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大切にするということ
僕は町の歯医者さん、白瀬先生が大好きだ。
先生のクリニックは僕にとって大切な場所だ。
今日は先生にそれを伝えよう。
「先生、僕はこのクリニックをとても大切に思っているよ。そして何より、先生が大切なんだ」
先生は嬉しそうだ。
はははと笑ってこたえる。
「僕だって君が何よりも大切だよ。患者さんも君だけだからね」
僕たちはくすくすと笑った。
そのとき、クリニックの扉を激しく叩く音が響いたんだ。
だけど先生は落ち着いたものだった。
「大丈夫だよ。鍵をかけてある。大切な君だけは守るつもりだ」
僕は先生の笑顔をみてほっとした。
するとがしゃんという音が鳴り、窓が割れたんだ。
そこからたくさんの怖いお兄さんたちが入ってきて、お兄さんたちがどなる。
「貸した方にも問題があったとは思わないのかね」
先生は静かにつぶやき、やれやれと首をふる。
それをみたお兄さんたちは、患者さん用の椅子を運び出し始めたんだ。
暴れ出す先生をひとりのお兄さんが取り押さえる。
「それだけはやめてくれ!治療ができない!」
他のお兄さんたちは目もくれない。
「代わりにこの子を!」
先生はたこ殴りにされ始めた。
大切なものがなくなってしまった。
〜大切なものを失ったときには、その他にも何かを失っている〜




