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風格について
町の歯医者さん、白瀬先生には風格がある。
僕はごく自然に先生を信頼するようになった。
そんな風格が僕にもほしい。
先生にたずねた。
「先生、どうすれば先生のように風格のある人間になれるの?」
先生は優しく笑う。
「僕に風格だって?とんでもないよ。僕にそんなものはないさ」
先生はいつだって謙虚だ。
だけど少し得意そうな顔をしている。
「もし僕に風格があるとしたら、たくさんの患者さんを診てきたせいだろうか。人と触れ合った数だけ成長できるものだよ。君もたくさんの人と触れ合うといい」
先生はまんざらでもないようだった。
少しくやしくなった。
僕は子供で、たくさんの人と触れ合う機会なんてないからだ。
すると先生に電話がかかってきた。
先生はゆったりと電話をとる。
「どうしたんだね」
電話の向こうからいつも会う白衣のお姉さんのすすり泣く声がもれている。
「もう少し考えた方がいい。時間が解決するということもあるよ」
僕はまた、確かな風格を感じた。
しかし突如、先生の声が変わった。
「警察?!考え直すんだ!触れ合いじゃないか!今一度考え直すんだ!!」
先生が叫ぶたび、風格がなくなっていく。
僕には人を見る目がないということが分かったよ。
~風格と人格が一致するとは限らない~




