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ある研究員の記録〜ヴィルデムの生態系について〜

 ヴィルデムという世界は実に興味深い。2本足で歩き、脳の発達により優れた知性を持ち言葉でコミュニケーションをとる種、いわゆるホモ・サピエンスを【ナムゥ】、それ以外の動植物を総じて【ニギロ】と呼ばれている。


 ナムゥの中にもいくつかの種族がある。これが非常に面白い。地球の人類に一番近いのは【ラマム】と呼ばれ東のセルキール大陸に住んでいる種であり、我々と同じ胎生である。しかし、西のオスゲア大陸では卵生の人類である【セルピター】と【セヴァ】という種が住んでいるという。一つの世界の中で胎生の人類と卵生の人類が同時に進化し文明を築いていると聞いて、興奮しない研究者はいない。話を聞いた限り、セルピターは爬虫類からの、セヴァは鳥類から進化を遂げた種であると推測される。リザードマンやハーピィを想像してしまったが、どちらも見た目はラマムと大差ないというので、ぜひともこの目で確かめてみたいものだ。


 ラマムの中でもさらに、地球の人類に近い【ケルダ】という人種と「小人」とも言われる【フォウセ】という人種がいる。ケルダは住んでいる地域でさらにいくつかの種類に分けられるそうだが、フォウセはセルキール大陸の中でも【守護者(ディルアーグナ)(テスロフ)】と呼ばれる場所にしか住んでおらず、かつては奴隷として扱われていた歴史があるらしい。

 詳しく話を聞いてみた限り、地球のように霊長類から進化した人類はいない。同じ有胎盤類でもケルダは、強いていうなら食肉目 (犬や猫などと同じ)から進化した人類、対してフォウセは齧歯類 (ネズミなどと同じ)から進化した人類と考えられる。この仮説が頭に浮かんだとき、私はヴィルデムに来た時以上に高揚した……。


 この世界の生物は皆、魔力の存在を認知している。魔法の力は当たり前のように存在しており、その力を手に入れる手段も広められている。しかし、魔道具(マイト)の流通により必要としない人々も増えているのが現状のようだ。便利なものがあることで忘れられる技術があるというのはどの世界でも同じなのだろう。

 地球側と違うのはそれ以外に、人種による魔法の類似性が存在するということだろう。地球では魔法に遺伝的要因は存在しないと考えられている。しかし、フォウセは対象の動きを封じることに特化した魔法を覚えるという。彼らの生活環境がそうさせたのではないかと仮説を立ててみたが、進化の仕方も違うこの世界では他の要因があるのかもしれない。


 ニギロも魔力を扱う力は持ち合わせているものの、魔法を使うことはできない。その代わり彼らは【天然魔道具(ラルタンマイト)】と呼ばれる生まれ持った特殊器官を持っている。魔力を通すことで種族に応じた様々な力を発揮するこれは、進化の過程において彼らが生きていくために手に入れた力と考えられる。特筆すべきは、動物だけでなく植物もその期間を持っているということだろう。

 この天然魔道具(ラルタンマイト)という器官は肉体から離れても効果を得られるため、日常生活の中で重宝されているが、使用制限がありずっと使っていられるわけではない。かつてはニギロの養殖も考えられていたというが、数世代後にその器官を持たない個体が生まれるという問題があるそうで、一部食用に育てられている動植物以外では積極的な養殖は行われていない。これは種の保存のために決められたことだという。研究に身を置くものとしては、その判断を下した専門家たちに敬意を表したい。

 

 天然魔道具(ラルタンマイト)をどうやって生活の中で使えるようにしているかといえば、それを採取する専門の職業があり市場に流しているためだ。日本のライトノベルで良くある「冒険者」というやつが近いだろう。害虫・害獣駆除の商品のように、この冒険者用の道具が店で陳列されているのを見るとゲームの世界にいる気分を味わえる。

 だが、最近この天然魔道具(ラルタンマイト)採取で生計を立てている町の1つが襲撃され多くの死傷者が出たそうだ。魔道具(マイト)を流通させている国の王が、市場を独占しようと画作しているという噂を聞いた。どの世界でもくだらん争いはあるのだな。

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