表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/37

嘘も方便

 壁の入り口の門前には、青年と同じく壁の先に行こうとしている人が並んでいた。


〔入るには審査とか必要なのか?まずいな、身分を証明するものなんて1つもないぞ〕


 青年は、顎に手を当てて考える。


〔仕方ない。あまりしたくないがあの方法で行くか。嘘と演技も得意だからな〕


 青年は、ナイフを取り出し、自分にいくつもの切り傷を付け、服を少し破る。脇腹の部分だけ少しだけ深く入れる。そして、傷から出た血を顔につける。その後、並んでいる人たちを抜かして入り口にいる2人の憲兵らしき人の所まで行く。


「君!その服と傷、どうしたんだい!」


〔言語は問題なさそうだ〕


「森で……四つ足の獣に襲われた。」


「キメラか。シン、この青年の手当ての応援を早く」


「は、はい」


 シンと呼ばれた男は、壁の向こう側に走っていった。


〔キメラだと。嵌合体かんごうたいってやつか。聞いたことがあるが実際に見たことはなかったな。この男は、シンと言われていた男の上司なのか?〕


「君は、こっちの部屋で休もう」


 残ったもう一人の男が、入り口の近くにある建物に肩を貸して、青年を連れていく。交代にほかの男が、審査を対応している。

 少しして、シンと呼ばれた男は、連れてきた女性は、杖を携えていた。


〔杖?〕


「患者は?」


「この青年です」


「すぐに直します」


女性は、杖をかざす。


≪エクスヒール≫


 青年の体が光に包まれたと思うと光が消え、傷は癒えていた。青年は、自分の体を触る。


〔何だ今の光は?傷が癒えたぞ。いったいどうなっている〕


 青年は、頭の中ではパニックになっているが、表情に出ないように気を張る。


「エクスヒールを受けたのは初めてかな?ある程度の町じゃないと使える人はいないから」


[えくすひーる?なんだそれは?何かの呪文か?と、とにかく礼をしなければ]


「ありがとうございます」


「いえいえ。この程度の魔法造作もないですよ」


「エクスヒールをこの程度って、そんなこと言う人そんなに多くないですよ」


[魔法だと!!そんなのおとぎ話とかにしか出てこない代物だろ。本当に異世界であると断定してもよさそうだな。もし、元の世界だとしてもこれを見たら元の価値観ではいられないだろう]


「シン、お前は審査に戻れ。それで、君。身分証とか持っているかい?」


 シンと癒してくれた女性は部屋から出ていった。シンの上司と思われる男が青年に問いかける。


「身分証?」


「そう、冒険者ギルドとか商業ギルドとかの身分証。または貴族であればそれを証明するものとか」


[商業ギルドは想像つくが、冒険者ギルドとはなんだ。あと、この国には貴族制度があるんだな]


「すいません。逃げるのに必死でなくしてしまいました」


 青年は、目を落として落ち込んでいる雰囲気を出して言う。


「そうか……つらいことを思い出させてごめんね。身分証は、ギルドで新しく作ればいいから」


「はい、ありがとうございます」


[よし、まずは第一関門突破だな]


 青年は、心の中でガッツポーズをする。


「そういえば自己紹介がまだだったね。私の名前は、コルサ。そして、さっき君を癒してくれた女性はシル。君の名前は?」


「俺の名前は、ノアといいます。助けてくれてありがとうございます」


[まぁ、偽名ではあるが。盗人を始めてから偽名をいうのが癖になっているな]


「ノアか、いい名前だな。ノアは、なんでここに来たんだい」


「俺は、いろいろな場所を旅していたんですけど、山に入ったとき遭難をしてしまいまして。いろいろと歩いているとキメラに出会いまして。何とか逃げ切れましたが、あの様で。たどり着いたのがここだったのです」


 ノアは流れるように嘘をつく。


「そうか、それは災難だったな」


「はい。それでここはどこなのでしょう」


「ここは、クランベル王国の王都、その北口だ」


[王都か。ますますついているな。情報が集めやすい]


「どこか情報を手に入れられる場所ってありますか?」


「それなら、王立図書館だな。あそこは、一般に公開されている書物なら見えるぞ」


「そうなんですか。ありがとうございます」


[まずは、王立図書館で情報を得るか]


「それではそろそろ俺は行きますね」


「ちょっと待て」


 コルサの制止にノアの心臓がドキリとする。コルサは立ち上がるとロッカーを開け、服を取り出す。


「その服で町をうろつく気か?少し大きいかもしれんが、それよりはいいだろ」


 コルサは、自分の服をノアに渡す。


「いいんですか?この服持って行って」


「あぁ、予備に置いている服だから構わない。あとこれ」


 コルサは、何か入った袋をノアに渡す。ノアが中身を確認すると少量の硬化が入っていた。


「これは?」


「金だ。そのナイフ以外何も持ってなさそうだったからそれを使ってくれ」


[なんていい人だ。見ず知らずのやつに金を渡すだと。俺にはできることじゃないな。何か盗んで今後の資金源にしようかと思ったが価値はわからんがすぐにする必要はなくなったな]


「本当にありがとうございます。大切に使わせてもらいます」


「おう、頑張れよ。もし何かあったら、ここに来な。もしくは王立北部病院にシルもいるから頼りな。」


「はい。わかりました。お世話になりました」


「おう。じゃあな」


 ノアは、コルサに別れを告げた。


 ようやく主人公の名前だよ。偽名だけど。

 下のほうにある星を押す、または感想を書いてくれると作者が狂喜乱舞します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ