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対象のない不安を感じたら
町の歯医者さん、白瀬先生はいつも落ち着いている。
そんな先生は僕の頼りだ。
だから先生に聞いてみた。
「先生に怖いものはないの?僕はよく分からない不安でいっぱいだよ」
先生は優しく笑って僕に語りかける。
「若いころは何でも怖いものだよ。きっと僕は、もう歳なんだろうね」
僕は先生がうらやましかった。
大人になると怖いものが無くなるんだね。
その時、クリニックのドアが荒々しく開かれたんだ。
入ってきたのは怖いお兄さん。
だけど先生は冷静だった。
怖いお兄さんに向かって、いつものように声をかける。
「きたまえ」
二人は院長室に入っていった。
中から聞こえる先生の声も、落ち着いたものだった。
「無理を言われても困る。出来ないことは出来ない。来月払うと言っているだろう」
そのあと、院長室の立派な椅子や机、レジなどが全て運び出されて、白衣を着たお姉さんたちもみんな連れていかれてしまった。
先生は猛獣のような声をあげている。
多少の不安は抱えておくべきなのかもしれない。
~不安は落ち度の注意喚起だ~




