り出した。
「ありがたいんだが、その前に手錠の鍵をくれないか」
「えっ、私、持ってないよ」
「え」
数秒間静寂に包まれる。
「どうすんのこれ―」
「うるさいですね。今から外しますから静かにしてください」
そういうとルミエールは、鍵を取り出し手錠を外す。
「全く、扱い悪くないか」
「自業自得でしょ」
「そうでした」
ノアは、ナイフを受け取りながら今後のことを二人に相談する。
「それで、終末と戦うって具体的にはどうするんだ。あとこの指輪は何なんだ?」
「終末は、その名の通り強力な存在です。まずは冒険者になって様々な場所に旅をして強くなりましょう。そして、旅をしながら終末の手がかりを見つけていこうと思います」
「ふむ、強くなるっていうのは同意する。しかし、手掛かりっていっても終末については強力な存在ってこと以外分からないんだが」
「終末には、〈終末教団〉という教団がいます」
「終末教団?」
「はい、終末を信仰する集団です。彼らを追いかけていけば何かわかるかもしれません」
「なるほど、まずはその終末教団を追いながら旅をするってことでいいんだな」
「はい」
ノアは、今後の目標を聞くと指輪を掲げながら問いかける。
「では、次はこの指輪についてだ。こいつは何なんだ?」
「その指輪は、碧玉の指輪です。魂霊具といわれるものです」
「魂霊具?」
「道具にそれを扱っていた人物の魂が宿った道具のことです。どのようにしたらできるのか、なぜできたのかはいまだによくわかっていません。魂霊具は、自分を扱う人物を選ぶものもあります。そして、その指輪はあなたを選んだってことですね」
〔この指輪が俺を主と認めたってことか。なんか、愛着を持ててきたな〕
「魂霊具は、主と認めた人物には、力を貸してくれます。能力は、宿っている人物に依存します。碧玉の指輪は、魔力量の増加と≪リコール≫という固有魔法が使えます」
「リコール?」
「地面に魔力で見えない点を打ち、範囲内であればいつでもその場に戻るというスキルと聞かされています」
〔はめた時に力が湧き出る感覚があったがあれが魔力ってやつか]
ノアは、≪リコール≫を試しに使ってみる。
〔ここに、点を打って……何か、ここまでしか行けないって感覚があるな。半径20メートルちょっとって感じだな]
ノアは、少し動いて≪リコール≫と念じる。
すると点を打った場所に瞬間移動する。
「おぉ、すげぇ」
ノアは、初めて使った魔法な不思議な感覚に驚く。
「伝えられていた能力は、本物だったようですね」
「今のところ聞きたいことは聞けたから行動をするか」
「ようやく話が終わりましたか。話を聞くだけでは疲れましたし、早く動きましょう」
「はいはいわかったよ。行きましょうか、ルージュ様」
「呼び方は、ルーでお願いします。あと、ルミエールのことはルミと」
「ちょっとルー。こいつに相性では呼ばれたく……」
「いいでしょう、せっかくなんだし」
「……わかった」
ルミは、しぶしぶ同意した。
「……じゃあ、ルー、ルミ。まずは、王立図書館に行くぞ」
「なに?」
ルミは、不満そうに返す。
「わからないことがあったら私たちが教えるよ」
「記憶よりも記録の方が確実だ。ある程度調べたら冒険者ギルドへ行く」
「ノアが、そういうならそうしようか」
「ルーが言うなら……」
そして、ノアたちは図書館へ向かった。
ノアは身分証を持っていないことを忘れていたため受付でひと悶着あったが、ルーが指輪を外し、顔パスで通してもらった。
次回は、設定の説明です。
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